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恋愛や結婚で惹かれ合う「共通の趣味」や「価値観の一致」の裏にある「見えざるチカラ」とは?

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(提供:イメージマート)

オタク別年収女性版

前回、オタク種類別の年代別の未婚男性年収中央値をご紹介したところ、「女性のデータも見たい」という要望をいただいたので、今回は未婚女性のランキングを公開する。前回の男性版とあわせてご覧いただきたい。

男性版はこちら

オタク趣味別未婚男性の年収中央値から読み解く「お金があっても結婚しないオタクの道」

女性版のオタク種類別年収中央値ランキングは以下のとおりである。

一部、50代の「コスプレ」オタクだけはn数不足のため除外している。

(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

まず、未婚女性においては、全体の中央値より高いオタク趣味は、どの年代も共通であることがわかる。「筋トレ」「チームスポーツ」などが高年収なのは未婚男性と同様である。スポーツだけではなく「読書」オタクに関しても、女性の場合年収が高い。

一番お金かかるのは交通費と宿泊費

注目したいのは、「野球・サッカーチームの応援」オタクの年収が全年代通じて高いことだ。これは男性もその傾向はあったが、男性よりも顕著である。

ちなみに、「野球・サッカーチームの応援」オタク女性の未婚率は高い(1位「アイドル」、2位「野球・サッカーチームの応援」、3位「アニメ」)。

とはいえ、これは別に、「野球・サッカーチームの応援」すると結婚から縁遠くなるという話ではなく、全体的にこれらの人口が増えたことによる影響だろう。

野球では、カープ女子(広島東洋カープ)が有名だが、そのほかにも、オリ姫(オリックス・バファローズ)、タカガール(福岡ソフトバンク・ホークス)、つばめ女子(ヤクルト・スワローズ)などと各チームに女子ファンが存在する。

サッカーJリーグでも、浦和女子(浦和レッズ)、ベガ女(ベガルタ仙台)、マリジェンヌ(横浜F・マリノス)などの愛称があるらしい。

提供:イメージマート

これらのファンの中でオタクを自認する女性は、アウェイの試合にも遠征し、交通費や宿泊費もかかるだろう。それなりの年収が必要なのはうなずける。

実は、アニメやアイドルオタクにも言えることだが、オタク対象そのものに対する費用より、オタクたちが使っているお金の大部分は交通費・宿泊費の比重が高い。オタクたちの行動は、旅行業界や宿泊業界にも寄与している。

写真:アフロ

もうひとつ、女性で注目は「鉄道」オタクの年収が高いことである。20代と40代で圧倒的に1位である。これも「乗り鉄」か「撮り鉄」かによっても違いはあるだろうが、「お金がないと満足にオタ活できない」ということかもしれない。そんな「鉄道」オタク女子ほど結婚率が高いというのも興味深いものがある。

「共通の趣味」より大きなチカラ

前回の記事とあわせて、男女別々にオタク種類別の年収中央値をみてきたが、男女で種類別に年収の相関をみるとおもしろい結果となった。20~50代全体をあわせた数値で見てみたい。

(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

なんのオタクなのかと年収は男女で、0.7340という強い正の相関がある。つまり、男女とも同じような年収の者同士が同じようなオタク活動をやっているということだ。

出生動向基本調査においても、結婚相手の条件では「共通の趣味がある」というのが割と重要度は高い。最近の婚活では、同じ趣味を持つオタク同士のマッチングも人気らしい。勿論、価値観が一致する者同士なら気が合うという考えも間違いではない。

しかし、毎度身も蓋もない話をするが、その実「趣味が共通」であるかどうかが重要なのではなく、「共通の趣味にハマるということは、同じような経済環境にある」ということだからではないだろうか。

結果、生きてきた経済環境が同じだから、価値観が合い、それが結果として経済同類婚という形で具現化する。そう考えた方が合点がいく。

結婚しても同じオタク趣味を継続する夫婦もいる。一方で、結婚を機にすっぱりやめてしまう場合もある。それでも夫婦として価値観が合うのは、「共通の趣味」というより「共通の趣味に至る経済環境が似ている」からなのかもしれない。

そうして、多くの夫婦は子を産み育て、いつしかゆるぎない「家族オタク」になるのだろう。

提供:イメージマート

<補足>

前回の記事に対して、「オタクの定義が不明だ」「オタクらしからぬ単なる趣味をオタクとしている」などという指摘があったが、これは「通常の趣味のレベルを超えて、時間とお金と労力を使い、オタクといってもいいほどのレベルに達しているものがある」という回答者をまずスクリーニングした上で、その内容を複数回答ありでピックアップしてもらったものである。

何に対して「オタク」だと決めるのは本人であり、別に外野が判断することではない。「そんなのはオタクではない」などというのは大きなお世話というものだ。本人が自分のその行動を「もはやオタクだ」と考えているのであれば、それは立派なオタクなのである。そう私は認識している。

また、かつてあったように、「オタク」は必ずしもネガ言葉ではない。むしろ「没頭できる対象を持つ」という意味でポジティブにとらえている人が多い。

こちらの記事でも書いた通り、20~50代の全人口に対して、20~50代だけに限定しても、何かしらのオタクである人口は約ユニーク数で1300万人を超える。当該年齢全体の23%がオタクであるという計算になる。矢野経済研究所によれば、2030年にはオタク人口比率は30%を超え、やがて4割に達するとも予想されている。

オタクはもはやマイノリティとは言えない規模になっているのである。それは、同時に消費市場としても無視できない規模になっていることを意味する。消費意欲が旺盛なオタクたちと、どう上手に付き合っていけるかが、今後のマーケティングの鍵となるだろう。

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※記事内グラフの無断転載は固くお断りします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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