コンビニオーナーが見切り販売をしない5つの理由

あるコンビニ店で200円引きのシールを貼られた幕の内弁当(2017年8月撮影)

2009年、コンビニ最大手のセブン‐イレブン・ジャパンに対し、最高裁は、見切り販売の妨害は独占禁止法の優越的地位の濫用にあたるとして排除措置命令を出した。あれから8年。一部のコンビニオーナーは、弁当やおにぎり、サンドウィッチなどの見切り販売を行なうが、全国55,176店舗( 日本フランチャイズチェーン協会、2017年7月度 コンビニエンスストア統計調査月報)のコンビニで、見切り販売を目にすることは少ない。なぜだろうか。今回、東日本で大手コンビニチェーンのオーナーを務めるXさんに取材をおこなった。

競合店が出てきて経営が成り立たなくなる恐れから見切り販売をスタート

Xさんが見切り販売を始めたのは今年に入ってからだという。開店当初は売上もよかったが、だんだんと近所に競合店が出てきて売上が落ちてきた。開店前のオーナー研修では「最低、廃棄は、(売上の)2%は出さないと」と言われた。一日の売上の「3%」までが廃棄、と言われ、その上限でコントロールするよう努力してきたが、それでも経営が成り立たなくなってきた。人件費も高い。無駄をしぼることが必要となってきたのが、見切り販売を始めたきっかけだと語る。

見切りを始める前と始めた後とで比較すると、以前、3%以上あった廃棄率は、見切りを始めてから1%台(1.8〜1.9%)まで抑えることができるようになった。また、2%前半まで落ち込んでいた利益率も、見切り販売を始めてからは、3%後半にまで改善した。収入は確実に増えている。

実際、見切り販売を始めたオーナー複数名にも取材し、見切り前後で比較してもらったところ、月商平均で約30万円増えている。もちろん、この金額は、地域や店舗、取り扱う商品によって異なる。

あるコンビニエンスストアで見切り販売されていたサンドウィッチ(2017年8月撮影)
あるコンビニエンスストアで見切り販売されていたサンドウィッチ(2017年8月撮影)

見切り販売するとオーナーは儲かる反面、本部の取り分は ”全捨て(全部捨てる)” より減る

「でも、コンビニ会計によって、本部の取り分は少なくなるんですよね?」と聞くと、その通りだという。

コンビニ会計の参考記事「こんなに捨てています・・」コンビニオーナーたちの苦悩

Xさんいわく、どのコンビニチェーンも、本部からの無言の圧力がある。それにどう立ち向かうかが「コンビニオーナーの腕の見せ所」。サラリーマンじゃないんだから、自分の意思で、自分の思う経営をする。知り合いには本部の言いなりのオーナーもいるが、その人は1日に3〜4万円の廃棄を出しているという。

本部は週あたりの販売をチェックしていて、「一週間分まとめて発注するように」と指示する。だが、Xさんは、あえてこまめに分散して発注している。そのほうが、手間はかかるが、お客さんに新しいものを提供できるからだ。

あるコンビニで見切り販売されていたおにぎり(2017年8月撮影)
あるコンビニで見切り販売されていたおにぎり(2017年8月撮影)

本部の言い分は

Xさんに取材した後日、Xさんが属する大手コンビニエンスストアチェーン本部に、見切り販売について取材したとき(2017年8月)の答えは、以下の通りである。

「値引き(見切り)販売を容認」と言ってしまうと、”フリー” ”どうぞ”という感覚になってしまう。記事でそう書かれてしまうと、ちょっと…。我々が、加盟店に対して、値引き(見切り)販売を制限することはない。最終価格は、加盟店が決めるものだから。ただ、むやみな値下げをしてしまうのも困る。」

「コンビニというのは、お客さまが欲しいときに欲しいものがそろっているもの。価格に対しても信用してもらいたい。販売する上で、値下げを前提ということは良くなくて、売り切る努力をしてほしい。値下げを、積極的に勧めているわけではない。適正な売価で売るということ(が大事)。お客さまに、価格に対する不信感を持たせるのはよくない。」

Xさんの、見切り販売での工夫点

Xさんは、見切り販売をするにあたり、次のような工夫をしている。

見切りの実施曜日や時間帯をランダムにする

見切り目当ての客ばかりになると困るので、見切りをやる時間帯や曜日をランダムにしている。「この店は、何時になると見切りをやっている」というイメージをつけたくない。買う側は「(同じ値段なら)新しいものを買いたい」と思っており、奥からとるのは(うちの店では)年配女性が多い。

見切りとそうでない平常時とのメリハリをつける

麺類50円引きセールやおにぎり100円セール、冬のおでんセールなどは、勝負どき。そういうときは廃棄もいとわない覚悟をする。また、1ヶ月の中でも「月始めはしぼるぞ」とか、数ヶ月の中で「今月はしぼるぞ」など、見切りして廃棄を減らす時とそうでないときとのメリハリをつけている。

3種類の鮮度のものを同じ棚に並べるのはNG

食パンなどは、9月2日、3日、4日・・・と並べると、お客さんは必ず4日のものを買っていってしまい、2日と3日の日付のものが残ってしまう。したがって、3種類の鮮度は置かない。1鮮度、もしくは2鮮度まで。

先入れ先出しの徹底

徹底的に鮮度管理をすることで、古いものが残って捨てざるを得ない・・・ということが減る

見切りは「最後のお守り」

常態化させない。

以上、これらのポイントは、見切り販売を躊躇している全国のオーナーさんにも参考になるのでは・・と思う。

あるコンビニで見切り販売されていたおにぎりや弁当(2017年8月撮影)
あるコンビニで見切り販売されていたおにぎりや弁当(2017年8月撮影)

