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日本より恋愛力が高いと思われている欧州の人たちが「恋をしなくなっている」事実

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:アフロ)

何をしても世界の出生率は下がる

日本に限らず、少子化は不可避な現実で、フランスや北欧の政策をどれほど見習ったところで、多少の時間差こそあれ、それらの国の出生率もやがて日本並みに落ちていくことは間違いない。

各国の長期の出生率推移を見ればわかるが、フランスやスウェーデンでさえ、2010年ごろをピークに10年以上も減少基調にある。

フランスでも北欧でも減り続ける出生の要因「少母化」現象が世界を席巻する

例えば、2010年と2020年の10年間の合計特殊出生率の差分で見ても、日本は▲0.05にとどまっているのに対し、フランスは▲0.20スウェーデンに至っては▲0.32と大幅に減少している。まるで、かつて日本より出生率の高かった韓国があっという間に出生率1.0を切ったように、または、中国がいつの間にか日本より出生率が下がり、1.0を切る勢いに急降下していた事実を後追いするかのようである。

それでも、東アジア諸国と欧州とでは恋愛に対する能動性が違うので、そこまで落ちることはないだろうなどという人もいる。果たして、欧州の人たちは日本人よりも恋愛しているのだろうか?

フランス・スウェーデンとの恋愛力比較

内閣府が継続的に実施している「少子化社会に関する国際意識調査」がある。対象は20-40代の男女で、調査年によって対象国が変わるのだが、フランスとスウェーデンは常に対象国となっているので、日本を含めたこの3か国で「恋人がいる率」の推移を比較してみよう。

結果は以下の通りである。

そもそも、2005年のフランスが恋人いる率2割もなかったことに驚くのだが、それでもなぜか2010-2015年にフランスは突如恋愛が流行したのか、数値が増えた。しかし、2020年にはまた下がっている。

スウェーデンも、2010-2015年の間は日本より高いのだが、2020年は日本を下回った。

日本も安定的に下がってはいるものの、フランスやスウェーデンのような乱高下はない。

これを見る限り、決して日本がフランスやスウェーデンと比較して恋愛力が弱いということにはならない。むしろ、どの国も「恋愛強者3割の法則」が適用されるという話である。

出生率との相関は?

欧州では婚外子率が高く、すなわち婚姻=出産ではないということになるのだが、少なくとも結婚していようがいまいが、出生に関しては男女のパートナーが成立しているわけで、この恋人の割合変化は出生にも影響するだろう。

この3国の「恋人いる率」と合計特殊出生率の推移で相関をみてみる。ただし、「恋人がいる」人達が即出産するとは限らない、日本の出生動向基本調査に基づけば、恋愛交際期間が約4年で1年以内に第一子出産割合が高いことから、「恋人いる率」を5年ずらしでグラフを作成した。

結論から言えば、恋愛と出生には3カ国とも明確な相関は見られない。

日本は、「恋人いる率」が下がっているにもかかわらず、出生率は落ちていないどころかむしろ少し増加している。つまり、独身男女の恋愛関係値が上昇したところで、それは婚姻と出生には結びつかないということである。

それもそうだろう。こちらの記事(年収100万未満でも恋愛はできるが、結婚となると必要な年収はいくら?)で紹介した通り、未婚同士の恋愛関係においては、男性の年収はほぼ関係ない。それどころか低年収でのカップルが多い。しかし、一転同年齢層でも既婚者となると、男性は年収が高くないと結婚できていない。まさに「恋愛と結婚は別物」なのである。

そもそも、「恋愛力が高い=出生率が高い」というなら、イタリアや情熱の国スペインの出生率が日本以下である理由が見当たらない(残念ながらイタリアやスペインは調査対象外で、かの国の恋愛率のデータはない)。

写真:アフロ

フランスも日本同様相関はないのだが、スウェーデンだけはやや弱い正の相関があり、2020年の極端な「恋人いる率」の急減は、2025年の出生率低下で表面化するかもしれない。

恋愛率が高くても婚姻率が低くなることはあり得るが、恋愛率が低くなればなるほど婚姻率があがるという因果は存在しないだろう。欧州の恋愛率の低下は将来の出生減となる可能性がある。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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