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若者の「恋愛離れ」というが、子を望む夫婦の50%以上が「セックス離れ」の現実

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

新たに追加された夫婦のセックスレス調査

つい先日、コロナ禍で1年延期となった出生動向基本調査2021年の概況が発表された。

その中に、今回から新たに調査項目として追加された「夫婦のセックス頻度」に関する調査がある。出生は、当然ながら、コウノトリが運んでくるわけでなく、夫婦の営みによって生じるものであるから、この調査は重要だろう。

調査は、妻の年齢別に、今後出産の予定の有無別にも調査している。つまり、今後産むつもりのある夫婦とない夫婦とでセックス頻度が変わるのかがわかる。

セックスレスの割合だけ抽出した結果は以下の通りである。

ちなみに、セックスレスとは「特殊な事情が認められないにも拘わらずカップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上ない場合」と定義されているので、1か月以上セックスのなかった夫婦の割合で示してある。

子を望む夫婦の方がセックスレス

興味深いのは、「子どもを産む予定のない」25歳未満の夫婦の場合、25-29歳の夫婦よりセックスレス率が高いということだ。

これは、ひとつには、「まだ子どもを育てるだけの経済的余裕がない」ことで制限しているとも解釈できるが、避妊さえすれば何もレスにしなくてもいいのではないかとも思う。

それを除けば、年齢があがるとともに順調にセックスレス率はあがっていく。

反対に、「子どもを産む予定のある」夫婦を見ても、25歳未満と40歳以上で大きな違いがある以外、実はセックスレス率は変わらないのだ。

子がほしいと思っていようがいまいが、夫婦のセックスレスは一緒、というより、むしろ、「子がほしい」と思っている夫婦の方がややセックスレス率は高いことになっている。「子がほしい」と思いつつ、1か月以上もセックスをしないというのはどういう様子見なのだろうか。

写真:イメージマート

たまたま、調査をした時の1か月がレスだっただけかもしれない。そもそも、セックスよりも食の快楽が勝る日本人だから致し方ないのかもしれない。

日本人がセックスより気持ちいいと感じる「美味しいものを食べる」ことへの欲望

40歳以上の「子どもを産む予定のある」夫婦の場合は、セックスレス率が37%と20代後半並みに減る。ここは第三子以降の希望などがある場合なのだろうか。

しかし、だからといって、40歳以上の妻が出産力が高いということにはならない。

折れ線グラフは、子を産む予定の有無の比率である。25-29歳の夫婦がもっとも出生意欲が高く、ほぼ8割近い。25歳未満も同様に高く7割である。しかし、30-34歳で半々の51%となり、35歳以上では18%、40歳以上ではわずか2%にまで減る。

20代の出生数は減っている

これを見る限り、20代の女性の出生が大きな比重を占めることがわかるが、残念ながら近年かつて8割以上を占めていた20代の出生構成比が2020年には35%にまで落ち込んでいる。いわゆる晩産化である。

1980-2000-2020年の20年スパンでの女性の各年齢別出生数を見ると明確である。

もっとも落ち込んでいるのが25-29歳の層である。40年間で7割以上の減である。

しかし、だからといって、20代の女性が出生しなくなったというわけではない。そもそも当該年齢の有配偶女性人口そのものが減っているからである。

少子化ではなく少母化

25-29歳の出生数と同年齢の有配偶女性人口とを1980年を1として2020年までの推移を表したのが以下のグラフである。

見事なほどほぼ完全に一致しているといえる。

つまり、有配偶の女性の一人当たりの産む子どもの数は1980年代とほぼ変わらず推移しており、決して女性が子どもを産まないから少子化なのではないのだ。

有配偶女性の人口そのものが減少しているから少子化なのであり、「少子化ではなく少母化」と私が言っているのはそういう意味である。

出生数が増えない問題は「少子化」ではなく「少母化」問題であり、解決不可能なワケ

個々の夫婦のセックスレス化を論じるのもよいが、それがどうにかなったところで実は抜本的な少子化対策にはならない。

写真:アフロ

合計特殊出生率は母数に未婚女性も含む。当然未婚率が上昇するだけで自動的に下がってしまうものである。

とはいえ、残念ながら婚姻を増やし、未婚率を下げたところで、そもそも当該年齢の絶対人口自体が縮小しているのでどうにもならない。

1990年代に来るはずだった第三次ベビーブームがなかった時点で、現在及び未来の少子化と出生減は確定されているのである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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