■ハーラートップは後藤茂基投手(福井ネクサスエレファンツ)

 チェンジアップが冴えていた。取りたいところで三振が取れたし、最遅98キロのカーブが緩急を演出してくれた。

 福井ネクサスエレファンツ後藤茂基投手は、5月7日の石川ミリオンスターズ戦で6回91球を投げて被安打6、与四球1、奪三振7、失点1で自身3連勝を収め、ハーラー単独トップとなった。

 「いつもは初回がダメで尻上がりに…って感じだけど、今日は先頭から思いきって投げられた感覚があったし、低めにもいってたんで、よかったかなと思う」。

 風が強く、いきなり先頭の藤村捷人選手に三塁打を許すことになったが、「そんなに気にせず投げられた」と、落ち着いていた。

(写真提供:日本海オセアンリーグ)
(写真提供:日本海オセアンリーグ)

 前回(4月30日、滋賀GOブラックス戦)の登板後から、フォームをマイナーチェンジしたと明かす。

 「体重移動するとき、股関節のパワーポジションに乗れてなかったんで、そこにしっかり乗れるように変えている」。

 ただ、それは本人の意識の中の話で、「見た目にはわからないと思う」という。加えて瞬発系のトレーニングにも力を入れてきた。それらがうまくハマッたのかと思いきや、「いやぁ、まだ全然。まだ過程の段階です」と、どうやら途上のようだ。

 それでも結果として出ているということもあり、「進んでいる方向としては間違ってないのかなと思う」と少なからず手応えはあるようで、頬が緩む。

(写真提供:福井ネクサスエレファンツボランティアスタッフ)
(写真提供:福井ネクサスエレファンツボランティアスタッフ)

■秋吉亮投手からのアドバイス

 また、変化球についての意識が変わったことも、好投の大きな要因だ。

 「自分は変化球でも全部ストライクを取ろうと思っていた。けど、秋吉)さんから『変化球はボールでいいよ』って言われてから、すごく楽にピッチングできるようになった」。

 ストライクゾーンに投げることだけがストライクを取る方法ではないということだ。

 “師匠”・秋吉投手はこう解説する。

 「ストライクを取りにいこうとするから球が高めに抜けたりする。変化球が上に抜けるんだったら、低めにボールになったほうが絶対に効果があるし、そのあとの球が効いてくる」。

 東京ヤクルトスワローズ北海道日本ハムファイターズ、また日本代表としても数々積んできた経験を、若手選手の成長のために役立たせている。

試合中も師匠からのアドバイスを授かる(写真提供:福井ネクサスエレファンツボランティアスタッフ)
試合中も師匠からのアドバイスを授かる(写真提供:福井ネクサスエレファンツボランティアスタッフ)

 後藤投手自身にも、貪欲に吸収しようとする姿勢が見られる。初めての先発登板(4月6日、滋賀GOブラックス戦)のとき、初回を見た秋吉投手が試合途中にアドバイスすると、すぐに「めちゃめちゃいいところから落ちるようになった」という。

 「変化球は低めのボールでいいよ」という言葉が、魔法のように効力を発揮したのだ。

 「次の試合からは、言わなくてもできるようになってくれた。アイツの場合はまっすぐとチェンジアップ。低めのまっすぐでストライクを取って、そこからチェンジアップを振らせるっていうのがスタイル。もうちょっと低く投げられれば、もっといいんじゃないかな」。

 ただ、秋吉投手が心配しているのは「疲れてくるとチェンジアップが高めに抜ける」というところだ。

 そこは後藤投手も「それは乗り越えないといけない課題。やっぱり先発をやりたいし、9回完投したい。もっとストライク先行で、しっかりバッターに振らせる球を投げて、ピッチャー有利のカウントで抑えられるようにしたい」と、これまでの最長イニングである7回と最多投球数108球の“壁”を打破したいと意気込んでいる。

(写真提供:福井ネクサスエレファンツボランティアスタッフ)
(写真提供:福井ネクサスエレファンツボランティアスタッフ)

■ケガから復帰し、日本海オセアンリーグでリスタート

 そしてなにより重要なのが、変化球を活かすためのストレートだ。中央大学2年秋には、最速が146キロまで上がってきた。当時、明治神宮野球大会に出場し、ベスト8まで進んだ。

