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ロシア、イラン、シリアは米国の制裁と資源盗奪に対抗するための作戦司令室を設置

青山弘之東京外国語大学 教授
Anbaa Online、2020年7月18日

ロシアのスプートニク・ニュースは(4月18日)、複数の消息筋の話として、地中海岸のシリアの港湾施設に、石油、小麦などの物資を安全かつ安定的に輸送するための「ロシア・イラン・シリア作戦司令室」が設置されたと伝えた。

Sputnik News、2021年4月18日
Sputnik News、2021年4月18日

ロシア・イラン・シリア作戦司令室の設置は、欧米諸国の経済制裁の打破やシリアの天然資源盗奪に対抗するのが目的。最近になって、三カ国の関係者らが設置に向けた集中協議を行っていた。

ロシア・イラン・シリア作戦司令室は、ロシア軍艦艇がイランからスエズ運河を経由してシリアに石油などの物資を輸送するタンカーや輸送船を護衛することを主な任務とする。任務は今年末まで実施される見込み。

なお、すでに数日前に、天然ガスを積んだイランの輸送船4隻がロシア艦船の護衛を受けてシリアに到着したという。

欧米諸国は、シリアのアサド政権による抗議デモ弾圧、化学兵器使用などを理由に、政府・軍高官らの資産凍結、石油関連製品の禁輸といった制裁を科している。また、イスラーム国に対する「テロとの戦い」と油田防衛を口実に、シリア北部および東部の各所に基地を設置し違法に駐留を続けている米国は、石油や小麦といった資源を盗奪、イラクに移送している。

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリア地震被災者支援キャンペーン「サダーカ・イニシアチブ」(https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』などがある。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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