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トランプ氏に新たな性的暴行疑惑 著名コラムニストが告白「デパートの試着室でレイプされた」

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
新たに浮上した性的暴行疑惑は民主党の策略だと考えているトランプ氏。(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ氏にまた新たな性的暴行疑惑が浮上した。

 今回、トランプ氏に性的暴行を受けたと訴えているのは、女性ファッション誌ELLEで、1993年から人生相談のコラムを書いている著名コラムニストのジーン・キャロル氏(75)。

 キャロル氏は発売予定の著書"What Do We Need Men For? A Modest Proposal”の中で、彼女が出会ってきたおぞましい男たち20人について記しているが、最後の20番目に登場するのが、彼女を“レイプ”したというトランプ氏だ。

 キャロル氏の著書発売に先立ち、ニューヨーク・マガジンが、同著からの引用文を紹介し、注目を浴びている。

ランジェリーに興味

 それによると、キャロル氏がトランプ氏から性的暴行を受けたのは、1995年秋か1996年春。当時52歳だった。場所はニューヨーク5番街にある高級デパート、バーグドルフ・グッドマンの試着室だ。

 キャロル氏とトランプ氏は一度だけ面識があったが、ある日の夕方、このデパートの出入り口の回転ドアで遭遇。その際、トランプ氏は女性に何のギフトをあげたらいいか、キャロル氏にアドバイスを求めてきたという。

 キャロル氏はハンドバッグや帽子などギフト・アイデアを提案したが、トランプ氏はエスカレーターの方を見て「ランジェリー」か「アンダーウェア(下着)」と口にしたという。

 そこで、エスカレーターに乗って一緒にランジェリー売り場に行くと、トランプ氏は、レース製のシー・スルーのボディー・スーツを手に取り、「試着してよ。君、スタイルいいじゃない。これを着たらどんなふうに見えるか見てみたい」と言って、彼女の腕を掴んで試着室に連れて行ったというのだ。

高級デパートの試着室で性的暴行!?

 試着室で何が起きたのか? キャロル氏は詳細を以下のように説明している。

「試着室のドアを閉めるやいなや、彼は私に迫ってきて、壁に私の体を押し付け、自分の口を私の唇に押し付けてきたのです。私はひどいショックを受け、彼を後ろに押しやりました。彼は私の両腕を掴み、再び、壁に私の体を押し付けました。彼は体がとても大きく、肩で私の体を壁に押し付け、手をコート・ドレス(コートのように前開きになっていて、ボタンで留める形のドレスのこと)の中に突っ込んできて、タイツを下ろしました。

 次の瞬間、彼は着ていたオーバー・コートを開き、ズボンのジッパーを下ろして、指を私のプライベートな部分に押しあて、はっきりとは覚えていませんが、ペニスを途中までか、あるいは完全に、私の中に突っ込んできたのです」

 キャロル氏は膝でトランプ氏を押しのけて試着室から逃げ出した。一連の性的暴行にかかった時間はわずか3分で、トランプ氏は射精はしなかったという。

トランプ氏に性的暴行を受けた時にキャロル氏が身につけていたダナ・キャランのコート・ドレス。写真:www.thecut.com
トランプ氏に性的暴行を受けた時にキャロル氏が身につけていたダナ・キャランのコート・ドレス。写真:www.thecut.com

 キャロル氏は、2人の親しい友人にこのことは打ち明けたが、警察に通報することはなかった。

 トランプ氏から性的暴行を受けた時、キャロル氏が身につけていたダナ・キャランのコート・ドレスは、その日以来、身につけられもせず、洗われもせず、クローゼットのドアの裏側にかけられたままだった。しかし、今回、キャロル氏はそのコート・ドレスを身につけて、ニューヨーク・マガジンの表紙に登場している。

 また、キャロル氏は、トランプ氏の一件があって以来、誰ともセックスをしていないと明かしている。

トランプ氏は完全否定

 キャロル氏の告白に対し、トランプ氏の方は、例によって、完全否定モードで、「彼女には会った事もない」と言っている。

 しかし、ニューヨーク・マガジンには、1987年、NBCテレビのパーティーで、トランプ氏夫妻とキャロル氏、キャロル氏の当時の夫の4人が談笑している以下の写真が掲載されている。

トランプ氏(写真、一番左)は、1987年、NBCテレビのパーティーでキャロル氏(写真、左から2番目)と会っていた。写真:www.thecut.com
トランプ氏(写真、一番左)は、1987年、NBCテレビのパーティーでキャロル氏(写真、左から2番目)と会っていた。写真:www.thecut.com

 また、トランプ氏は性的暴行は本を売るためのでっち上げだと以下のように主張。

「自己宣伝や本を売るために、また、ブレット・カバノーに濡れ衣を着せたジュリー・スウェニトクのように政治的アジェンダを実行するために性的暴行というでっち上げを作り上げる人々よ、恥を知れ。証拠がゼロなのに、それを信じる人々も同じくらい悪い。もっと悪いのは、死に瀕している出版物がくだらないフェイク・ニュースでテコ入れしようとしていることだ。疫病だね」

 さらには、キャロル氏の件は民主党の策略だと考えており、以下のように発言している。

「民主党がキャロル氏やニューヨーク・マガジンとつるんでいるという情報を持っている人がいたら、できるだけ早く知らせてほしい。世界は何がおきているか知る必要がある。不名誉なことだ。人は濡れ衣を着せた報いを受けるべきだ」

 これまでに、少なくとも15人の女性たちが、トランプ氏に性的暴行や猥褻な行為を受けたと告白している。トランプ氏はそのすべてを否定しているが、そもそも、これだけたくさんの性的暴行疑惑がかけられる大統領に、国を治める資格があるのか?

 今回の性的暴行の告白は著名コラムニストが実名で行なったものだけに、来年の大統領選に与える影響が注目される。しかし、前回の大統領選では、結果的に、数々の性的暴行疑惑に対して“不死身”であったトランプ氏である。トランプ氏=性的暴行疑惑という等式が、すでに、アメリカの人々の間で“ニュー・ノーマル”になっているとすれば、キャロル氏の性的暴行の告白が与える影響は一過性のあるもので終わってしまうかもしれない。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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