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竹内結子が与えてくれた「あったかさ」 ドラマの竹内結子を振り返る

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:アフロ)

1990年代に若き竹内結子が出ていたドラマ

竹内結子は1999年のNHK朝ドラ『あすか』に主演して、いちやく、注目を浴びるようになった。

それ以前の連ドラにも出演している。

1996年10月の『木曜の怪談 サイボーグ』に女子高生役でデビュー、当時16歳、元気な高校生役だった。

1998年7月からのドラマ『凍りつく夏』では暗い女子高生役だった。

5話でビルから落下する。衝撃的なシーンだった。ビル屋上の端で藤原竜也とキスしたあと、彼の目の前でゆっくり後ろに倒れて、そのまま消えた。死にたかったから、と言っていたが、とりあえず一命は取り留める。かなり暗いドラマだった。

そのあと続けて1998年10月からの日曜劇場『なにさまっ!』に出演。

これはあまり何も考えずに見られる恋愛ドラマだった。男女が複数でてきて、ちょっと恋愛がクロスするやつ。メインは岸谷五朗と松雪泰子で、女性側はあと篠原涼子に竹内結子。二人はペットショップに勤めている。篠原は元気で明るい女子で、竹内はメガネかけて地味めな女子という役どころだった。

そのまえ、1998年1月公開の映画『リング』にも衝撃的な役で出演している。

竹内結子がもっていた双方向の魅力と“圧倒しない品のよさ”

デビューのときから竹内結子は変わらない。

軽やかで明るい。つねに爽やかである。

いつも何かをおもいついていそうな躍動感がある。

開放感がありながら、蠱惑的である。

最初からそうだった。

明暗双方向の魅力を持っていた。

基本トーンは明るく爽やかだ。でもそこにとどまらず、影のある役も、嫋やかな役も、怖い役も、若いときからさまざまに演じていた。

それでいて、竹内結子でしかない香りを残していく。

圧倒的存在感というのではない。まわりを圧する気配を出さない。

品があった。それなのに忘れ得ない存在感があった。

軽く爽やかに世界を切り開いていった。

若いころの作品を見返しただけで、得がたい女優だったということがひしひしとわかる。

1999年朝ドラ『あすか』に主演したころ

1999年秋からの朝ドラ『あすか』のヒロインに登用される。

当時の朝ドラはまだ視聴率は平均25%はあったが、「平均40%だった視聴率」がすごい勢いでどんどん降下していってる途中だった。

1986年までが40%時代、1993年までが30%時代だった。

NHKもなぜこんなに急激に視聴者が離れていくのかがまったくわからなかったのだろう、ただ茫然と手をこまねいているだけのように見えた。

視聴率はそのまま2009年の13%までずっと落ち続ける。

朝ドラのヒロインは、「無名の元気のいい女優」が登用されることが多かった。

『おはなはん』(1966年)以来、無名女優(ふつうの人があまり顔を知らない女優)が起用され、それが国民的に受けていた。慣例のようなものだった。

でもそれもどうやら1980年代の後半ころから、つまり昭和が終わるころから状況が変わり、前ほど受け入れられなくなっていったのだ。

古き良き世界ともいえる朝ドラの『あすか』

『あすか』はまだ、昭和の方式が継続されているころの朝ドラだ。

竹内結子はすでに映画で主演格で出演したので、無名の女優というわけではない。でもテレビドラマではあまり大きな役どころを演じていなかった。

朝ドラ視聴の中心的な層(ドラマを見るなかでもそこそこ年配なほう)にはそれほど知られてなかったとおもわれる。

『あすか』はいま見返すと、ゆっくりした展開の、古き良きドラマだという感じがする。

京都の老舗の和菓子屋を舞台にしたドラマで、その老舗の孫に産まれながら、ヒロインは女の菓子職人をめざす。

京都らしい「いけず(意地悪)」なところも描かれるが、それはさほど目立たず、わりと伸びやかなドラマになっていた。

京都だけではなく、奈良の明日香も舞台になっていたからだろう。

また関西のお笑い芸人が多数出ていて、ちょっと吉本新喜劇ぽい味わいがあって、軽やかだった。

そして、何といってもヒロインの竹内結子と、相手役の藤木直人がもつ清涼さがドラマ全体をすごく明るく爽やかにしていた。

朝ドラのヒロインは、まわりの反対にあって頑張ることが多く、だいたい途中で少し暑苦しくなってくる。

でも竹内結子はそういうのを感じさせないタイプのヒロインだった。

中心にいるけれど、強さばかりを前に出さず、かといって脆さも露わにはせず、自然と前に進む。十代のときから、そういう役者だったのだ。

こういうタイプの役者は、じつは朝ドラヒロインでもそんなには存在しない。

朝ドラ後、彼女はどんどん売れていった。

ブレイクしていく2000年代の竹内結子

『あすか』が終了したのが、2000年の4月1日。

三か月後7月からのドラマ『Friends』に出演し、そのまま続けざまに連続ドラマに出演する。

2000年10月から『スタイル!』、2001年1月『白い影』、4月『ムコ殿』、1クール空いて、10月から『ガッコの先生』と出演する。

最初の『Friends』をのぞき、すべてヒロイン(主演の相手役)である。

そして2クール空けて、2002年7月から月9ドラマ『ランチの女王』に主演する。

かつて「月9」枠は、ドラマ界の頂点として燦然と輝いていた時代があった。この竹内結子主演ドラマが、その最後だったと言えるかもしれない。

いまもありありと、そしてちょっとどきどきしながら『ランチの女王』のいろんなシーンをおもいだすことができる。可憐でかわいくて、でもただそれだけではない女性を演じていた。

