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飛行機より食品ロスの方が気候変動に影響大?食品捨てると車並みの温室効果ガス

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

3月23日は世界気象デー。1950年3月23日に世界気象機関条約が発効されたのを記念し、世界気象機関(WMO)が定めた。

飛行機より食品ロスの方が気候変動への影響力は大きく自動車並み

「飛行機と食品ロス、どちらが温室効果ガスの発生源?」と訊ねたら、多くの人が「飛行機」と答えるのではないだろうか。スウェーデンの活動家、グレタ・トゥーンベリさんは、飛行機に乗らずに船に乗って国際会議に出席した。スウェーデンでは、温室効果ガスを出す飛行機に乗るのは恥ずかしい、ということで、「飛び恥」という言葉も生まれた。

しかし、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書「気候変動と土地」によると、2010〜2016年に排出された温室効果ガスのうち、飛行機によるものは1%台で、8〜10%は食品ロスによる。その排出量は自動車並みだ。

World Resources Institute (WRI)のグラフを元に筆者がパワポ作成
World Resources Institute (WRI)のグラフを元に筆者がパワポ作成

英国のWRAPによると、英国では5人に4人(81%)が気候変動のことを心配しているが、食品ロスと気候変動の関連について知っているのは、たったの32%に過ぎない。

2021年3月4日、国連環境計画(UNEP)は、世界の食料生産のうち、消費者が入手し得るものの17%が廃棄と発表した。世界の食料生産量の3分の1が捨てられている(FAO)。

世界の食料システムがこのままだとパリ協定の目標到達は不可能

2020年11月6日の学術誌『Science』の論文は、パリ協定が目指す気温上昇(1.5〜2)は、今のままでは到達不可能と指摘した。

米ミネソタ大学と英オックスフォード大学の研究者らが行なった研究によれば、世界の食料システムが現在の成長軌道を維持した場合、今後80年間で1兆3,560億トンの温室効果ガスが発生する。仮に化石燃料の排出を直ちに止めてたとしても、2度に抑えるという目標すら危ぶまれるというのだ。

論文の著者らは、具体策として、食品ロス削減で温室効果ガスを3,600億トン削減可能、食生活を植物性食品に変更し6,500億トン削減、適切なエネルギー量摂取で4,100億トン削減などを挙げている。これらを単独で実施するより、半分ずつでも複合的に行えば、8,500億トンが削減できる。

飛行機に乗らない、食品ロスを減らす、それだけでは、気候変動の影響を抑えるのには間に合わないのだ。飲み水の500倍の水を要するといわれる食品産業も、省資源化の必要が迫られる。

分ければ資源 混ぜればごみ

「分ければ資源 混ぜればごみ」という標語がある。日本は生ごみや落ち葉、剪定した枝など多くの自治体で焼却している。コンビニ・スーパーで残った食品や飲食店の食べ残しは事業系一般廃棄物として家庭ごみと一緒に焼却処分する自治体がほとんどだ。重量の80%を水分が占める生ごみは燃えにくいため、燃焼剤をかけ、膨大なエネルギーとコストを費やし焼却している。世界の焼却炉のうち半数以上が日本にあり、世界のごみ焼却量のトップを占めるのは日本だ(OECD、2017年)。

欧州では、食品の生ごみや、落ち葉、剪定した枝は「organic(オーガニック)」として分別回収し、資源化している。

韓国でも95%以上の生ごみがリサイクルされているし、スウェーデンでは街中にポスト型の生ごみ回収機がある。

千葉県市川市は市民が24時間投入できるポスト型生ごみ分別回収の実験を始めた。バイオガス発電に使われるという。計画では、今後数年間で300基まで増やす。

食品ロスを減らすために

ごみになる前に食品ロスそれ自体を減らすことが重要だ。人口140万人の京都市は、2000年に82万トンだったごみ量を2020年に半減させた。全国の政令指定都市の中でも家庭ごみが最も少ないが、事業系ごみの削減に苦慮した。京都市内のスーパー(平和堂・イズミヤ)で、多くのスーパーがやるように販売期限で食品を棚から撤去することをせず、期限ギリギリまで販売したら食品ロスが10%削減した。その実証実験の結果を公表し、計測を徹底して実施した。

徳島県の家庭では、食品ロスを測るだけで23%減った。

「食品ロス、測れば減る」

「分ければ資源 混ぜればごみ」

をキーワードに実践し、負の遺産を若い世代に押し付けないようにしなければならない。

参考記事

「気候変動と食品ロス?」 コロナの時代の食品ロス(米国編 vol.3)SDGs世界レポ(63)(2021.3.15、井出留美)

国連4日夜発表速報 年10億トン近く廃棄 食品ロスは温室効果ガス排出10%で気候変動の主要因(61)(2021.3.5、井出留美)

世界の食料システムがパリ協定の気候変動目標を妨げる可能性『サイエンス』誌:SDGs世界レポ(46)(2020.11.18、井出留美)

コロナ禍で注目集まるフードドライブ 米国では郵便配達員が食品回収、なぜ? SDGs世界レポ(56)(2021.1.25、井出留美)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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