女性リーダーだからコロナ対策に成功?北欧対策の特徴と日本との違い

フィンランド首相がドイツ訪問した際。どちらもコロナ対策が評価されている(写真:ロイター/アフロ)

女性首相がいる国、特に北欧で新型コロナの拡大抑制が成功しているらしいので、コメントを欲しいという連絡が最近よくくる。

確かにそのような記事が4月中旬から出ているようだ。「へ~」という感じ。

アイスランド、ノルウェー、フィンランド、デンマークでは女性が首相。独自路線のコロナ対策で注目を浴びるスウェーデンでは男性が首相だ。

私個人の意見でいうと、リーダーが「女性」だからウイルス対策が「成功」しているわけではない。

若い人であれ、女性であれ、特権・年齢・性別に限らず、才能ある人をリーダーとして受け入れる。国民性と社会の柔軟性・成熟性にあると思う。

女性を首相として受け入れるに至るまでには、民主主義を尊重し、男性優位の制度や伝統を重んじる仕組みに変革を起こし、国全体の意識がある程度のレベルまで育っている必要がある。

とはいえ、「女性リーダーだから新型コロナの対策に成功」と他国が注目したがる気持ちも分からないではない。しかし、自国の首相が女性だからという目線での話題は現地では見かけない。

単に首相を女性にすればいいわけではない。それでウイルス拡大が抑制できるのなら越したことはないが。

でも、女性の首相を受け入れる寛容性があるほど、国全体が昔と変わっているなら、政府と市民が一丸となり、政治家も市民生活をもっと理解し、異なったウイルス対策ができるだろう。

段階的に規制緩和が始まる

新型コロナの拡大後、北欧諸国で規制が段階的に緩和されている。街を出歩く人の数は明らかに増加中。

5月2日、ノルウェーの首都オスロにある中心部カール・ヨハン通り。買い物袋を持って、土曜日の買い物を楽しむ市民 撮影:あぶみあさき Photo: Asaki Abumi
5月2日、ノルウェーの首都オスロにある中心部カール・ヨハン通り。買い物袋を持って、土曜日の買い物を楽しむ市民 撮影:あぶみあさき Photo: Asaki Abumi

徐々に社会が再開する中、市民が一気に動き始めると、第二波が起こりかねない。各国の政府はまだ気を緩めてはいない。

各国の感染者数と死亡者数は

WHOの5月2日付の発表によると

  • ノルウェー(人口536万人) 感染者7759人 死亡者204人
  • スウェーデン(人口1032万人) 感染者2万1520人 死亡者2653人
  • アイスランド(人口36万人) 感染者1798人 死亡者10人
  • デンマーク(人口582万人) 感染者9311人 死亡者460人
  • フィンランド(人口552万人) 感染者5051人 死亡者218人

※人口は各国の統計局を参照

感染者数や死亡者ばかりがニュースでは取り上げられがちだが、北欧諸国は規模がとても小さい国々だ。各国の人口はぜひとも一緒に確認してほしい。

スウェーデン語だが、スウェーデン公共局SVTの北欧各国を比較したグラフを見ても(アイスランドを除く)、スウェーデンの死亡者数が際立って多いことが分かる。

感染拡大や死亡者数を抑えているのはノルウェー、デンマーク、フィンランド。3か国は、形は違えど厳しい規制で対応している。

「集団免疫」戦略をとるスウェーデン、長期的な対策としては参考にできる、持続可能なウイルスとの共存の道?

スウェーデンのステファン・ローベン首相(社会民主労働党) 撮影:あぶみあさき Photo: Asaki Abumi
スウェーデンのステファン・ローベン首相(社会民主労働党) 撮影:あぶみあさき Photo: Asaki Abumi

「集団免疫」戦略を実行するスウェーデン。

厳しい規制があまりしかれておらず、市民が楽しそうに街でくつろぐ写真は、世界中で驚きをもって報じられている。

市民が街でくつろぐ光景はノルウェーなどにもある。それでも、ジムや美容院までもが営業を続けていたスウェーデンは、やはり明らかに違う路線を行っていた。

厳しい規制はせずに市民を信頼して、責任ある行動を求める。ロックダウンせずに、社会的距離を保つ習慣を暮らしに根付かせる。

スウェーデン型では、市民の支持を得ながら、ウイルス対策を長期的に継続していくことが可能とも言われている。

スウェーデン型では、ウイルスを広めているのは子どもではないことも強調。学校を休校にしてしまえば、仕事に行けない大人も、学校に行けない子どもも精神的に負担を抱え、むしろ重大なヘルスケア問題を引き起こす可能性があると。