コンビニオーナーが見切り販売をしづらい主な5つの理由

1、契約更新されない・契約解除などのリスクを恐れている

最高裁で判決が出たとはいえ、コンビニ会計に基づき、見切り販売をしないで捨てたほうが、本部の取り分は多くなるので、本部の本音としては、見切り販売をしないで欲しい。それは、前回の記事の本部へのインタビューでもかいま見られた。オーナー自身が契約更新するかしないかを決められるわけではない。本部の一存にかかっている。そして、オーナーは、皆、生活がかかっているのだ。契約更新時には、必ず本部から店に社員がやってきて、改善点などについては命じられるという。

2、本部からの廃棄補填がなくなってしまう

販促費などの名目で、本部からは、廃棄に対する補填が出ている。特に売上の低迷している店舗に対してはそのような措置が取られる。その一方で、(バーターとして)「シールは貼らないで(見切りはしないで)」と言われる。補填がなくなると店の経営上困るので、シールは貼らない(見切りはしない)。

3、見切り目当ての客が来る

百貨店のデパ地下や、スーパーでは、閉店間際になると見切り販売される。ある意味、夜の閉店時間があることで、見切り販売の必然性が生まれる。逆に24時間営業のコンビニエンスストアは、営業時間の切れ目がない。納品のタイミングも、多いと一日に9回ある。休むひまがない。

コンビニでも、納品時間のおおよそを把握し、新しいのが来るのを待って買っていく客もいるそうだ。野菜などを置いているコンビニでは、年配客が、後ろの方から新しいのをほじくり出して買っていくこともあり、店員が注意すると、逆ギレされることもあるという。

Xさんは、前述の通り、見切り目当ての客に来させないよう、見切りをおこなう曜日や時間帯をランダムにしている。

4、経済的に切羽詰まっていない

Xさんは、競合店が近くに出てきて、売上が落ちて来て、このままでは経営が成り立たない・・という切羽詰まった理由があり、見切り販売を始めた。

Xさん以外にもオーナーさんには取材しているが、この他には、重い病気にかかってしまい、売上が落ちてしまった、雇用者への給与を捻出するため致し方なく;・・・などの理由を聞いている。そのような方から言わせれば「やらないのは余裕があるからでは」とのことだ。「余裕がある」というと語弊があるが、病気や入院、給与が捻出できないなどの切羽詰まった理由の有無が、見切り販売への踏み込みに、少なからず影響しているようだ。

5、本部(担当社員)のお気に入りになりたい

企業などの事業者にもいるが「ひらめ社員」。上ばかり見ていることを揶揄してこう呼ばれる。とにかく本部の言うことには100%従うオーナーもいるという。見切りを始めているオーナーの中にも、「最初は、本部の言うことを聞くしかなかった」「見切りができるなんて知らなかった」という人もいる。

食品業界では、概して販売者である小売が強い力を持ち(バイイングパワー)、作り手である製造者がそれに従うようなヒエラルキー(上下関係)がある。だからこそ、「欠品ペナルティ(欠品粗利補償金)」や「日付後退品(の納品拒否)」、「3分の1ルール」などの商慣習がある。

製造者と取引している原材料メーカーや包装材料メーカーは、製造者の言うことを聞く立場で、ここにも上下関係があると当事者から聞いている。さまざまなところに存在するこうした上下関係が、食品ロスをなおさら大きくしているように思える。日本人の多くは組織に属して働いているわけで、組織人としてふるまうのが先決。だって組織の看板を背負っているのだから。個人の感情(もったいない、など)は蓋をしてお金(給料)をもらい、生計を立てていかざるを得ないのだ。

もちろん、これら5つの理由は一例に過ぎず、他にも理由はあるだろう。

あるコンビニで見切り販売されていたパン(2017年8月撮影)
あるコンビニで見切り販売されていたパン(2017年8月撮影)

提言:環境配慮コンビニ店へのインセンティブを与える

見切り販売を始めているオーナーは、口々に「みな、やったほうがいい」と語る。オーナーの取り分が増え、精神的にもラクになる部分があるという。大手コンビニの中でも、わざわざシールを貼らずに、レジで見切り(値下げ)処理ができる店もあるという。

もちろん、必要なだけ製造して必要なだけ消費するのに越したことはない。ただ、現状、メーカーが欠品を起こすと小売店に罰金を払うという「欠品ペナルティ」という商慣習があるので、必要最低限ギリギリで製造するのは、メーカー側にとってリスクがある。だから、次善の策として「見切り販売を行い、無駄を減らす」。

Xさんは、提言として、全国展開で食品ロス(削減)認定制度を作ってはどうか、と語る。店頭で、奥に手をのばして取っていくお客さんがいても、その場では直接、声をかけづらい。そんなとき「この店は食品ロスを減らす努力をしているんですよ」というマークやロゴなどがあれば、(それを楯にして)言いやすい。

農林水産省をはじめとする6府省庁(消費者庁・環境省・内閣府・文部科学省・経済産業省)は、連携して、2013年下旬から食品ロス削減国民運動を始めている。農林水産省では、年間あたりの廃棄物発生抑制目標値として、コンビニの場合、売上百万円あたり年間44.1kgの廃棄物発生抑制を目標に掲げている。一応、罰則規定もある。このような目標値を達成した店舗にはインセンティブを与えるなど、環境配慮の努力をおこなっていることに対するメリットを与えてはどうか。

撮影:坂村祐介

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。Champions12.3メンバー。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てられる食べものたち』他。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/第一回食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。

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