災害時、住宅確保どうする? 熊本地震きっかけに県内の不動産会社が強固に連携。現在も高齢者や低所得者、ひとり親等への住まい支援つづく 熊本県賃貸住宅経営者協会
被災現場で急がれた「住めるかどうか」を判断する安全確認調査
被災した住宅については、安全確認調査の実施も急がれました。 「余震によって倒壊の恐れがあるかなど、建物の『応急危険度判定』は自治体が実施しますが、その判定は『今後も住めるかどうか』の判断とは一致しません。例えば、タイルがはがれ落ちかかっていて“危険”と判定されても、その部分を取り除いて補修すれば再び住める場合や、みなし仮設住宅(※)として提供が可能な場合もあります。住まいとして利用できるかの判定には、自治体の応急危険度判定とは別に、建築士などの専門家による『安全確認調査』が必要です」 しかし、安全確認調査は建築士が一軒一軒回って調査しなくてはならないため、手間もお金もかかります。震災時には公費で全国から建築士を手配してもらって作業を進めたそう。安全確認調査によって利用可能と判断できるみなし仮設住宅の数が増え、被災者の入居に対応できるようになったのです。 ※みなし仮設住宅:災害により自宅に住めなくなった被災者に対して、自治体が民間の賃貸住宅を借り上げて一時的に(原則2年間)提供する住宅
震災直後だけでは終わらない、被災者への住まいの支援
熊本地震の翌年には、連合会の熊本県支部が、熊本市の仮設住宅に入居する人たちの住まいの再建を支援する「伴走型住まい確保支援事業」の公募に名乗りを上げました。約2年半にわたって、さまざまな相談に乗り、2953世帯の恒久的な住まいの確保を支援したそうです。また同様に熊本県の「住まいの再建相談支援事業業務」も受託し、熊本市以外の地域の被災者の再建の支援も行いました。この段階では、大久保さんいわく「仮設住宅に入居した人も次の住まいに移ることを念頭に置いて、早めに動く必要がある」とのこと。 「仮設住宅に入居できれば、それで終わりではなく、あくまでも仮の住まいです。行政から提示された期限まで住めるので安心されている人もいましたが、期限ギリギリになってから次の住まいを探すと選択肢も狭まり、費用が余計にかかることもあります」 高齢者や連帯保証人がいない人などは、仮設住宅を出て一般の民間賃貸住宅に移ろうとしても、なかなか次の住まいが見つからないケースも見られました。被害を免れて入居できる物件の数が限られるなか、入居後の生活や家賃の支払いなどを懸念するオーナーや管理会社から敬遠されるためです。また、ペットと暮らしている人はさらに一緒に住める住宅が少なく、支援が遅れることもあったとか。 「このような問題に対応していくには、行政だけ、それぞれの不動産会社だけはなく、居住支援協議会や福祉関係の団体とも一緒に取り組まなければ解決はできません。支援を必要とする人に適切な情報と支援を提供するには、関係者全員が一緒に力を合わせ、行政と協力しながら進めることが必要でした」
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