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脱マスクから半年、NY市長「マスク外して」と異例の呼びかけをした理由

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
マスク姿の人(イメージ写真)。(c) Kasumi Abe

ニューヨークでは昨年9月に公共交通機関でのマスク着用義務が撤廃された。それ以降、着用するか否かは完全に個人の選択となっている。

街中を見渡すと、現在多くの人がマスクを着けていない。

ただしマスク姿が皆無だったコロナ禍前の風景に完全に戻ったかと言えば決してそうではなく、店内でも地下鉄でも、ごく一部の人は未だマスクを着けて行動している。

マスク離れをしていないのはお年寄りだけでなく若い人もいる(冒頭の写真)。今日ダウンタウンを歩いた感じでは、マスク姿は全体の1%ほどの割合だった。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

そんな中、ニューヨークのエリック・アダムス市長は6日、市民に対して「店に入るときはマスクを外して」と異例の呼びかけをした。

朝のニュース番組「PIX11モーニングニュース」にリモート出演した市長は、その理由としてこのように話す。

「未だにマスクをして入店する人(の一部)は新型コロナの感染が怖いのではありません。彼らが恐れているのは警察に捕まることです」

白昼堂々と窃盗犯が高級ブランド店に押し入り、商品を鷲掴みで盗んでいる動画が、コロナ禍以降、ニュースやSNS上で頻繁に流れてくる。ブランド品ではないものの、筆者も実際にスーパーで食品や嗜好品を盗んでいる人を目撃したことがある。それも一度や二度ではない。

今日明日の食べ物に困って万引きをする人はごく一部のようで、「今起こっている窃盗の約97%が転売してお金に替えるため」と専門家は指摘する。

ドラッグストアでは現在、たった10ドルちょっとの頭痛薬でさえ、鍵付きの棚に入れられているのだ。

ブランド店で発生した窃盗の動画。コロナ禍以降、万引きを含む窃盗や強盗が社会問題になっており、このような目撃映像が日々SNS上で流れてくる。どの犯人も必ずマスクを着けている。

市内のほとんどの店は監視カメラを設置しており、マスクなしの犯人の顔を記録し検挙に繋げたい意向だ。市長は小売店の経営者に対しても、マスクを着用している客の立ち入りを許可しないよう呼びかけた。

ただし市長は、マスク着用自体を否定しているわけではなく、入店の際に顔が完全に見える状態であれば、入店後にマスクを着用しても構わないと補足した。

'Concern to all': Adams on 'tranq,' other NYC issues

  • 「マスク着用によってもたらされる(感染防止の)安全性を犯人が悪用することを阻止する必要がある」とアダムス市長。(5:40あたりから)

デイリーニューズなど地元紙によると、昨年発生した小売店での(万引き含む)窃盗・強盗事件の件数はその前の年と比べて4.5%増加したという。

今年2月の時点では、昨年に比べて10%減少したという報道もある。しかし昨年と比較して減少しただけであり、今年も同様の事件は起きている。つい最近も比較的治安が良いとされているアッパーイーストサイド地区のデリの店員が強盗犯に射殺される事件が起こったばかり。「マスクを外して」という異例の呼びかけは、これらの犯罪への対応に苦慮する市が考えあぐねた末の苦渋の決断なのだ。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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