トランプ大統領からも突っ込まれるスウェーデン

米国のトランプ大統領にも、政治利用されているスウェーデン型。

ノルウェー、デンマーク、フィンランドと比べて死亡者数が明らかに高いスウェーデンに対し、ロックダウンをしないことで、「高い代償を払っている。米国は正しい決断をした!」と言われてしまった。

CNNは「欧州他国と違い市民に多くの自由を許している国」とスウェーデン型を「物議を醸す、リラックスしたアプローチ方法」と表現。

スウェーデン国内でも、集団免疫戦略には反対する声がある。それでも、現在の戦略の顔ともいえる疫学者を支持する人は多い。

ロイター「スウェーデンの感染症専門家にアイドル並み人気、タトゥーを入れるファンも」

スカンジナヴィア地域3か国では、デンマークよりもノルウェーのほうがスウェーデン型の行方を気にしている。

秘密の倉庫を持つフィンランド、最も緊急事態に備えていた国?

北欧の中でも、フィンランドはもともとパンデミックに備えていた国として評価されている。

フィンランドが異なっていたのが、新型コロナ対策で戦後初めて使用された「備蓄(びちく)倉庫」の存在だ。

フィンランドの倉庫の存在は、スウェーデンやノルウェーなどでも驚きをもって報じられている。

ロシアとの緊張関係や歴史が影響して、フィンランドは非常事態を常に警戒して準備をしてきた。

1950年代からの緊急時のための倉庫を、ずっと撤去せずにいた。

第二次世界大戦以降、ノルウェー、デンマーク、スウェーデンにも似たような倉庫はあったが、フィンランドだけがずっとその倉庫を持ち続けた。

備蓄倉庫の場所は秘密だが、全国各地にあり、感染防止対策のための器具も十分に揃っているという。

倉庫の中には、医療用具、オイルやコーンなどの食糧、農業用具などがあるそうだ。

マスクもあるが、ずっと保管されていたので必ずしも安全に使えるとは限らない。病院のスタッフには、使用期限が2012年と明記されたマスクが届いた。

倉庫の中のものはフィンランド国民のためだけに使用されることになっており、他国へは寄付されない。

緊急事態に備えてずっと残されていたフィンランドの倉庫からは、他国も何か学べるものがあるだろう。

すぐさま厳しい規制と緩和に乗り出したデンマーク

デンマークのメッテ・フレデリクセン首相(デンマーク社会民主党) 撮影:あぶみあさき Photo: Asaki Abumi
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相(デンマーク社会民主党) 撮影:あぶみあさき Photo: Asaki Abumi

北欧の中でデンマークは対応が特に早かった。

厳しいデンマーク型を参考にして、その後を追っているのがノルウェーだ。

両国のアプローチ方法は似ており、デンマークが規制を強化、緩和した後は、すぐにノルウェーも同じような動きをしている。

ノルウェーが自国の対策を他国と比較するとき、スウェーデンはあまりに異なっているので、参考にしようがない。むしろ、「スウェーデンのようには、しないようにしよう」という目線だろう。

移民や難民申請者の受け入れでも、ノルウェーはデンマークの後を追うことが多い。北欧の中でも厳しめで、反対にスウェーデンはもっと寛容的に受け入れてきた。

とはいえ、今回の新型コロナ対策ほど、お互いの違いに驚いたことはなかったのでは。

移民にせよウイルスにせよ、外からくるものを最も排除せずに共存しようとするのは、スウェーデンなのかもしれない。

規制緩和に乗り出している国々だが、あまりにも様々な対策が同時進行だったため、どの対策に効果があり、どの対策に効果があまりなかったかは、まだ分かっていない。

日本と北欧の違いは?

ノルウェーのアーナ・ソールバルグ首相(保守党) 撮影:あぶみあさき Photo: Asaki Abumi
ノルウェーのアーナ・ソールバルグ首相(保守党) 撮影:あぶみあさき Photo: Asaki Abumi

私が日本と北欧諸国のニュースを見ていて、違いを感じたのはこのようなことだ。

現金払いお断り

政府の方針ではないが、多くの店がレジでの現金の支払いを断り始めた。

もともとデビットカードでの支払いが普及している。お札や小銭を手にしないだけで、店員も感染の心配をせずに勤務できただろう。

北欧諸国では以前から現金離れが進んでいる(特にスウェーデンはすごい)。

デジタル化先進国なので、テレワークやオンライン授業にさらっと移行

北欧諸国はもともとデジタル化を政府が急いで進めている。

郵便局、銀行、医療機関、教育機関など、社会全体のデジタル化にもともと取り組んでた。だから、テレワークもオンライン授業もさらりと対応。

ノルウェーでは自治体の予算にもよるが、もともと生徒にはノートパソコンなどの学業のためのデジタル機器や手段が提供されている。もちろん課題はあるが、日本ほど苦労はしていない。