 個人でも東都大学野球秋季リーグ最優秀投手最優秀防御率ベストナインに輝くなど、華々しい活躍でスカウトの注目を集めていた。

 しかし現在は、そこから球速が10キロほど落ちている。実は故障していたのだ。

 「3年になる前の春休みのキャンプのときに肩を痛めて、そこから4年まで投げていなかった」。

 肩甲下筋の炎症だった。その後は投げることができないまま、治療とリハビリに2年間を費やした。

 「もともと小っちゃい筋肉が弱かったんで、まずその基礎トレーニングとかをやっていった。これからっていうときにケガしちゃったんで、もっと野球をやりたいと思って…」。

 このままでは終われない。まだまだ野球を続けたい。いずれはNPB日本野球機構)に入って活躍したい―。

 そんな思いを抱えて進路を模索しているとき、知人の紹介でネクサスエレファンツの杉山慎オーナーと知り合い、熱心に誘われた。

 独立リーグなら1年でNPBに行ける可能性もある。しかも新リーグはスカウトに見てもらえる機会も多いと聞く。そこで日本海オセアンリーグでしっかり結果を残してNPBを目指そうと、入団を決意した。

 故障については「回復具合はいいけど、筋肉がまだ弱いんで、もっと強くしていかないといけない」と、現在も継続して強化に努めている。

 「あとはフォームもちょっと工夫しないといけないのかなと思う」。

 さらなる進化に向けて奮闘しているところだが、現在の取り組みがうまくいけば、球速も戻ってくる手応えはあると明るい表情を見せる。

(写真提供:日本海オセアンリーグ)
(写真提供:日本海オセアンリーグ)

■スカウトの見立て

 この日は複数のNPB球団から、スカウトが視察に訪れていた。彼らの話を総合すると、やはり後藤投手のチェンジアップには光るものを感じたという。

 「あのチェンジアップはいい抜けで、いい具合にブレーキがかかる。あと、カーブもあって、ピッチャーらしいピッチャー。大学のときによかったっていうのは、うなずける」。

 ただ、やはり気がかりなのはケガからの回復具合だ。

 「どこまで回復しているのか。まだ戻ってきていない部分もあるのかなという感じで、今、ようやく投げ始めたところだと思う。でも今後、見ていきたいと思うものはある」。

 期待感を抱かせることはできている。あとは本人の努力でどこまで上げていけるかだ。

(写真提供:福井ネクサスエレファンツボランティアスタッフ)
(写真提供:福井ネクサスエレファンツボランティアスタッフ)

■福井からNPBへ

 さらに成長するために、やはり秋吉投手の存在が心強い。

 「NPBの選手って我が強いイメージがあったけど、秋吉さんはそんなんじゃなくてフレンドリーで話しやすい。秋吉さんがチームにいてくれることは、すっごく大きい。選手にとって大きな影響がある」。

 今後もどんどん教えを乞うつもりだ。

 そんなふうに慕われている秋吉投手も「もう少し低めのコントロールをつけたら、おもしろい。まだまだこれからだと思うけど、今までやってきたこととまた違うことを教えてあげれば、もっとよくなる。伸びしろはまだあると思う」と、自身の引き出しをオープンにしていく。

 福井の地で、人生初の一人暮らしをしている。最初は「正直、やっていけるのかな」と不安があった。しかし「ピッチャー陣がすごく仲がいい」と、よき先輩やチームメイトに恵まれ、今ではすっかり解消した。

 今後も仲間と切磋琢磨しながら、後藤茂基は必ず夢をかなえてみせる。

(写真提供:日本海オセアンリーグ)
(写真提供:日本海オセアンリーグ)

【後藤茂基(ごとうしげき)】

1999年6月9日生(22歳)

183cm・83kg/右・右

城西大城西高―中央大

埼玉県富士見市/AB型

ストレート、カーブ、カット、縦スラ、ツーシーム、チェンジアップ

*2019年、明治神宮野球大会に出場してベスト8。東都大学野球秋季リーグで最優秀投手、最優秀防御率、ベストナインを獲得。

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