身近な「水トラブル」多発地帯 給水管という闇

配水管と給水管(総務省資料より)

水を使っていないのに水道メーターが動く謎

 5月25日の毎日新聞で報じられているとおり、兵庫県西宮市の男性が、不当に高額な水道料金を支払わされた可能性があるとして、上下水道を管理する同市に約240万円の損害賠償を求めて裁判を起こした。男性は中古の戸建て住宅に暮らしているが、2017年6月頃、水道を使っていないときにも、水道メーターが動いたり、止まったりしていることに気づいた。

「『不明管』で高額の水道料金、兵庫の男性が提訴 各地に存在か」(「毎日新聞」5月25日)

 このような場合、一般的には漏水が疑われる。しかし、西宮市の調査では、漏水は確認されなかった。

 では、水はどこへ流れていったのか。

 男性は17年11月に水道管を自費で交換すると、これまで約1万円(2カ月分)だった水道料金が、4000円に下がった。

 さらに昨年8月、民間業者に自宅付近の道路の地中調査を依頼した。

 レーダーで探査すると所有者不明の配管が10本程度確認され、うち数本は近隣住宅から道路の下を通って男性宅の敷地内につながっていた可能性があるとわかった。

 所有者不明の配管とは、いったい誰が、何の目的で埋めたものなのだろうかと話題になっている。

 しかし、こうしたトラブルは決して珍しいことではない。

配水管と給水管の違いとは?

 まずは、浄水場を出発した水道水が、蛇口から出るまでのプロセスを考えてみよう。

 この記事冒頭の図を見てほしい。浄水場を出発した水道水は「配水管」(図中グレーで表示)を通って、あなたの住宅やマンション近くまでやってくる。この配水管は水道事業者が管理している。

 私たちは配水管から直接水道水を使っているわけではない。

 配水管に給水管(図中ブルーで表示)を接続し、蛇口やトイレなどの給水用具から水を使う。給水管や給水用具は設備所有者の財産(ただし水道メーターは水道局の財産)であり、基本的に管理責任は所有者にある。新設や修繕費用は所有者自身が支払うものとされている。

不明な配水管ができる理由

 最近、水道管の老朽化が進んでいるという報道を耳にするが、これは多くの場合、配水管のことを指している。

 高度経済成長期を中心に敷設された配水管は更新の時期を迎えているが、財政難から遅れている。

 さらに、どこに、どのような管が埋まっているか、すべて把握されているわけではない。

 厚生労働省水道課によると、水道施設のデータを整理(台帳を整備)している水道事業者は全体の61%(2016年12月)である。

 残りの約4割が台帳整備できない理由は様々だ。職人の人数が少なく、日々の業務に追われ、台帳作成に手がまわらない。過去の工事データを行政の文書管理期限終了とともに廃棄してしまった。「管路図はベテラン職員の頭の中」というケースも少なくない。

 したがって、配水管の中にも不明管は存在する。このため漏水の復旧工事の際に時間がかかってしまうこともある。

給水管は水トラブル多発地帯

 しかし、配水管以上にトラブルが多いのが給水管である。配水管が古くなっていると前述したが、給水管も同様だ。

 住宅やマンションに給水管を引く場合、水道事業者の所有する配水管と接続する工事が必要になる。

 通常であれば水道事業者から指定を受け、給水装置工事を施工する「指定工事事業者」が行い、工事終了後には「給排水経路図」を水道事業者に提出する。このとおりに実施されれば問題は起きないはずだが、現実的にはトラブルが多い。

 まず、「給排水経路図」は2次元の図面である場合がほとんど。おおまかな管路の位置は示されていても、深さは示されていない。それが不明管の原因になる。

 そもそも、水道事業者のリストに掲載されていても、連絡がとれなくなった指定工事事業者がいる。そのような工事事業者は、水道事業者から指導監督や情報提供が行えないため、仕事の質の低下が懸念されている。

 違反行為も後を絶たない。厚生労働省が行ったアンケート調査によると、無届工事、構造材質基準不適合などの違反行為は、水道事業者が把握していだけでも1774件発生している。このような場合は、「給排水経路図」がつくられることもなく、不明管が量産されていく。

 給水装置と給水装置以外の管を誤接合するクロスコネクションも多発している。2017年12月には、奈良県生駒市の賃貸ワンルームマンションで水道管誤接続が明らかになった。このときは給水管が、井戸水を浄水場に送る導水管に接続されていたため、浄水前の水が蛇口から出ており、国の基準値を上回る一般細菌などが検出された。

 土地利用の移り変わりと給水管の工事の変遷が、記録にあっていない場合もある。

 かつて小規模住宅が密集していた地域に個別に給水管が敷設されていたとしよう。それが区画整理などでマンションに建て替わったが、一部の給水管が残っており、それが不明の給水管になる場合もある。

 現在、日本には846万個の空き家がある。その下にも給水管は引かれている。目に見える家屋が朽ちていくのと同様に、給水管も少しずつ朽ちてゆく。これらがやがて不明管になっていく可能性も高い。

 さらに、意図的に他人の給水管に不法に新たな給水管を接続し水を利用するという可能性もある。

 厚生労働省はこうした給水管のトラブルをなくすために、最新の工事完了図を整備する、地下埋設物が錯綜している地区では他の地下埋設物の状況が把握できるよう配慮する、水道管以外の管が敷設されている地域では埋設管の誤認の有無に注意を払うことなどを指導しているが、現実的にはなかなか難しい。

鉛管という問題

 給水管が鉛製のこともある。いわゆる鉛管は、近代水道の開始と同時に給水管として採用された。その後、塩ビ管やステンレス鋼管の普及・採用により、全面使用禁止となっているが、まだ、5270キロ程度残っているとされる。(2015年度)。

 鉛製の給水管を使用していると、長時間水道水を滞留させた場合、水質基準を超える鉛が溶け出すことがある。自治体によっては鉛管の交換に補助金を出しているところもある。

給水管の漏れと水質を確認する

 給水管まわりの水トラブルは非常にわかりにくいが、水質、水量の点からチェックすることができる。

 蛇口から出る水に異変を感じたら、水道局に頼んで水質や塩素濃度を確認してもらう。

 また、今回の不明管問題がわかったのは水道メーターだった。給水管に入ってきた水が自宅ではなく、別の管に流れていることを水道メーターによって発見した。

漏水のチェック方法(「おいしい水きれいな水」(橋本淳司/日本実業出版社))
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 給水管の漏水サインはいくつかある。「いつも地面が濡れている」「壁が濡れている」などもそうだが、水道メーターで給水管の漏水を確認できる。家中の蛇口を締め、水道水を使っていない状態でパイロットが回っていたら、どこかで漏水していることになる。そのような場合、水道局に連絡するとよいだろう。

 いずれにしても身近に水トラブルの原因があることを知ってほしい。