なぜ神戸は12試合目にして今季J初勝利を飾れたか…イニエスタの存在と”大迫先発外し”の異例采配
明治安田生命J1リーグ第13節が14日に行われ、ヴィッセル神戸が12試合目にして待望の初勝利をあげた。ホームのノエビアスタジアム神戸にサガン鳥栖を迎えた一戦で、公式戦で6試合ぶりに先発したMFアンドレス・イニエスタ(38)が前半2分に先制点をゲット。その後も2ゴールに絡むなど4―0の快勝に貢献した。森保ジャパンの主軸で、日本人Jリーガーで最高の年俸4億円のFW大迫勇也(31)を先発から外した布陣が的中した神戸は、湘南ベルマーレと入れ替わって最下位脱出も果たした。
「自分としては何りもみんなを称えたい」
瞬時に駆使した緩急とトラップで、ゴールまでの花道を作ってみせた。 前半開始わずか2分。自陣からのロングボールに反応した左サイドバック酒井高徳が、巧みなトラップでマーカーのDF飯野七聖を置き去りにした直後だった。 左タッチライン際からゴールラインと平行しながら迫ってくる酒井に合わせて、鳥栖ゴールに迫ってきたイニエスタがほんのわずかながらスピードを緩めた。 下がりながらの守備を強いられていたDFファン・ソッコとの間に、必然的にスペースが生まれる。次の瞬間、酒井が放ったやや強めの横パスを半身になった体勢で、右足でトラップしたイニエスタはボールを自身の右前に置いた。 ファン・ソッコは間合いを詰められない。DF田代雅也も体勢を崩している状況で、イニエスタはさらにひと呼吸置いて右足を振り抜いた。ゴール左側までの間に開通したコースを正確に射抜いた一撃に、鳥栖の守護神、朴一圭は反応できなかった。 11日に38歳になったばかりのキャプテンは、神戸を波に乗せる鮮やかな先制ゴールを「自分としては、何よりもみんなを称えたい」と控え目に振り返った。 「ピッチでプレーしたみんなもそうだし、後半から出てきたみんな、そしてスタジアムで応援してくれたファン・サポーターのみなさんの全員で勝ち取った勝利だと思う。そのなかで上手くいくときといかないときとがあるけど、自分としては試合に出たときに最大限のパフォーマンスを出せるように努めました」 イニエスタの出色のパフォーマンスは前半14分にも飛び出した。 田代から縦パスを受けたボランチ福田晃斗の背後から、FW武藤嘉紀が強烈なプレスをかけてボールを奪う。すかさず発動されたショートカウンター。武藤からパスを受けたイニエスタは一瞬のタメを作り、左前方へスルーパスを通した。 ボールの行き先には、MF汰木康也がトップスピードで走り込んできていた。角度的には厳しかったが、思い切り打てというメッセージも込められたパス。汰木の左足からダイレクトで放たれた一撃は、ゴール右隅へ吸い込まれていった。 2―2で引き分けた2月23日の浦和レッズ戦以来、10試合ぶりとなる複数ゴール。後半19分にもドリブルで左サイドをかく乱し、武藤が決めた3点目の起点にもなったイニエスタへ、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督も最大級の賛辞を送った。 「彼がプレーすることで、チームとしてボールを持てる。そこでの効果は素晴らしいし、チームに落ち着きと違いを生み出してくれる重要な選手だと考えています」