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朝ドラヒロインとなる清原果耶の魅力と、その先の朝ドラヒロイン候補たち

堀井憲一郎コラムニスト
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

オーディションなしで選ばれたヒロイン・清原果耶

NHK朝ドラの次々作のヒロインが、清原果耶に決まった。

2021年4月からの104作目の『おかえりモネ』の主演である。

オーディションはおこなわれていない。

製作側が清原果耶を指名して主演に決まった。

これで6作連続主演のオーディションなし、と言われている。

いまの『エール』の窪田正孝も、次作『おちょやん』の杉咲花も選考がおこなわれていない。

さかのぼって、『スカーレット』の戸田恵梨香、『なつぞら』の広瀬すず、『まんぷく』の安藤サクラと、ここまで製作側の指名で主演が決まっている。

その前の『半分、青い』の永野芽郁がオーディションで選ばれたもっとも最近のヒロインである。もうひとつ前の『わろてんか』葵わかなもオーディションだ。

それ以前をまとめてみる。

指名されたエリート主演組。

有村架純。玉山鉄二。吉高由里子。杏。堀北真希。井上真央。松下奈緒。三倉茉奈&佳奈。藤山直美。宮崎あおい。

オーディションを勝ち抜いて主演組。

芳根京子。高畑充希。波瑠。土屋太鳳。能年玲奈。夏菜。尾野真千子。瀧本美織。倉科カナ。多部未華子。榮倉奈々。貫地谷しほり。比嘉愛未。

これで2006年までのメンバーである。

2006年春の『純情きらり』の宮崎あおい以前は、だいたいオーディションが行われていた。このあたりからNHKは変わっていったのである。

視聴率30%取るのは当たり前だった昭和の朝ドラ

オーディションをしないことが話題になるのは、かつて「朝ドラの主演はオーディションを勝ち抜いたあまり知られていない女優さんが主演をやるもの」というイメージが強かったからだろう。

実際、むかしはそうだった。

あまり知られてない女優が主演を務めても、枠の力が強いから(固定客が多いから)視聴率が取れたのである。

昭和の時代は視聴率30%は当たり前、1990年代でも25%は当たり前、2000年代前半までは20%も当たり前だったのだ。

2004年ころから20%を割り出した(2003年秋から2004年春までの『てるてる家族』が初めて平均視聴率20%を割った)。

そのへんからNHKもいろいろと変わりだしたのだ。

「ハードな状況でも揺るがない少女」を演じる清原果耶の魅力

清原果耶は、2015年の朝ドラ『あさが来た』で初めて見かけた。

主人公(波瑠)の生家、京都の豪商今井家の女中役だった。

最初から、目に留まる女の子だった。

翌年のNHKのドラマ『精霊の守り人』で主人公バルサ(綾瀬はるか)の少女時代を演じている。目ばかりがぎらぎらして、ぱっと見、少年のようであった。『あさが来た』の女の子らしい姿とは印象が全然ちがっていた。初めて人を殺して叫ぶシーンが強く印象に残る。そういう少女の戦士だった。違う印象の役をNHKドラマで演じて、彼女の可能性は広がったとおもう。

2017年は『セトウツミ』という高校生ドラマに出ていた。高校生ドラマだけど溌剌としたところが描かれない。「川べりでだらだら喋るだけの男子高校生2人」のドラマで、高杉真宙、葉山奨之、片山友希らと独特の世界を作り出していた。引き込まれるドラマだった。おもいだすと、くすっと笑ってしまう、そういうドラマだ。得がたいドラマである。

2019年の『俺の話は長い』でも美少女だけどあまり愛想のよくない役どころをやっていた。

そういう役どころが清原果耶に合う。2019年の朝ドラ『なつぞら』でも、なかなか馴染んでくれない妹役だった。

NHKでは2018年に『透明なゆりかご』、2019年に『蛍草 菜々の剣』(地上波では2020年放送)に出演した。どちらも主役である。十代で続けて主演するというのが、いかにもNHKが育てている女優さんという感じがする。

どちらのドラマもハードな設定で、大変な状況であっても自分を強く持っている役を清原果耶は演じた。

彼女にはそれが似合う。

楽しげな状況ではとっつきにくいというタイプと、ハードな状況で自分を強く持っているというタイプは根が同じである。芯が強い少女だ。

「静かだけれど強さをもつ少女」という役を一貫して引き受けている。

そこにいるだけで、何だか励まされる気がする。

朝ドラの主演がとても楽しみである。

ただ、『おかえりモネ』は現代劇になるらしく、現代を舞台にした朝ドラは、まず人気が出ない。そこが少し心配なのだが、いや、大丈夫でしょう。がんばってください。

『あさが来た』から印象的だったもうひとりの女優・小芝風花

同じく『あさが来た』にも出演していたのが小芝風花である。

ヒロインの娘役だった。

その後、NHKでは2018年に『女子的生活』に出演し、翌2019年『トクサツガガガ』では主演となった。また同年12月のNHKの特番「体感首都直下地震ウイーク」の特別ドラマ「パラレル東京」で主演した。