情報通信技術の専門家などは、国が進めるのに10年もかかると思われていたデジタル化が、コロナをきっかけに一気に進んだと感嘆している。

北欧諸国は人口が少ない

日本との大きな違いだ。日本でみるような満員電車も起きない。密接空間も日本のような形では起きにくい。

自然にも恵まれているため、自宅にいる子どもたちにも気晴らしができる場所は見つけやすい。

突然の事態に柔軟に対応する

もともと事前にリスク想定をして計画するという習慣が日本ほどない。その分、予想だにしなかったことも起きやすいが、柔軟に対応する能力も高い。それは政治家や企業、市民レベルの行動にもいえることだ。

北欧のリーダーたちなら、すぐさまハンコや紙のような文化とはさようならをしているだろう。

市民と政治家の距離感

幸福度調査などにも関係するように、市民と政治家の関係こそが北欧モデルをつくる土台のひとつだ。

政権交代も当たり前なので、もしコロナ対策に市民が満足しなかったら、次の選挙で痛い目を見る。

政治家も普通の市民と変わりない生活をしていた人たちのため、市民の生活の苦しさなどもよくわかっている。

濃密な挨拶習慣がない、もともと社交的距離をとっている

北欧の人々はシャイな国民性でも有名だ。フランスなどのように、頬に軽いキスをするような挨拶もしない。握手をする時もあるが、しなくてもいい。

もともとパーソナルスペースが広い国々だ。バス停で待つ人と人との距離感が異様に開いている不思議な写真をニュースで見たことがある人もいるのでは。新型コロナ対策で重要とされる社交的距離を、もともと取っているのだ。

休業命令・要請には支援金もセット、労働組合が強い

各国で休業命令の対象業種などは異なるが、国も自治体も支援金は出す。

休業命令や要請の対象ではなくとも、新型コロナが原因で仕事が打撃を受けていたら補償はされる。どの国でも、国が最初に出した緊急支援策で、誰もが満足するわけではない。急いで出した支援策であればあるほど、穴はある。だから、メディアや労働組合を通して、市民は足りない点を指摘する。公共局の討論番組では、大臣たちと生活に困る市民が直接議論するチャンスもある。政治家はそうして補償制度を調整している。

もともと高い税金を払っているのだから、当然のことだ。日本でも、今は政治の必要性を近くに感じている人が多いのではないだろうか。どんどんと声をあげよう。

マスクはしない

ノルウェーの首都オスロの街を歩いていても、マスクをする人はほとんど見ない。

3時間ほど街を取材で歩いていても、マスクかスカーフで口を覆う人を10人以上見かけることはない。

「アジアのようにマスクをしたほうが効果があるのか?」というニュースは出るが、市民生活では普及していない。マスクは医療従事者に配布されている。

ただ、最近ではデンマークで「マスクは着用したほうがいいのかな?」というニュースが増えてきている。

名刺交換はしない

もともと名刺交換の習慣があまり浸透していません。

リスクグループや社会機能の維持に必要不可欠な職種を明確に

例えばノルウェーの場合、初期段階でリスクグループが誰かは明確にリスト化されていた。

65歳以上の高齢者、ガン患者、肥満症、高血圧がある人、呼吸器に異常がある人、たばこを吸う人など。妊婦も感染すると重症化するリスクがあるとして、外出をできるだけ控えるように推奨されていた。守るべきグループは誰か、みんなで把握することで行動しやすくなる。

不急不要ではない外出は控えるようにノルウェー政府は市民にお願いしたが(命令ではない)、自分の今日の仕事が不急不要かはどう判断するのだろう?公共交通機関を利用しながら移動してもいい、社会機能の維持に必要不可欠な職種を政府はリスト化。医療従事者、弁護士、清掃員、保育士など。これらの職種に従事する人の子どもは、本来は休園中でも、幼稚園・保育園に子どもを預けることが可能となっていた。

その他

消毒液は徹底は薬局では売り切れていても、多くの店で用意されている。

日本で周知されている「3密」、「つるつるしたところではウイルスが長生きする」、「顔を触らない」、「うがい」という話は聞かない。

外国人在住者で現地の言葉が分からない市民に向けて、英語だけではなく様々な言語で自治体は情報発信した。

パチンコ店はない。

コロナハラスメント、クレームで疲労する店員などは日本ほど話題になっていない。

検査数が多い。

スウェーデン型に関しては「集団免疫作戦の効果は?感染防止につながる信頼文化と高い代償を払う高齢者」を参考に。

Text: Asaki Abumi