Yahoo!ニュース

トランプ氏のツイッターアカウント復活は、マスク氏からバイデン大統領への“最悪の誕生日プレゼント”!?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
トランプ氏のツイッターアカウントを復活させたマスク氏の狙いは?(写真:ロイター/アフロ)

 ツイッターを買収したテスラ・モーターズCEOのイーロン・マスク氏が、2021年1月6日の議事堂暴動後、永久凍結されたトランプ前大統領のツイッター・アカウントを復活させるべきかどうかツイッター上で投票を募り、約1,500万人以上が投票、51.8%が復活に賛成と答え、反対の48.2%上回ったことから、11月19日、アカウントを復活させた。

最悪の誕生日プレゼント!?

 アカウント復活後、フォロワーは物凄い勢いで増え続けており、ツイッターでは「トランプはツイートしていないのに、ツイッターでブレイクしている」「凄い、3分間で30万人もフォロワー数が増えたアカウントなど見たことがない」など驚きの声も聞かれる。フォロワー数はアカウント復活から1日が経過した時点で8,000万人に迫る勢いで、バイデン大統領のフォロワー数約3,650万人をあっという間に追い越してしまった。

 折しも、11月20日はバイデン大統領の80歳の誕生日。共和党を支持しているマスク氏が、トランプ氏の大統領出馬表明演説後、そして、バイデン氏のバーステー・イブというタイミングでトランプ氏のアカウントを復活させたことに意図的な臭いを嗅ぎ取った人もいるようだ。

 ツイッターでは「マスクは、バイデンに、トランプをツイッターに戻すという最悪の誕生日プレゼントを贈った」というコメントや、反対に、「マスクはバイデンにベストな誕生日プレゼントを贈った」という皮肉を込めたコメントも見られる。

1,500万人の評議会

 アカウント復活については、マスク氏も標榜している「言論の自由」という理由から「マスクは正しい判断をした。トランプのアカウントはそもそも凍結されるべきではなかった」と歓迎する声もあれば、「マスクは、2度弾劾され、今も調査されており、暴動を鼓舞した前大統領をツイッターに戻し、陰謀論を増幅させようとしている」と批判したり、「さよなら、ツイッター」と訣別宣言したりする声もある。

 “マスク氏は嘘をついた”という見方をする声もある。マスク氏は、10日29日、「ツイッターは広く多様な視点を持つコンテンツ監視評議会を設置する。メジャーなコンテンツの決定やアカウントの復活は、評議会を招集するまで行わない」とツイートしていたからだ。確かに、評議会を開くことなく、トランプ氏のアカウントを復活させたマスク氏はこのツイートとは矛盾する。批判が出るのはもっともかもしれない。

 しかし、そんな批判に対し、「評議会は投票した。そこには約1,500万人がいた」「評議会は投票した。私たちが評議会だ」と“投票した人々=評議会”とみなして反論する声もあがっている。

マスクは新生トランプ

 中間選挙でトランプ氏推薦の候補者が次々落選し共和党が苦戦したことから、「トランプがまさに共和党を破滅させているように、イーロンはツイッターを破滅させている」という声や「マスクは“新生トランプ”だ。ノー・サンキューだ」などマスクとトランプを同一視する声もある。

 様々な反応があがっているが、確実に言えることは、トランプ氏のアカウント復活劇により、マスク氏はより多くの人々をツイッターに集めることができたということだろう。マスク氏自身も「1億3,400万人が投票を見た」とツイートしている。その意味では、トランプ氏を利用したマーケティングは大成功したと言える。

トランプ氏は戻らない?

 しかし、当のトランプ氏はというと、ツイッターに「戻る理由はない」と明言した。果たして、それは真意なのだろうか? トランプ氏はツイッターのアカウントを凍結された後、TruthSocialというメディアを立ち上げたが、ツイッターのように世界の誰もがアクセスできるSNSではなく、今のところ、アメリカのユーザーしかアクセスできない。現在、TruthSocialで、トランプ氏は約457万人のフォロワーを抱えているが、その数は、アカウント凍結前のツイッターのフォロワー数約8,800万人には全然及ばない。

 性格的に自己顕示欲が強く、人々から賞賛されスポットライトを浴びていたいトランプ氏である。しかも、大統領選出馬を表明し、より多くの有権者にアピールする必要があるトランプ氏である。ユーザーが限定的なTruthSocialだけに留まり続けるだろうか。トランプ氏の今後の動きが注目される。

(関連記事)

トランプの大統領選出馬表明演説に「退屈だ」「終わった」の声 カリスマ性のないお利口さんに路線変更?

「変だ。ロシアや中国を理解する方が簡単」トランプ氏、ペロシ議長宅襲撃事件に関して陰謀論を展開

「イーロン・マスクはプーチンのメッセージを伝えている」米元ロシア担当顧問の見解

トランプ氏、「ロシアの手先、ヒトラー」とみなしたCNNに688億円要求の名誉毀損訴訟 米中間選挙目前

「今や第3次世界大戦になる」トランプ氏 プーチン氏の核兵器使用も「ハッタリではない」発言の真意とは?

トランプ氏の命運 スパイ法違反で刑務所行きか、それとも大統領に再選か? FBI家宅捜索

トランプ氏も安倍氏と同じ旧統一教会関連のイベントに参加 統一教会と米共和党の深い関係

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

飯塚真紀子の最近の記事