6月22日は冷蔵庫の日。夏至の日=冷蔵庫の日 で、年によって夏至の日が異なるので、2021年は6月21日が冷蔵庫の日だ。

2015年、スペインに登場した「連帯冷蔵庫」

2015年8月13日、米国国営ラジオのNPRで、スペインに「連帯冷蔵庫」が登場したことが紹介された。

これは、余っている食品を引き取り、必要とする人に渡す「フードバンク」のような役割を果たす、いわば公共の「シェア冷蔵庫」だ。

2015年8月18日にはハフポストが記事として紹介しており(1)、2015年9月28日には東京新聞編集委員の上坂修子さんが記事で次のように紹介した(2)。

フランスでは今年、大手スーパーマーケットに、売れ残った食品の廃棄を禁止する法律が制定された。まだ、食べられるものは慈善団体に寄付することなども義務付けた。

スペインのある町には、家庭、レストランで食べきれなかった食品、料理を、必要な人々とシェアする「連帯冷蔵庫」が設置されたそうだ。いくつかルールがあり、生の肉、魚などは入れてはいけない。自家製食品は、調理した日付を記したラベルを貼るなど。

 草の根の活動も重要だが、フランス、スペインのように国、自治体挙げての取り組みが日本にも必要ではないか。

翌年2016年2月に出版された工藤律子さんの著書『ルポ 雇用なしで生きる――スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦 』(岩波書店)でも紹介される(3)など、日本でも、ほんの一部ではあるが、少しずつ知る人が増えてきている。

2019年にはインドにも登場した。

2020年11月、岡山に日本初「コミュニティフリッジ(公共冷蔵庫)」

2020年11月20日、岡山市の複合商業施設に「コミュニティフリッジ(公共冷蔵庫)」が登場し、運用が始まった(4)。個人や企業が食料品や日用品を寄付し、必要とする人がいつでも無料で受け取ることができる。岡山市の一般社団法人 北長瀬エリアマネジメントが、新型コロナウイルス感染症の影響で困窮する人たちを支援する目的で企画した(5)。 公式Twitterでは「低所得者にとっては、とても心強くて嬉しいサービスです。ありがとうございます。」との利用者の声が紹介されている。

このコミュニティフリッジには、約350世帯が利用登録している。主催する一般社団法人 北長瀬エリアマネジメントは、2021年5月31日、民間企業2社と協定を結んだ。食品卸業の「日本アクセス」(東京)と運送業「岡山スイキュウ」(岡山市)だ。日本アクセスが提供した食料品を、岡山スイキュウが通常ルートに組み込んで配送する。これにより、ほぼ毎日、まとまった量の食材が届く。協定を結んだことにより、21種類650点の豆腐や冷凍野菜などが届いた(6)。

2021年3月、大阪市に「ばんざい東あわじ」を開設し冷蔵庫設置

大阪市東淀川区には、2021年3月、1g1円でお惣菜を提供する循環型地域食堂「ばんざい東あわじ」が開設され、冷蔵庫が設置された(7)。整骨院や学習塾を営む本川(ほんかわ)誠さんが始めた。この取り組みは、中国新聞(8)や日本経済新聞(9)、中日新聞(10)でも紹介された。

1g1円でおばんざい(惣菜)を提供する(ばんざい東あわじ公式サイトより)
1g1円でおばんざい(惣菜)を提供する(ばんざい東あわじ公式サイトより)

2021年6月10日から大阪府寝屋川市民たすけあいの会が開設目指し活動

大阪府寝屋川市では、NPO寝屋川市民たすけあいの会が、コミュニティフリッジを開設するためのクラウドファンディングを2021年6月10日から始めている。

寝屋川コミュニティフリッジ(大阪府寝屋川市民たすけあいの会 クラウドファンディングページより)
寝屋川コミュニティフリッジ(大阪府寝屋川市民たすけあいの会 クラウドファンディングページより)

食の安全性を重視する日本で活動を広げるために

日本では、食の安全性が重視される。これは筆者が世界180ヶ国でビジネスを展開するグローバル食品メーカーに14年5ヶ月勤めた経験からの実感だ。もちろん、それは大事なことだが、時に過剰なほどそれを追求される。街角冷蔵庫や公共冷蔵庫の活動が関西を含めた西日本で始まったのも納得がいく。東京は、前例やリスクを嫌う風潮が西日本より強いからだ(筆者の個人的感想)。

筆者が食品ロス問題に関わったのは2008年からだが、まだここまで「食品ロス」問題が認識される前、個人の家庭の余剰食品を集める「フードドライブ」に懸念を示す声もよく聞かれた。霞が関では、はっきり「賛成しない」と言われた。

だが、フードドライブは、全国の自治体でも、食品の回収拠点が常設されるまでになってきた。東京都世田谷区や杉並区、文京区、岩手県盛岡市など、公民館や役所の庁舎を使って食品を集め、必要な人へと届けられている。これは行政の力も大きいと、ここ10年以上の動きを見ていて実感している。

「街角冷蔵庫」や「公共冷蔵庫」も、行政の方が賛同して理解を示し、活動に加わってくださることを願っている。食品ロスを減らし、コロナ禍で増加する困窮者を支援するのは、行政の役割でもあるはずだ。

参考情報

1)食べきれなかった料理を街の人とシェア。スペインの「連帯冷蔵庫」とは?(ハフポスト、2015年8月18日)

2)私説 論説室から 「連帯冷蔵庫」(東京新聞、2015年9月28日)

3)『ルポ 雇用なしで生きる――スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦』工藤律子著、岩波書店

4)北長瀬コミュニティフリッジ 公式サイト

5)「公共冷蔵庫」岡山で運用スタート コロナ禍の生活を24時間支援(山陽新聞、2020年11月20日)

6)公共冷蔵庫、品ぞろえ充実 2社が取り組み賛同 岡山県(朝日新聞、2021年6月16日)

7)ばんざい東あわじ 公式サイト

8)関西くろすろーど 大阪「おばんざい」寄付 街角に冷蔵庫 回る善意(中国新聞、2021年6月13日)

9)街角冷蔵庫 自由に食べて(日本経済新聞夕刊、2021年6月15日)

10)ひと・まち関西 惣菜や食材 ご自由に(中日新聞、2021年6月18日)

冷蔵庫は「魔法の箱」なのかー食品ロスの46%は家庭から、無駄をなくす新技術の今(井出留美、2021年5月27日)