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どうなる「飲食店の禁煙」〜上場チェーンへのアンケート調査

石田雅彦科学ジャーナリスト、編集者
飲食店へのタバコ会社の営業活動も激化している:写真:撮影筆者

 筆者は上場している飲食チェーン企業15社に対し、店舗と事業所での受動喫煙防止対策についてQ&A方式でアンケート調査を行った(2月14日に質問、3月2日に回収終了)。社名非公開での対応も受け付け、15社中9社より回答をいただいた。以下、回答形式がまちまちのため筆者が一部表記などを統一して紹介する。

全面禁煙化しても経営は回復

 大手ファミリーレストランチェーンのロイヤルホールディングス株式会社(2月28日に回答、以下同)は「ロイヤルホスト」についての回答とし、タバコ対策について店舗内は「完全禁煙」にしているとした。同チェーンは、2009年から店舗改装をともないながら全面禁煙化を進め、2013年11月に「禁煙宣言」をしているようだ。

 全面禁煙化を進めた理由について「ロイヤルホストでは、以前よりお客さまからの分煙のご要望をもとにダイニングを喫煙席と禁煙席に分けて営業しておりました。その後、タバコに対するお客さまからご意見(分煙をしていてもタバコの臭いがわかる、週末などに喫煙席があいているのにご案内されないなど)が増えてきたこと、また働く従業員にもタバコの煙のない環境で働いてもらいたいという考えから、全席禁煙化の検討を開始し、『お食事を楽しんでいただくレストラン』をコンセプトに、2009 年から店舗改装を伴いながら全席禁煙化を進めてまいりました」と回答した。

 ロイヤルホールディングスは、事業者の努力義務である「職場の『受動喫煙防止対策』(労働安全衛生法第68条の2)」を遵守しているかどうか(以下、職場の受動喫煙対策)について「現在、取組中」と回答し、厚生労働省が実施する分煙設備設置費用助成の支援事業を知っているかどうか(以下、設備支援事業)について「いいえ」と回答した。

 またロイヤルホールディングスは、タバコ対策による経営への影響について「全席禁煙化後、店舗によっては一時的に売上高が3割程度下がった店舗もございました。しかし、喫煙のお客さまが減った一方、全席禁煙ということでご利用いただけるようになったお客さまもいらっしゃいましたので、3カ月程度で売上もほぼ同水準まで回復しております。ただし改装を伴いながらの禁煙化でもございましたこと、また禁煙化だけではなくその他の商品施策や教育訓練、改装効果などのさまざまな要因が関係していると考えておりますのでその他を選択いたしました」と回答している。

 ファストフードチェーンの「ケンタッキー・フライド・チキン」を運営する日本KFCホールディングス株式会社(3月1日)は、タバコ対策について現在、完全禁煙化を目指しつつあり、ほぼ全店で禁煙になっていると回答した。タバコ対策による経営への影響について、完全禁煙後すぐは喫煙者のお客さまが減少したが、その後、非喫煙者のお客さまが増加し回復したとする。職場の受動喫煙対策についてと設備支援事業についての質問は、それぞれ「はい」と回答した。

 大手ファストフードチェーンの日本マクドナルド株式会社(3月2日)は、タバコ対策について4年前から完全禁煙にしていると回答した。その理由について、小さいお子さまからご年配の方まで、マクドナルドをご利用になる幅広い層のお客さまにとって、快適で安心なお食事の場として相応しい環境をご提供させていただくため、とした。

 日本マクドナルドにタバコ対策による経営への影響を聴いたところ「完全禁煙にした当時、一部の店舗では一時的に売上に影響がありましたが、新たなお客さまにお越しいただけるようになったこともあり、現時点では影響は無くなっていると考えております」とし、職場の受動喫煙対策についてと設備支援事業についての質問は、それぞれ「はい」と回答した。

国の動向を見守るチェーンも

 和食系の飲食チェーンを展開するA社(社名非公開希望、アルファベット以下同、2月15日)は、店舗により分煙対応し、商業施設への出店店舗では各施設の規定に準じている、とした。これら商業施設では施設内に喫煙スペースがある場合が多く、そのほとんどで店舗内を禁煙としている。また、タバコ対策については今後の状況をみながら判断していきたい、と回答した。

 喫茶店系の飲食チェーンB社(2月15日)は、アンケートへの回答自体しないと回答した。具体的な内容について現時点で回答が難しいからという理由により、今後の国の動向を見守りたいとした。

 いくつかの飲食業態チェーンを抱える大手C社(2月16日)は、グループの主要業態ファストフードチェーンのみについてとし、1945店舗で完全禁煙を実施し、2店舗で時間帯別対応、1店舗でのみ分煙になっている(1948店舗中、1月末時点)と回答した。C社は、タバコ対策による経営に何らかの影響があるかどうかという質問には「ない」と回答し、職場の受動喫煙対策についてと設備支援事業についての質問はそれぞれ「いいえ」と回答した。

 大手ファミリーレストランチェーンD社(2月19日)は、タバコ対策について「分煙化に取り組んでいる」と回答し、その内容は「喫煙室を設置している」「十分な換気設備を設置している」とした。また、この取り組みを始めた期間は「5〜9年前」と回答した。

 このほか(2社)、社内調整を進めている最中だが今後、全面禁煙する予定と回答したチェーン(社名非公開希望)もあり、国が成立させるであろう受動喫煙防止法の内容はともかく、禁煙化へ動こうとしている様子が垣間見える。厚労省案では大資本チェーンは全面禁煙になりそうだ。また、回答をいただいた大手飲食チェーンはアルコール主体の業態ではないため、禁煙化により家族連れなどの来店が増えるなどの影響も大きいといえる。

科学ジャーナリスト、編集者

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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