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ベトナムのスーパーではバナナの葉で野菜をくるんで販売、米粉ストローも プラごみ削減、G20大阪を前に

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
ベトナム・ハノイのロッテマートで販売されているバナナの葉で包んだ青菜(筆者撮影)

2019年6月28日よりG20大阪サミットが開催される。主要な議題の一つとなるのがプラスチックごみ問題だ。WWF(世界自然保護基金)ジャパンは、河野外務大臣に「減プラスチック社会提言書」と「プラスチック汚染問題対策についての提言」という2つの提言書を渡している。

脱プラスチックは、その分野の専門家の話によれば、業界からの反対があり、日本ではなかなか進まないと聞いている。

そんな中、東南アジアで脱プラスチックの参考事例になりそうな事例を教えて頂いた。

タイやベトナムのスーパーでは、野菜を包むのに、プラスチックではなく、バナナの葉を使い始めているという。

ベトナムでは1日2,500トンのプラごみを排出、海に捨てられるプラスチックは世界で4番目に多い

ベトナムでは、1日に2,500トンのプラスチックごみを排出しており、海に捨てられるプラスチックごみは世界で4番目に多いそうだ(2019年4月3日、VnExpressの記事より)。

筆者は2017年より、農林水産省ASEAN事業の寄付講座で、東南アジア10カ国の大学へ、農産物を食品ロスにしないための商品開発ワークショップや講義に出向いている。2019年6月24日には、6カ国目(7回目)となるベトナム王立農業大学で、食品科学技術学部の学部生と院生200名と社会人の方々へ、講義を行った。

その合間を縫って、ベトナムのスーパーへ行ってみた。

2019年6月24日、農林水産省ASEAN事業寄付講座の一環で、ベトナム王立農業大学の食品科学技術学部の学部2・3・4年生、院生200名と社会人へ、農産物を食品ロスにしないための商品開発ワークショップ(関係者撮影)
2019年6月24日、農林水産省ASEAN事業寄付講座の一環で、ベトナム王立農業大学の食品科学技術学部の学部2・3・4年生、院生200名と社会人へ、農産物を食品ロスにしないための商品開発ワークショップ(関係者撮影)

Big Cスーパーマーケットでは紙製ストローが販売

2019年4月3日付のVnExpressの記事によれば、Big Cという名前のスーパーマーケットでは、生分解性の、とうもろこし粉で作ったショッピングバッグを提供しているという。

まずはBig Cスーパーマーケット(Big C Supermarket Artemis)へ行ってみた。ハノイ市内にいくつか店舗があるようで、今回は、ハノイ医科大学のそばの店舗へ行った。

地下にBig Cスーパーマーケットが入っているビルの外観。映画館も入っている(筆者撮影)
地下にBig Cスーパーマーケットが入っているビルの外観。映画館も入っている(筆者撮影)

買い物客に提供されている袋は、白地に赤い文字が入ったもの。

ベトナム・ハノイのBig Cスーパーマーケットの袋(筆者撮影)
ベトナム・ハノイのBig Cスーパーマーケットの袋(筆者撮影)

野菜や果物は、キロ単位で量り売り。その袋は、白地に緑の文字が入ったもの。手触りから、おそらく生分解性のものだと思われる。イタリアの、あるスーパーで使われていた手触りと似ている。

ベトナム・ハノイのBig C スーパーマーケットの生鮮食品売り場で使われている袋(筆者撮影)
ベトナム・ハノイのBig C スーパーマーケットの生鮮食品売り場で使われている袋(筆者撮影)

野菜売り場を見渡したが、バナナの葉の包装は使われていないようだ。

ベトナム・ハノイのBig Cスーパーマーケットの野菜売り場。量り売りで、量ってくれる店員のところに顧客が並んでいる(筆者撮影)
ベトナム・ハノイのBig Cスーパーマーケットの野菜売り場。量り売りで、量ってくれる店員のところに顧客が並んでいる(筆者撮影)

その代わり、日用品コーナーには、紙製のストローが数種類、販売されていた。直径が6mmのもの(25本入り)と、8mmのもの(15本入り)。柄もさまざまで、無地の茶色のものから、水玉模様、星の模様、縞(しま)模様などがある。

値段は、15本入りが、15,900ベトナムドン(日本円で73円程度、2019年6月25日現在)、25本入りが23,000ベトナムドン(日本円で105円程度)。

ベトナム・ハノイのBig Cスーパーマーケットで販売されていた紙製ストロー(筆者撮影)
ベトナム・ハノイのBig Cスーパーマーケットで販売されていた紙製ストロー(筆者撮影)

ロッテマートにはバナナの葉でくるんだ野菜が並んでいる

次に、Big Cスーパーマーケットから徒歩20分ほど離れた、ロッテマート(Lotte Mart Mipec)へ行ってみた。

ロッテマートの入ったビル(筆者撮影)
ロッテマートの入ったビル(筆者撮影)

野菜売り場へ行ってみると、バナナの葉でくるんだ青菜類がたくさん並んでいる。

ベトナム・ハノイのロッテマートの野菜売り場に並ぶ、バナナの葉でくるんだ青菜類(筆者撮影)
ベトナム・ハノイのロッテマートの野菜売り場に並ぶ、バナナの葉でくるんだ青菜類(筆者撮影)

ベトナムは、市場へ行くと、青菜類の種類の豊富さがよくわかる。

ベトナムの市場。青菜がたくさん並ぶ(筆者撮影)
ベトナムの市場。青菜がたくさん並ぶ(筆者撮影)

このスーパーでも、青梗菜(チンゲンサイ)や空芯菜(くうしんさい)、香菜(パクチーまたはコリアンダー)など、たくさんの種類が見られる。

青菜だけではなく、ねぎや、ミントの葉などのハーブ類も、バナナの葉でくるんである。

ハーブ類もバナナの葉でくるんである(筆者撮影)
ハーブ類もバナナの葉でくるんである(筆者撮影)

ただし、その売り場の裏に回ってみると、プラスティックの包装袋に入れられた野菜類も販売されている。すべてがバナナの葉に切り替わっているわけではない。

米粉と小麦粉で作ったストローも!

