Yahoo!ニュース

フィリピンの小島の飲食店に遅れをとる日本の脱プラストロー 6月のG20でも海洋プラごみが議題予定に

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
フィリピンの小島の海と、飲食店で使われていた竹製ストロー(筆者撮影)

2019年5月、新潟で、G20(主要20カ国・地域)農相会合が開催された。食品ロスを削減する流通体制などが議論された。

6月には、G20エネルギー・環境関係閣僚会合が予定されている。議題は海洋プラスチックごみによる海洋汚染が主要な議題となる。

食品ロス削減も、プラごみ削減も、「地球を守るため、これ以上、無駄(廃棄物)を出さない」という考え方の上で共通している。

2018年にはグローバル企業がプラスチックストローの禁止を発表。2019年には日本のコンビニやスーパーも、2030年を目標に、自社の脱プラ対策を発表し始めている。だが、2030年は、10年以上先の話だ。

そんな中、フィリピンの、小さい島では、すでに、海洋環境を守るための環境対策を講じ始めていた。

SDGs(持続可能な開発目標)では17の目標のうち、14番目に「海の豊かさを守ろう」が掲げられている(国連広報センターHP)
SDGs(持続可能な開発目標)では17の目標のうち、14番目に「海の豊かさを守ろう」が掲げられている(国連広報センターHP)

一軒目:ステンレス製ストロー

筆者がフィリピンの小島へ渡航したのは2019年4月。開店して、まだ数年の、小さな飲食店に入った。

カクテルを頼んで出てきたのが、プラスチックのストロー、ではなく、ステンレス製のストローだった。

こんな田舎の小さな島で・・・と言ったら申し訳ないが、環境対策などまったく期待していなかったので、驚いた。

この島は、日本人100人に聞いたら100人ともその存在を知らないような、小さな島だ。

女性店員に「なぜ、これ(ステンレス製ストロー)を使っているの?」と聞いたら「環境を守るため」という答えが返ってきた。

とはいえ、訪問したのは1店舗。この店だけなら、まあ、まぐれだろう。

カクテルと一緒に出されたステンレス製ストロー(筆者撮影)
カクテルと一緒に出されたステンレス製ストロー(筆者撮影)

二軒目:竹製ストロー

今度は別の飲食店へ行ってみた。すると、今度は、マンゴーシェイクに竹のストローが出てきた。

この店では、竹製のストローを販売もしていた。男性の店員に、使っている目的を聞くと、やはり「環境配慮」とのことだった。

マンゴーシェイク。竹製ストローと共に出された(筆者撮影)
マンゴーシェイク。竹製ストローと共に出された(筆者撮影)

三軒目:竹製ストロー

そして今度は別のカフェへ。ここでも、前述の二軒目の店と同じ、竹製のストローを販売していた。ストローの箱には、2013年に発生し、フィリピンの多くの島で被害を受けたヨランダ台風からの復興も目的としていることが書かれている。女性店員に販売の目的を聞くと、「海(の環境)を守るため」とのことだった。

12本入りで、洗浄用のブラシも付いて、495ペソ(約1,029円、2019年5月14日付レートによる換算)。

二軒目と三軒目の店で販売されていた竹製ストロー(バンブーストロー)(筆者撮影)
二軒目と三軒目の店で販売されていた竹製ストロー(バンブーストロー)(筆者撮影)

日本から見れば、フィリピンは途上国。首都のメトロマニラではなく、そこから離れた小さい島で、ここまで進んでいることに驚いた。

セブ空港のカフェや民芸品店、航空機内でステンレス製ストローや竹製ストローの販売

セブの空港では「Bo's Coffee」というカフェで、ステンレス製のストローを販売していた。布製袋に入ったものが390ペソ(約810円)、入っていない1本のものが150ペソ(約311円)。

民芸品などを販売する店では、竹製ストローを1本50ペソ(約103円)で販売していた。

フィリピン・セブ空港内の民芸品店で販売されている竹製ストロー。1本50ペソ(筆者撮影)
フィリピン・セブ空港内の民芸品店で販売されている竹製ストロー。1本50ペソ(筆者撮影)

