なぜ川崎FはJ1リーグ新記録となる11連勝を果たせたのか?
利き足ではない左足からワンタッチで放たれたクロスは、ゴールから逃げる山なりの軌道を描きながらファーサイドへ。待ち構えていたジェジエウによる、打点の高いヘディングから放たれたシュートはダイブしたランゲラックの左手をかすめて、対角線上のネットに吸い込まれた。 「こういうギリギリの試合展開ではセットプレーが大事になると感じていたし、自分たちが逃してはいけないポイントだとわかってもいた。それが結果に結びついたことは非常に嬉しい」 ジェジエウ、身長188cmのFWレアンドロ・ダミアンとともにセットプレーの標的を務めた、身長183cmの谷口が、すべてセットプレーから奪った3ゴールの価値を強調した。 8月23日の第12節はグランパスの倍となる12本のシュートを放ちながらゴールが遠く、前半終了間際に喫した失点を最後まで挽回できなかった。ただ、このときは昨年11月に負った左ひざ前十字じん帯損傷の大けがからの復帰途上にあった憲剛は、まだ戦列に加わっていなかった。 「こういうビッグゲームで、彼の存在は大きい。相手にとって脅威だったと思っています」 前節はベンチ外だった憲剛を先発で起用。復帰後における通算4試合目で、最長となる70分間プレーさせた鬼木達監督は、今月31日に40歳になる大黒柱へ全幅の信頼を寄せ、セットプレーの積み重ねでダメージを与えた戦いぶりを「試合巧者ぶりを出せている」と成長の跡と受け止めた。 グランパス戦を含めたフロンターレの総得点68は、2位の横浜F・マリノスの52に大差をつけてトップを走る。分母が大きいがゆえに目立ちにくいが、68得点のうちセットプレー、特にコーナーキックと直接フリーキックから生み出されたのは12を数え、清水エスパルスに次ぐ2位にランクされる。 キッカーも右利きのMF脇坂泰斗とMF大島僚太、田中と左利きのFW家長昭博とMF下田北斗がそろっているところへ、グランパス戦で憲剛が2アシストをマークした。16人ものフィールドプレーヤーが得点をあげるなど、どこからでも、そして誰でもゴールを狙う布陣にセットプレーまでもが加われば、史上最強の呼び声が高い攻撃力がさらにスケールを増す。谷口が笑顔で先を見すえる。