朝ドラ主演候補のひとりではないだろうか、とおもっている。

清原果耶よりあとの朝ドラ主演女優は誰だろうか。

それは予想はつかない。

たとえば『スカーレット』戸田恵梨香の次に、まさか『エール』窪田正孝になるとはまったく予想できなかった。

2013年のドラマ『SUMMER NUDE』で恋人どうしだった二人が(ドラマ内での結婚式シーンもあった)NHK朝ドラ主役引き継ぎで並ぶとは、とても想像できなかった。

ただまあ、このあたりが候補ではないか、というのは考えることはできる。

男性の主演候補はまったく想像つかないけど。朝ドラの主演を男性にするのか、まったくランダムだからだ。次の男性主演がいつか、まったく想像できない。4年後かもしれないし19年後かもしれない。

100作になる少し前、そのころに予想していた「このあとの朝ドラ主演メンバー」は『杉咲花、小芝風花、清原果耶』だった。そのうち2人が主演になった。

のこり「小芝風花」はもちろん大きな候補のひとりだとおもう。

やはり最近のNHKのドラマに出演していた人から選ばれることが多いから、そっちのほうから予想してみる。

『スカーレット』から黒島結花、『いだてん』から上白石萌歌

まず、『スカーレット』で陶芸家を目指す若い女性役をやっていた黒島結花。

2017年にはNHKドラマ『アシガール』で主演をやっていたし、2019年大河『いだてん』では活発な女学生役でも登場していた。彼女も小芝風花と同じ1997年生まれ。

彼女が朝ドラ主演になってもいいとおもう。

大河ドラマ『いだてん』からだと、日本初のオリンピック女性金メダリスト・前畑秀子役を溌剌と演じていた上白石萌歌。2000年生まれ。彼女もその佇まいがとても魅力的である。

NHKドラマの出演がさほど多くなかったが、2020年の土曜ドラマ『天使にリクエストを』に出演予定(もともと6月から放送予定が延期中)。

彼女が主演の朝ドラはとても見てみたい。

姉の上白石萌音も大河ドラマ『西郷どん』や『怪談牡丹灯籠』に出演していたので、可能性がある。ただ、妹の丸っこい感じのほうが朝ドラ向きな気はする。

いまの時点で今後の朝ドラ候補として三人上げるなら、あくまで個人的な予想でしかないのだが、この「小芝風花、黒島結花、上白石萌歌」をあげたい。

そのほかの朝ドラと大河ドラマで見かけた若手女優から

あとすこし、NHKで見て印象的だった女優さんをあげてみる。

いま『エール』でヒロインの姉役である松井玲奈は、『まんぷく』でもヒロインの友だち役をやっていた。朝ドラの主演になってもおかしくはないのだが、ただ1991年生まれなので、まもなく30歳を越えてしまう。最近は30歳を越えた主演も珍しくないのだが(安藤サクラ、戸田恵梨香)ドラマの題材次第というところだろう。

『ひよっこ』で主人公の年下の同僚役を演じて、ほわっとした役の似合った松本穂香。1997年生まれ。彼女はTBSドラマ『この世界の片隅に』主演を果たすなど、ほわっとした役どころを演じさせるとすごくマッチする。『ひよっこ』以降、あまりNHKドラマ出演がないのだが、彼女主演の朝ドラはとても癒されそうなので、とても見たみたい。

同じく『ひよっこ』で松本穂香とコンビのような役どころだった藤野涼子(2000年生まれ)。彼女はのちNHKよるドラ『腐女子、うっかりゲイに告る。』でヒロイン腐女子役を演じ(ちょうどいま再放送されている)、とても芸の達者なところを見せる若手の俳優である。職人的な役者なので、あまりヒロインタイプではないが、でも何だか古風な雰囲気もあるので、彼女が主演を演じてもおかしくはない。

『あまちゃん』で印象的だった橋本愛は、大河ドラマ『西郷どん』と『いだてん』に連続して出演している。1996年生まれ。濃い顔のヒロインが欲しいと判断されたら、彼女の朝ドラがあっても不思議ではないとおもう。

そんなところである。

あくまで、いまの時点での「朝ドラにヒロインに選ばれる何となくの可能性のある人」でしかない。予想というより、NHK出演実績から見ている考察でしかない。試論でもある。そういう意味では申し訳ないが「考えてみる遊び」でしかない。みなさんが予想される「よすが」となればいいなとおもって書いた次第である。

コラムニスト

1958年生まれ。京都市出身。1984年早稲田大学卒業後より文筆業に入る。落語、ディズニーランド、テレビ番組などのポップカルチャーから社会現象の分析を行う。著書に、1970年代の世相と現代のつながりを解く『1971年の悪霊』(2019年)、日本のクリスマスの詳細な歴史『愛と狂瀾のメリークリスマス』(2017年)、落語や江戸風俗について『落語の国からのぞいてみれば』(2009年)、『落語論』(2009年)、いろんな疑問を徹底的に調べた『ホリイのずんずん調査 誰も調べなかった100の謎』(2013年)、ディズニーランドカルチャーに関して『恋するディズニー、別れるディズニー』(2017年)など。

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