また、セブ・パシフィック空港の機内でも、海などの環境を守るためのプロジェクトを立ち上げ、その一環として、ステンレス製のストローを販売していた。

左がBo's Coffeeで販売されていたステンレス製ストロー、右がセブ・パシフィックの機内で販売されていたステンレス製ストロー(筆者撮影)
左がBo's Coffeeで販売されていたステンレス製ストロー、右がセブ・パシフィックの機内で販売されていたステンレス製ストロー(筆者撮影)

フィリピンではストローだけでなくコンビニ・スーパーのプラ袋も紙製へと転換

2018年、脱プラ対策の一環として、多くの企業が発表した「プラストロー禁止」。この報道を受け、「ストローだけじゃない」という声が上がった。そう、プラスチックは世の中にあふれている。

筆者が2015年、フィリピンに渡航した時、首都のメトロマニラやセブのコンビニエンスストアでは、プラ袋ではなく、紙のバッグを使い始めていた。

同じ時期、セブ島のショッピングモール内にあるスーパーマーケットでも、紙袋を使っていた。

いくつかの店舗を回ったところ、全店舗ではなく、一部の店舗だけのようだった。だが、この取り組みは、日本よりもずっと早いのではないだろうか。

2018年9月、農林水産省ASEAN事業の一環でセブの大学へ食品ロスの講義に行った。大手マンゴー加工企業の工場を訪問した際、販売店では、やはり、紙袋を使っていた。

フィリピン・セブの大手マンゴー加工企業の販売店では、購入したドライマンゴーを入れるのにプラ袋ではなく、紙袋を使っていた(筆者撮影)
フィリピン・セブの大手マンゴー加工企業の販売店では、購入したドライマンゴーを入れるのにプラ袋ではなく、紙袋を使っていた(筆者撮影)

国内メーカーはプラストローの代替品に着手

国内メーカーは、脱プラストローの流れを受け、紙製ストローや、環境負荷をかけない製品の製造に着手している。

脱プラスチックは代替素材の需要を喚起し、新たなビジネスチャンスも生みだす。

製紙大手の日本製紙は今春、ホテルやレストランなどの事業者向けに紙製ストローの販売を始めた。

溶かしたプラスチックを金型に流し込んで製品の形にする射出成形機を製造する日精樹脂工業(長野県埴科郡坂城町)は、植物由来の原料を射出成形できる機械を開発・販売し、独自技術で市場の開拓を進めている。

出典:2019年5月12日付 信濃毎日新聞朝刊3面

SDGs(国連広報センターHP)
SDGs(国連広報センターHP)

プリンスホテルや大手外食はプラストロー廃止

2019年6月のG20の会場となるプリンスホテルは、国内のホテルやスキー場、ゴルフ場のレストランで、プラスチック製ストローの使用を順次、やめる。

外食や小売も動いている。すかいらーくホールディングスがプラスチック製ストローの使用を取りやめる。セブン&アイ・ホールディングスは2030年を目処にプラスチック製レジ袋の全廃を発表した。

2030目標もいいが、小さな規模で、今この瞬間からできることを

大手企業は、SDGs(持続可能な開発目標)の手前、やらざるを得ない、ということもあるだろう。

フィリピンの小島で何より驚いたのは、そのへんにある小さな飲食店で、当たり前のように、ステンレス製ストローや竹製ストローが使われ、販売されていたことだ。

そして、現場の従業員に聞くと、「環境のため」「海を守るため」という答えが、すぐに返ってくること。経営者の考え方が、現場まで浸透している。

日本では、大手企業こそ脱プラ対策に着手すれども、地方の小さな飲食店まで浸透しているかと問われると、どうだろうか。

引退したイチロー選手の言葉である

小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただひとつの道

出典:引退したイチロー選手の名言

を思い起こすと、中長期的な目標を掲げるのと並行して、今、この瞬間からできること(短期的な取り組み)を重ねていくことが必要だと痛感する。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

井出留美の最近の記事