ロッテマートの日用品売り場へ行ってみると、環境配慮の製品が並んでいる。コンポスト(堆肥)にできるスプーン・フォーク・ナイフなどの食器や、袋。

値段は、スプーン10本入り、フォーク10本入り、ナイフ10本入りが、それぞれ1箱9,900ベトナムドン(日本円で45円程度)。

環境配慮の袋は、30cm・55cm・18cmの大きさが25袋入って、79,000ベトナムドン(日本円で362円。1袋14円程度)。

コンポスト(堆肥)にできる食器類(筆者撮影)
コンポスト(堆肥)にできる食器類(筆者撮影)

そして、初めて目にしたのが、米粉と小麦粉を使って作ったストロー。500g入って、39,900ベトナムドン(日本円で183円程度)。「#ReducePlasticWaste」(プラスチックごみを減らそう)というタグもパッケージに書かれている。

左側の黄色い袋に入っているのが米粉と小麦粉を使って作ったストロー(筆者撮影)
左側の黄色い袋に入っているのが米粉と小麦粉を使って作ったストロー(筆者撮影)

”aneco"(アネコ)と書かれたブランドのコーナーには、とうもろこしを原料としていることを示すPOPがつけられている。

anecoというブランドのPOP(筆者撮影)
anecoというブランドのPOP(筆者撮影)

米粉ストローは使えるのか?

はたして米粉ストローは使えるのだろうか。

水に浸してみた。

水で浸した米粉ストロー(グレーの方、白いのは紙製ストロー)(筆者撮影)
水で浸した米粉ストロー(グレーの方、白いのは紙製ストロー)(筆者撮影)

40分ぐらい浸してみたところ、パスタがゆだったあとのように、ふやけた感じではあるが、手で力を加えない限りはストローの機能を果たしている。

左のグレーの方が米粉と小麦粉で作ったストロー。水で浸した上部がふやけて色が変わっているが、穴は保たれている(筆者撮影)
左のグレーの方が米粉と小麦粉で作ったストロー。水で浸した上部がふやけて色が変わっているが、穴は保たれている(筆者撮影)

ベトナム王立農業大学の学生もグレープフルーツの実をつつんだ皮で作るバイオ袋を商品開発

2019年6月24日、ベトナム王立農業大学では、200名の学生・院生たちが6つのグループに分かれて、農産物を捨てずに活かした商品開発を発表してもらった。

1つのグループは、グレープフルーツの実をつつんでいた薄皮を捨てずに活かし、バイオマスの袋を商品開発した。グレープフルーツのほかにも、さとうきびの絞りかすやオレンジの皮なども、セルロース(繊維)を含む自然のポリマーとして使えると発表しており、なかなか面白いアイディアだった。

2019年6月24日、ベトナム王立農業大学での講義。前列右から3人目が筆者(ASEAN事務局撮影)
2019年6月24日、ベトナム王立農業大学での講義。前列右から3人目が筆者(ASEAN事務局撮影)

フィリピンの小さい島の飲食店でも竹ストローやステンレスストローを使用

フィリピンの小さな島の飲食店を2019年5月に訪問したところ、竹製のストローやステンレス製のストローに切り替えていた。店員は「海の環境を守るため」などと答えていた。

フィリピンの小さい島の飲食店。ステンレス製のストローを使っている(筆者撮影)
フィリピンの小さい島の飲食店。ステンレス製のストローを使っている(筆者撮影)

また、全店舗ではないが、フィリピンのコンビニやショッピングモールでは、プラ袋から紙袋に切り替え始めている。

プラ袋の代わりに紙袋を使って商品を入れるフィリピン・セブ島の店。とはいえ、商品にはプラスチック包装が使われている(筆者撮影)
プラ袋の代わりに紙袋を使って商品を入れるフィリピン・セブ島の店。とはいえ、商品にはプラスチック包装が使われている(筆者撮影)

日本も待ったなしの状況

「食品ロス」と並んで世界的な課題となっているのが「プラスチックごみ」だ。

冒頭に書いた通り、プラスチックに詳しい専門家の話では、日本ではコンビニ業界をはじめとした業界関係者の反対が大きく、なかなか脱プラが進まないという(プラスチックごみ専門家に取材したマスメディア談)。

日本の中でもその美しさが有名な海。そのかたわらにはプラスチックごみがたくさん捨てられていた。漂流してきたものもあるかもしれない(筆者撮影)
日本の中でもその美しさが有名な海。そのかたわらにはプラスチックごみがたくさん捨てられていた。漂流してきたものもあるかもしれない(筆者撮影)

だが、こうしてみると、先進諸国ばかりか、東南アジアの国々でも、少しずつではあるが、プラスチックを使わず、代替品の使用に切り替える例が増えている。

2019年6月28日、大阪で開催されるG20。日本は議長国だ。前述のような他国の脱プラ事例を見習いつつ、リーダーシップを示したい。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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