なぜ川崎FはJ1リーグ新記録となる11連勝を果たせたのか?
同じ相手に続けて二度は負けられない。ましてや敵地での対戦で10連勝を止められた、因縁の名古屋グランパスへのリベンジがかかり、なおかつ勝てば自分たちを抜くJ1新記録となる、同一シーズンにおける11連勝を樹立できる一戦となれば、おのずとモチベーションが駆りたてられる。 ホームの等々力陸上競技場で18日に行われた明治安田生命J1リーグ第23節。首位を独走している川崎フロンターレがまるで用意されたような舞台へ極限まで闘志を高めて臨み、さらに試合巧者ぶりをも融合させて3-0で快勝し、記録ずくめの優勝へまた一歩近づいた。 キックオフ時点の総失点が、フロンターレがリーグ最少の19に対してグランパスが同2位の20。堅守を誇るチーム同士が繰り広げた、一進一退の攻防から均衡が破れたのは前半44分。グランパスの城壁に風穴を開けたのは、フロンターレが獲得した4本目のコーナーキックだった。 それまでキッカーを担っていたMF中村憲剛から、このときだけMF田中碧に代わる。右から蹴られた速く、低い弾道のクロスを、キャプテンのDF谷口彰悟がニアで相手と競り合いながらファーへすらす。ノーマークだったルーキー、FW三笘薫(筑波大卒)が右足で確実に押し込んだ。 「前日の練習からキッカーを僕と(田中)碧とで分担していたなかで、目先を変えるという意味で、球種がちょっと違う碧に蹴ってもらいました。準備したことがはまった、かなり大きな1点でした」 意図的にキッカーを変えた理由をこう明かした憲剛は、後半12分には直接フリーキックのキッカーを担う。相手ゴールから左へ45度の位置。距離は約25m。直接狙うにはちょっと遠いかな、と考えていた憲剛の脳裏に、ベガルタ仙台と対峙した前々節のあるシーンが浮かんできた。
ほぼ同じ角度で、距離がもっと短い位置で獲得した後半6分の直接フリーキック。憲剛の右足から放たれた一撃はカーブの軌道を描きながら、クロスバーに弾き返された。そうした情報を当然ながら、守護神ランゲラックをはじめとするグランパス守備陣も頭に叩き込んでいるはずだった。 「前々節に見せていたのが効いていたのかな、という気がしないでもないのかな、と。直接があるかもと思われていたかもしれないなかで、僕が味方に合わせればランゲラック選手も飛び出しにくいし、他の選手たちも最初にどうしても下がると思ったので、いろいろな駆け引きを含めて合わせました」 照準を定めたのは最も遠い位置にいた、186cmの長身を誇るジェジエウ。日々の練習を介してインプットされた、加入2年目のブラジル出身センターバックの特徴もしっかりと織り込まれていた。 「ジェジエウは速いボールが得意ではないところがあるので。柔らかい軌道で彼のジャンプ力を生かすようなボールを蹴れば、折り返しを含めて何かが起こるんじゃないかな、と」 果たして、憲剛が期待した「何か」は、ジェジエウにとってリーグ戦出場35試合目にしての来日初ゴールとなって具現化される。山なりのクロスに、長い滞空時間から強烈なヘディングを一閃。グランパスDF中谷進之介に当たってコースを変えたシュートがゴールネットを揺らした。 8分後には勝利を決定づける3点目が、またもやセットプレーから生まれる。左コーナーキックを蹴る直前の憲剛の目に、ショートコーナーに対してグランパスが無警戒だと映った。以心伝心のタイミングでMF守田英正が近づいてきた。狙い通りにグランパスの守備陣形が崩れる。 「守田が顔を出してくれたのでアドリブに近い形で、それでも目先を変える意味で。キーパーが届きそうで届かない、でも速くはない、何かが起こるようなボールを入れました」