【KHL】師弟対決を制してファイナルに勝ち上がった指揮官は、名参謀から「名将」になれるか?
KHLの王者を決める「ガガーリンカップファイナル」が、明日(現地時間)から始まるのに先駆けて、前回はイースタン カンファレンスを制した AKバルス カザニのキーパーソンを紹介しました。
続いて今回は、ウエスタン カンファレンスの覇者となった チェスカ モスクワの中から、チームを率いるヘッドコーチ(HC)の イゴール・ニキティン(45歳/タイトル写真)に注目します。
▼現役時代は長野オリンピックに出場
現役時代のニキティンは、カザフスタン代表のDFとして、長野オリンピックや世界選手権に出場。
KHL発足前の旧スーパーリーグ時代には、アバンガルド オムスクの主力選手でした。
35歳の春に現役を退くと、すぐさまオムスクのアシスタントコーチに転身。
チームの成績が振るわず解任されたあとは、ロシア代表(シニアとU20)のアシスタントコーチに招へいされるなど、指導者としてキャリアを積み重ねてきました。
▼名将との出会い
そんなニキティンにとって、大きな出来事がありました。
オレグ・ザナロクとの出会いです。
写真をご覧になって思い出された方もいらっしゃるでしょうが、ザナロクは「ピョンチャン(平昌)オリンピック」の男子アイスホッケーで金メダルを獲得した OAR(オリンピック・アスリート・フロム・ロシア)の HC。
さらに加えて、オリンピックでMVPに輝いたイリヤ・コバルチャク(FW・34歳)らが所属するスカ サンクトペテルブルグのHCでもあります。
▼ロシアを世界一に導いた男
ニキティンより10歳年上のザナロクは、現役時代に旧ソビエトリーグをはじめ、ドイツのリーグなどでプレー。
親善試合(カップ戦)ながら、ザナロクもソビエト選抜チームのメンバーとして来日し、東京で日本代表と対戦した経験もあります。
このような現役時代の豊富なキャリアを買われて、39歳の時からコーチの道を歩み始めたのを皮切りに、トリノとバンクーバーのオリンピックで、ラトビア代表のHCを歴任。
さらに、旧ソビエト時代から名門チームと呼ばれ続けて来た ディナモ モスクワのHCに招かれると、見事にKHL2連覇を達成するなどして、4度も最優秀HC賞に選出された”名将”です。
ロシアホッケー協会は、ザナロクの手腕を高く評価し、2014年春からナショナルチームのHCに任命。
するとザナロクは、すぐさま抜擢に応え、5季ぶりとなる世界一に導きました。
▼ライバルチームのHCが師弟関係に
一方のニキティンは、チェスカでアシスタントコーチ職に就いていましたが、ザナロクがロシア代表のHCに就任した翌年に、白羽の矢を立てられて、ロシア代表でもアシスタントコーチを担うことに。
こうしてKHLで屈指のライバル関係にある両チームのHCは、ロシア代表を率いる際には指導歴が豊富な「指揮官」と「参謀」という、いわば”師弟関係”になったのです。
▼金メダル獲得へタッグを組んだ師弟関係は最大のライバルに
前述したピョンチャン オリンピックでは、OARを金メダルに導こうとタッグを組んだ二人ですが、それぞれのチームに戻ると、KHLで最大のライバル関係にある両チームの指揮官に!
しかもニキティンは、今季からチェスカのHCに就任しただけに、二人の師弟関係は「ガガーリンカップを勝ちとるために、倒さなくてはならない敵将」 となりました。
▼ロシア代表のHCを退任
このような背景がある中で繰り広げられたウエスタン カンファレンスのファイナルは、チェスカが王手をかけて迎えた第6戦で勝利。
対戦成績を4勝2敗として、ウエスタンのチャンピオンに輝き、ガガーリンカップを懸けたファイナルへ勝ち上がりました。
3連覇の夢がついえたサンクトペテルブルグのザナロクHCは、来月4日からデンマークで開催される「世界選手権」で、兼任していたロシア代表のHCを退く意向を、昨日発表。
今後は少し距離を置いて「コンサルタント」として、ロシア代表にかかわることになりました。
▼”師”を倒した”参謀”に与えられた大きな目標
一方、”師”とも言えるザナロクが率いる王者を倒した”参謀”のニキティンは、HC就任1年目ながら、ウエスタンの戦いを制してガガーリンカップを争うファイナルに進出。
しかし、このような快進撃にも、チェスカのイーゴリ・エスマントビッチ代表(元新王子製紙アシスタントコーチ)は、「ファイナルへ勝ち進むだけでは満足できない。我々の目標はただ一つ、ガガーリンカップを勝ち取ることだ」と公言。
大きな使命を果たして、名参謀から「名将」になれるのか?
ニキティンとチェスカの戦いが明日から始まります。