史上最速V視野の川崎Fに「交代選手得点」の勝利法則
シーズンが折り返してまだ間もないのに、興味や関心が別の次元へと移りつつある。異次元の強さを発揮し続ける川崎フロンターレは、勝ち点をいくつまで積み上げるのか。歴史上で初めて総得点を100の3桁に到達させるのか。何よりも史上最速でリーグ戦優勝を決めるのではないのか、という話題だ。 敵地ヤンマースタジアム長居に乗り込んだ3日の明治安田生命J1リーグ第20節。2位のセレッソ大阪との直接対決を3-1で制したフロンターレは、前半戦の10連勝に続いて今シーズン2度目の8連勝をマーク。18勝2分け1敗で勝ち点を56に伸ばし、セレッソとのポイント差を14に広げた。 1-1で迎えた後半38分に決まった勝ち越しゴールが、フロンターレの強さを象徴していた。右コーナーキックのクリアを、ペナルティーエリアの外からFW旗手怜央がダイレクトでシュート。セレッソの守護神キム・ジンヒョンが防いだこぼれ球を、FWレアンドロ・ダミアンが押し込んだ。 「ピッチに入った瞬間から、必ず自分のところにこぼれ球が来ると信じていた。自分が思い描いていた通りにこぼれ球を拾い、ゴールすることができて本当に嬉しく思っている」 試合後に声を弾ませたダミアンは、わずか1分前にFW小林悠に代わって投入されたばかりだった。ファーストタッチでヒーローになったダミアンのゴールにつながる強烈なシュートを放った、大卒ルーキーの旗手(順天堂大)も後半28分にMF田中碧に代わって途中投入されていた。 さらにつけ加えればダミアンの1分後にダメを押すゴールを決めた、同じく大卒ルーキーのMF三笘薫(筑波大)も同点とされた直後の後半18分からFW齋藤学に代わって出場していた。21試合であげた62得点のうち、実に約3分の1にあたる20得点を途中出場した選手が決めている。
「そのパワーは常に感じています。交代選手が点を取るのはウチのスタイルというか、役割をわかった上でピッチに入ってくれているので。もちろん前半からハードワークした結果として、相手の疲れが出てきていることもあるので、全員の力でああいう形になったと思っています」 試合後のオンライン会見で、フロンターレを率いる鬼木達監督が思わず目を細めた。新型コロナウイルス禍における特別ルールで従来の「3」から「5」に増えた交代枠を、中断明け以降のすべての試合でフル活用する過程で、2チームを構成できるほど厚い選手層を十二分に機能させてきた。 例えば今シーズンから採用されている[4-3-3]システムの1トップを担う、ダミアンと得点王経験者の小林を比較してみる。セレッソ戦を終えて前者は10ゴール、後者は11ゴールとすでに2桁に到達しているなかで、途中出場で決めたゴールはダミアンが4、小林は7を数える。 同じポジションを争う2人がお互いを意識し合い、先発にしても途中出場にしても、ピッチに立ったときには必ず結果を出さんと目の色を変えていることがわかる。ダミアンが言う。 「残念ながら出場時間が短い試合もあるけど、いまのウチのグループは誰が先発で出ても誰が途中から出ても、その特徴を生かしてパワーをチームに持ち込むことができる。もちろん今日に限ったことではなく、いままでも、そしてこれからも誰が出ても同じようにやっていけると思う」 サガン鳥栖とスコアレスドローに終わった2月の開幕戦では、リーグで2番に多い12の引き分けを数え、結果的に勝ち点を伸ばせずにリーグ戦3連覇を逃した昨シーズンの悪い流れを引きずっていた。しかし、その後に余儀なくされた新型コロナウイルスによる長期中断がフロンターレを変えた。