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来日する外国人観光客に飲食店の味や量をどう伝える? トルコ・イスタンブールでの体験から

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
トルコ・ブルーモスク(写真:アフロ)

トルコ・イスタンブールを訪問した。船で海を渡り、カドキョイという街の、あるロカンタ(大衆食堂)に入った。カウンターにはいろんな料理が並んでおり、「これ」と指をさして注文する。

「こんな味かな?」と想像して頼んだ料理が、予想と違う味の場合もある。下の写真の真ん中にある、シチューのような料理。日本のクリームシチューの味を思い浮かべて頼んだ。

トルコ・カドキョイのロカンタで頼んだ食事(筆者撮影)
トルコ・カドキョイのロカンタで頼んだ食事(筆者撮影)

実際、食べてみたら、酸味が強く、予想していたのと違う味だった。

来日する外国人も同じ体験をするのでは?

「インスタ映え」にはご用心 トルコ・イスタンブールでの体験からという記事でも、「見かけは綺麗だったが、味は予想より甘過ぎた」と書いた。そうしたら、ツイッターで「トルコは全てのデザートが甘いのは当たり前。事前調査が足りないのだから自己責任」といった趣旨のことを書いていた人がいた。それはそうかもしれない。が、国内の飲食店の全ての食べ物の味が、ガイドブックの限られた情報だけでわかるわけではない。

筆者がトルコで体験したのと同じようなことを、来日する外国人も体験するのではないだろうか、と考えた。

日本の飲食店や宿泊施設では、イスラム教の方への対応として、豚肉やアルコールの使用有無をわかるようにする努力は進められてきている。いわゆる「ハラル(イスラム教で「許された」という意味)」である。留学生の多い大学では生協や食堂でハラル食が出されるところも増えてきている。国内外からの観光客が多い京都市では、ホテルのビュッフェが全てハラル対応になっているケースもある。

だが、日本の多くの飲食店では、その料理がどんな味なのか、というのまでは、十分に伝えきれていないように思う。客側が「わかっている」前提で店のメニューが作られているからだ。

国によって「一人分」の量が違い、外国人にとっては量も予想がつかない

味が予想つかないのもそうだが、量も同じである。トルコで、指をさして注文するとき、店の人が「One portion(ワンポーション?)(一人前?)」と聞いてきた。そこで「Yes」と答えたのだが、どうやら、この「一人分」の量がとても多かった。

筆者が青年海外協力隊として活動したフィリピンにも、複数の料理が並べられていて、客は指をさして注文する「トゥロトゥロ」という大衆食堂がある。そこで出てくる「One portion」は、とても少ない。だから、こちらもそれを見越して、数種類を注文する。

トルコで、その感覚で頼んだら、予想の2倍以上の量になってしまった。開店と同時に入ったため、ほかのお客さんの頼み方が見えなかったのだが、後から入ってきたお客さんの注文の仕方を見ていると、どうやら、「Half portion(ハーフポーション)(半人前)」で一つの料理を頼み、それを複数頼んで量を調整する・・・というようにしているようだった。

トルコのロカンタ(大衆食堂)で注文した料理(筆者撮影)
トルコのロカンタ(大衆食堂)で注文した料理(筆者撮影)

食品ロスとなる食べ残しを減らすため、飲食店側が外国人観光客のために準備できること

トルコでは、頼んだ量が多過ぎたり、思っていた味と違ったりして、食べ残してしまった。

トルコ・イスタンブールで注文した食事(筆者撮影)
トルコ・イスタンブールで注文した食事(筆者撮影)

外国人観光客にとって、量や味の、予想と実際との齟齬(そご:ギャップ)をできるだけ無くすために、何かできることはないだろうか。

そう思って調べていたところ、公益財団法人東京都生活衛生営業指導センターが作成した「外国人観光客対応ツール 活用マニュアル」というのがあった。

外国人観光客対応ツール 活用マニュアル(公益財団法人 東京都生活衛生営業指導センター)

英語や中国語、韓国語などでのメニューの示し方や、その料理がどのような素材をどのように料理してあるかを説明する方法、原材料をピクトグラム(イラスト・アイコンのようなもの)でわかりやすく示す方法などが掲載されている。

このマニュアルの7ページに、東京都産業労働局観光部が行った「訪都外国人への多言語対応に関するWEB調査」の結果が掲載されている。東京の飲食店で困ったことの1位に「メニューに多言語表記がなく、内容がわからなかった」というのが挙げられている。つまり、味や量どころか、メニュー名すらわからなかった、ということだろう。

出典:東京都産業労働局観光部「訪都外国人への多言語対応に関するWEB調査」の結果。外国人観光客対応ツール 活用マニュアル(公益財団法人 東京都生活衛生営業指導センター)
出典:東京都産業労働局観光部「訪都外国人への多言語対応に関するWEB調査」の結果。外国人観光客対応ツール 活用マニュアル(公益財団法人 東京都生活衛生営業指導センター)

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、来日する外国人観光客にとって、少しでもわかりやすい飲食店での対応ができると、日本の印象がよくなり、食品ロスも減らすことができて、一石二鳥だと感じた。

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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