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夫婦の実情~眠る時は「一緒に眠りたい夫」「別々に眠りたい妻」

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

「ソロ眠」派か?「トモ眠」派か?

ソロ焼肉、ソロカラオケ、ソロ遊園地、ソロ旅、ソロキャンプ…。

かつて「おひとりさま」などと揶揄された一人行動も、今や「ソロ活」などと言われ、広く市民権を得るに至るまでにもなっている。はからずも、コロナ禍によってソロ活経験率はさらに高まっている。

私は、マーケティングの観点から消費行動を「一人で行う行動=ソロ活」「誰かと共に行う行動=トモ活」に分けていろいろと分析し、今後そうした市場が無視できない規模に拡大していくだろう未来を予測した「ソロエコノミーの襲来」という本を2019年に上梓した。

予測通り、いろんなソロ活が活発化しつつあるのだが、今回は消費行動ではなく、睡眠のソロ活というべき「ソロ眠(一人寝)」について取り上げてみたい。

眠る時は「一人で寝たい」か?「パートナーと緒に寝たい」か?である。

夫婦は一緒に寝ているのか?

独身でパートナーもいない人はともかく、結婚されたご夫婦は、夜一緒のベッドまたは一緒のお部屋でお休みだろうか?

勿論、新婚なのかどうか、子の有無や住居形態。二人の関係性などによってさまざまだとは思うが、未婚と既婚とで、「夜寝る時は一人で眠りたいのか、二人一緒に寝たいのか」について違いがあるか調べてみた。

グラフは、寝るときは「一人がいい(ソロ眠派)」とする割合と「二人がいい(トモ眠派)」という割合の差分を表している。上に伸びている方が「ソロ眠派が多い」、下が「トモ眠派が多い」ことを示す。未婚者に対しては恋人と寝る場合にどうかという話だ。

(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

予想通り、未婚男女は圧倒的に「ソロ眠」派が多数である。そもそも、一緒に寝る相手がいないということもあると思うが、いたとしてもソロたちは「一人で眠りたい」傾向が強い。

人によっては「一人じゃないと眠れない。誰かと一緒なんてとても無理」という人もいるくらいだ。

興味深いのは既婚の方である。

40代以降「一人で眠りたい」妻

20~30代の既婚者は、男女とも「トモ眠派が多い」にもかかわらず、40代を過ぎると、既婚女性だけ「一人で寝たい」と逆転し、50代既婚女性に至っては未婚男女と変わらない。

一方で、夫の方は年代に関係なく「妻と一緒に寝たい」のままなのだ。この40代以降の夫婦の意識のすれ違いが、ゆくゆくは何らかの影響をもたらすのかもしれない。

この回答は、「現在一緒に寝ているかどうか」ではなく、あくまで「本当はどっちが希望なのか」を聞いているものだ。実際には、一緒に寝ている夫婦でも「本当は嫌なんだよ」と思っている40代以上の妻が結構な割合で存在するということを示している。

40代より上の既婚女性は、どうして夫と一緒に眠りたがらないのだろうか?

「一人で眠りたい」か「誰かと眠りたい」かは、本人の嗜好の問題もあるが、相手が誰かによっても左右されるだろう。たとえ恋人同士として付き合っている相手でも、「どうもこの相手だと一緒に眠ると落ち着かない」という経験をした人もいると思われる。女性からすれば「いびきがうるさい」という理由もあるかもしれないが、中には、いびきではなく「寝相が悪い」「寝言がうるさい」という理由もあるかもしれない。

写真:イメージマート

しかし、逆に、尋常じゃない音量のいびきをかく夫なのにその隣で平気で熟睡できるという妻もいるだろう。子の目線から見ても、「お母さん、よくあんなお父さんのいびきの隣で眠れるね」と思ってしまう両親はたくさんいる。

20代の新婚当時は、一緒に眠ることが安心だった夫婦でも、年とともに寝室を分けてしまう場合もある。日本人の中高年夫婦のセックスレス率は非常に高いともいわれており、その影響もあるかもしれない。

どっちが幸福度が高いか?

では、夫婦で「ソロ眠」派と「トモ眠」派とではどちら幸福度が高いのだろうか、についてもクロス集計して調べてみた。以下がその結果である。

(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久
(c)ソロ経済・文化研究所 荒川和久

妻の方は前述した希望と一緒で、30代までは夫と一緒に寝たい「トモ眠」派が幸福度が高いのだが、40代を超えると、一人で寝たい「ソロ眠」派の幸福度の方が上回る。

対して、夫の方は、20~40代までは、希望と同様「トモ眠」派の方が幸福なのだが、50代になると一転して「一人で寝た方が幸せ」な夫の割合が急増する。その差分は、未婚男女を上回る。

これを見る限り、既婚者は夫50代、妻40代を過ぎたら、夫婦は別々に寝た方が幸せなのかもしれない。

未婚はそもそも相手いないから不幸

ついでに、未婚男女の方を見ると、50代こそ男女ともに「ソロ眠」派の方が幸せになるのだが、20~40代までは男女で全く逆の傾向となっているのが面白い。若い未婚男性ほど「彼女と一緒に眠ることに幸せを感じる」し、若い未婚女性は「彼氏がいようとも私は一人で眠りたい」という強固な意志も感じられる。逆にいえば、恋人と一緒に眠ることをよしとしない女性は結婚から縁遠くなるのかもしれない。

提供:イメージマート

そんな未婚女性も40代だけは「一緒に眠る方が幸せ」となる。これは、見方を変えれば、「一緒に眠る相手がいないから不幸度が高い」と解釈することもできる。同様に、20~30代未婚男性も「誰も一緒に寝てくれる相手がいないことでの不幸」を感じているのかもしれない。

いずれにせよ、相手がいようがいまいが、ご自分の安眠が第一なので、熟睡できる環境を整えていただきたいと思う。

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※記事内グラフの無断転載は固くお断りします。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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