竹内結子は、瞬く間に、ドラマ界の新たな女王に上りつめていった。

朝ドラヒロインから出た、久々の「ドラマに主役で出続ける女優」の誕生だった。

朝ドラのヒロインがその後あまりドラマ主役をやらなかったころ

無名の新人女優の登用が多かったこのころの朝ドラでは、その後、そのまま「連ドラの主演格」へ直結する女優は少なかった。

竹内結子の前の朝ドラヒロインは遠野凪子で、そのままさかのぼって並べると、小西美帆、須藤理彩、佐藤夕美子、田中美里、岩崎ひろみ&菊池麻衣子(W主演)、松嶋菜々子となる。

逆に竹内結子のあとを並べると、田畑智子、岡本綾、国仲涼子、池脇千鶴、高野志穂、宮地真緒、中越典子、石原さとみ、藤澤恵麻、原田夏希、本仮屋ユイカ、村川絵梨である。

(このあとオーディションなしで宮崎あおいが主役に指名され、流れが変わる)。

朝ドラ主演のあと、「連続ドラマで主演(主演の相手役)」を複数回演じたのは、この中でもごく少数である。視聴率下降期だったからでもあるのだろう。

この中でずっと主役格でありつづけたのは、松嶋菜々子と、竹内結子と、石原さとみだけだと言える。あと強いていえば田中美里ぐらいだろう。

朝ドラヒロインから連続ドラマの主演へとつながっていく女優は、かつてはかなり珍しかったのだ。

竹内結子は、そういう得がたい役者だった。

00年代ドラマ界を担っていた竹内結子

2002年の月9主演のあとも、竹内結子のドラマでの活躍はつづく。

(同時に映画にも出演しつづけるのだが、無料で見られるドラマと、有料の映画ではふつうの人への浸透度がちがうので、ドラマだけを紹介していく)

コメディ『笑顔の法則』(2003年)で主演、正統派ラブストーリー『プライド』(2004年)でキムタクの相手役、『不機嫌なジーン』(2005年)ではちょっと変わった生物学の研究者、『薔薇のない花屋』(2008年)は盲目と偽って登場した謎の女を演じた。

並べてみると、00年代ドラマは竹内結子の時代だったという気がする。

そして2010年には『ストロベリーナイト』で敏腕で荒っぽい刑事を演じた。彼女のひとつの代表作である。

2013年には『ダンダリン』で融通のきかない労働基準監督官、2016年大河『真田丸』では茶々(淀君)を演じた。じつに艶やかな茶々だった。

2017年『A LIFE〜愛しき人〜』では外科医、再びキムタクの相手役だった。

2019年に『スキャンダル弁護士QUEEN』では敏腕弁護士を演じた。去年のことである。

ずっと華やかで、艶やかだった。

竹内結子が与えてくれた“芯からのあったかさ”

タイトルを並べるだけで、彼女の姿が浮かんでくる。

竹内結子の姿をおもい浮かべると、じんわりあったかく感じる。ふしぎな感覚だ。

多くの人をあったかくする気配を芯のところに持っていたからだろう。どんな役をやっていても、そういうふうに感じられた。

『ストロベリーナイト』の姫川刑事など、あまりあったかさを持たないキャラだけど、あとからおもいだすと、なんか、ほわっとするのだ。

表に出てるもの以外にも、見てるものに届ける何かを持ち続けていたということだ。

それが得がたい力だということは、いまとなって、いまさらながら、強くわかる。

あらためて彼女のことをおもいだして、その芯のあったかさについて、見ているだけで安心する魅力、それでいてどんどん惹かれていく魅力について、妙にリアルにおもいだしてしまう。いままさに、そこにいるようにおもいだせる。

近さを感じさせる女優だった。

彼女にはあまり拒否される感じがない。そういう「きつさ」がおもいうかばない。

たぶん、ほんとうにそういう人だったのだろう。

華があって、芯は強いけど、柔らかい気配がした。

空気を動かすというよりも、自然と何かしらの気配を作りだす役者だったのだ。

あらためて、あらためて、稀有な役者だったとおもう。

いまも朝ドラヒロインは活躍している

朝ドラの主演女優のその後は、主役でなくても、長く役者を続けている人が多い。さまざまな味わいをもっていろんなドラマを彩っている。

100作記念作品の『なつぞら』には歴代のヒロインがさまざまな役で出演して、話題になっていた。

朝ドラはいまの『エール』で102作目。最初の5作は「家庭ドラマ」の要素が強く、いまの女の半生ものになったのは6作目の『おはなはん』からである。

『おはなはん』以降、いまの『エール』まで97作品あり、男性主演は7作、のこりは女性主演なので90作品ある。

W主演、主演の交代があるので、『おはなはん』以降の歴代ヒロイン女優は94人にのぼる。

余計なことながら、このうち亡くなっているのは(『おはなはん』以降では)、1970年『虹』主演の南田洋子と、1972年『藍より青く』主演の真木洋子の二人だけだった。

南田は2009年逝去、享年76。真木は2000年に病没。享年51。

(主演男性では1990年『凜々と』田中実が2011年に亡くなっている。享年44)

まだほとんどの朝ドラ主演ヒロインは存命なのだ。

その三人めが、なぜ、よりによって竹内結子なのか、とおもうと、ただただ、ただただ、胸ふたがれる。

なにかのふしぎな順なのだろう。残念で、哀しい。

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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