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都道府県別「この年収以上稼げば結婚している割合が半分になる」既婚男性の年収中央値は?

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

平均値ではなく中央値

各都道府県の年収を比較する時に、平均年収を使う場合があるが、あまり平均値には意味がない。歪な格差があればなおさらである。

よく、国民の貯金額平均値というものがあるが、平均いくらといわれても、「そんなに貯金なんてない」と思ったりするだろう。あれは、ごく一部でも高額貯金者がいれば平均が全体的にあがってしまうからだ。本来は、中央値で比較した方がわかりやすい、中央値は、全体のちょうど50%の値を示すものだからだ。

たとえば、100人集団がいて、99人が貯金ゼロだとしても、たった一人10億円の貯金がある人がいれば平均値は1000万円になる。99%が貯金ゼロなのに、あの集団はみんな1000万円の貯金があるといわれても困るだろう。中央値でみればこの場合0円となる。

しかし、中央値の計算はいちいち面倒なのであまり公開されない。

都道府県別に大きく違う中央値

未婚者と既婚者の年収を比べる場合も、平均値と中央値ではイメージが変わる。

いつも全国平均で話をしているが、東京と沖縄とでは全然違う。

全国レベルでは「年収500万円の男」は高望みになる。これは事実である。

なぜなら、2017年就業構造基本調査に基づけば、25-34歳、いわゆるアラサーの既婚男性の所得中央値は420万円だからである。同じくアラサーの未婚男性の所得中央値は313万円となる。既婚と未婚との格差は、およそ1.3倍、金額にして約106万円(万円以下四捨五入)の差となる。

言い換えれば、未婚男性もあと106万円あれば、結婚できる可能性があるということだ。

「高望みはしません。年収500万円くらいの普通の男でいいです」という考えが、もう「普通じゃない」件

しかし、これは全国の話。

こと東京に限れば、アラサー既婚男性の所得中央値は525万円となる。全国値よりちょうど100万円くらい上回る。東京のアラサー未婚男性の所得中央値は370万円。その格差は155万円となり、全国値よりも高い、つまり、東京では、それだけ未既婚の所得格差が大きいという話となる。

写真:イメージマート

都道府県別の未既婚所得中央値

この既婚者と未婚者の所得中央値の差が大きければ大きいほど、結婚できる/できないの年収格差が大きいことになるのだが、都道府県ごとにみるとどうだろうか。予想では、東京がもっとも格差が大きいかと思っていたのだが、意外な県がトップであった。

各都道府県別に、25-34歳の既婚男性と未婚男性の所得中央値を計算し、横軸に既婚者の中央値、縦軸は既婚者と未婚者の所得中央値比をおいてマッピングしたのが以下の図表である。

全体的に、既婚者の所得が高いほど格差も大きい(相関係数=0.3786)という、やや弱い正の相関がみられる。

既婚者の所得がもっとも高いのは東京だが、未既婚の格差がもっとも大きいのは山口県だった。東京の1.4倍を超える1.5倍の開きがある。

なぜ山口の格差が大きいのかの理由はよくわからないが、山口県在住の方でご存じの方がいれば教えていただきたい。

既婚者の所得中央値の既婚率を別途計算すると、ほぼ50%を超える。この散布図は、横軸が既婚男性の所得中央値となっているので、この年収を稼いでいるアラサー男性はその半分が結婚しているということになると見ていい。ご自分のエリアで結婚するにはどれくらいの年収なのかの目安としていただければと思う。

未既婚格差の少ないエリアは?

「年収300万円の壁」といわれるが、日本で唯一の例外は沖縄で、285万円でも半分の男性が結婚していることになる。未既婚格差も低い。言い忘れたが、ここでいう所得とは額面年収のことである。

写真:イメージマート

たとえば、年収300万円台でみると、高知は格差が大きいが、鳥取は未婚も既婚もたいして差がないということになる。

全体的に、首都圏や大都市はそもそもの所得が大きいため、未既婚格差も大きくなる傾向があるのだが、愛知大阪福岡はそれほどでもない。格差が小さければ結婚しやすいかというと、茨城栃木などはそもそも未婚男性の絶対人口が多いという「男余り」現象があり、なかなか婚活は苦労する。

魅力度ランキングで常に最下位争いをする茨城・栃木は「男余り現象」も激しい

そもそも、エリアごとに事情が違い、金を稼げば結婚できるというものでもないのだが、参考にしていただければと思う。

とはいえ、東京以外の地区では、「年収500万円」は決して普通ではないということだけは確かなようである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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