各地の湖の水位が下がっていく。小雨だけでない深刻な理由
今年になって各地の湖の水位が低下している。琵琶湖(滋賀県)、豊田湖(山口県)、中禅寺湖(栃木県)、河口湖(山梨県)など。水位の低下によって水道、漁業、観光業などに影響が出ている。
琵琶湖は昨年9月以降、水位が低下し、今年1月4日には基準点(大津市の瀬田の唐橋近くの鳥居川水位観測所の量水標にある0を水位0メートルとしている)からマイナス78センチとなり、滋賀県は渇水対策本部を設置した(1月下旬からは平年並みに雨が降り、3月26日に水位0メートルに回復した)。
水位低下の理由は小雨とされている。昨年日本に上陸した台風は、近畿地方を縦断した台風7号の1つだけ。気象庁によると、とくに秋以降は降水量が少なく、日照時間は長かった。
現在は奥日光の中禅寺湖が水位低下しているが、その原因も小雨とされている。気象庁のデータ(奥日光)によると、9月、10月の合計降水量は平年の650ミリに対し350ミリ(54%)。
ただし、11月から3月までの直近5か月の降水量の合計は、平年の370ミリに対し465ミリ。降水量だけが理由ではないように思える。そこで気温を見ると、11月から3月の平均気温は平年のマイナス0.86度に対し0.64度と1.5度も高かった。そのため蒸発量が多かったと推察できる。
河口湖はどうか。気象庁のデータ(河口湖)によると、9月、10月の合計降水量は平年の495ミリに対し219ミリ(44%)。
11月から3月までの直近5か月の降水量は、平年の350ミリに対し380ミリとやや多かった。だが、気温を見ると、11月から3月は平年2.8度に対し4.2度とプラス1.4度。こちらも蒸発量が多かったと推察される。
湖の水位は降水量と蒸発量で決まり、蒸発量は気温、湿度、風、湖の地理的な環境などで決まる。気温だけが要因ではないが、気温が高ければ、雪の降っていた時期に雨が降り、その水は流れていってしまうし、蒸発量も多くなる。
世界気象機関(WMO)は、2024年1月に、2023年の世界の平均気温が観測史上最も高かったと発表した。気候変動にエルニーニョ現象(太平洋の東側の海面水温が平年よりも高くなる現象)が加わり、1850~1900年の平均気温に比べ、1.45度前後上昇したと見られている。
「パリ協定」では、温暖化によるリスクを減らすため、今世紀末時点での気温上昇を産業革命前と比べて「2度よりかなり低く、できれば1.5度に抑える」という目標を掲げているが、すでに危険な水域に突入している。地球温暖化と聞いても「ピンとこない」という人もいるが、身近な湖の水位低下は、温暖化の現実を突きつけている。
気温の上昇は、身近な水の変化として私たちの暮らしに影響を与えるということを知っておきたい。