なぜ神戸は12試合目にして今季J初勝利を飾れたか…イニエスタの存在と”大迫先発外し”の異例采配
「リーグ戦で勝てていなかっただけに、悪い流れを断ち切ることが何よりも重要だった。その意味でこの勝利をすごく喜んでいるし、素晴らしいサッカーをしているチームを相手にしての勝利だった分だけ価値も高いと考えています」 今シーズンの年俸ランキングを見ると、上位7位までを神戸勢が独占している。20億円のイニエスタに4億円の大迫が続き、酒井、武藤、MF山口蛍、FWボージャン・クルキッチ、MFセルジ・サンペールがともに2億円で並んでいる。 右ひざ前十字じん帯を損傷したサンペールの今シーズン中の復帰が絶望となり、リーグ戦で無得点が続いていた大迫は、11月に開幕するカタールワールドカップへ向けて「率直に言って、いまのままじゃ代表に選ばれないと感じている」と漏らした。 イニエスタの推薦で獲得した元スペイン代表のボージャンも先発に定着できず、武藤も3月上旬から長期離脱を強いられた。約39億9000万円とJクラブで群を抜く年俸総額に見合わない戦いが続いた胸中を、イニエスタは試合後にこう明かしている。 「自分たちもファン・サポーターのみなさんも、本当に苦しい序盤戦だったと思う」 だからこそ、大迫をベンチに回した一戦で手にした快勝が転換点になる。 総失点18は依然として21のジュビロ磐田、20の湘南に次いでリーグで3番目に多いが、それでも3度目の零封に初めて勝ち点3を上乗せできた。山口と組むボランチにパサータイプの扇原貴宏ではなく、センターバックを主戦場とする大崎玲央をすえたロティーナ采配が、守備面で安定をもたらす意味でも的中した。 後半アディショナルタイムにはゴールキックから、途中出場していた大迫が落としたボールを拾ったボージャンがドリブル突破。相手を引きつけた上で送られたスルーパスを、ボージャンを追い抜いていった大迫が待望の初ゴールに変えた。 横浜F・マリノスに1―4で大敗した湘南と勝ち点7で並び、得失点差で上回った神戸は最下位からも脱出した。すべてが理想的に噛み合った胸中を、イニエスタは試合後に更新した自身のインスタグラム(@andresiniesta8)でこう表した。 「みんなで勝ち取った素晴らしい勝利!勝ち続けていこう!」 ひとつ勝ったからといって厳しい状況は変わらない。16位の浦和とは勝ち点で5ポイント離れている。18日にはACLの関係で未消化となっている、王者・川崎フロンターレとの第11節がノエビアスタジアム神戸で行われる。 それでもロティーナ監督は、不敵な笑みを浮かべながら前を見すえた。 「難しい試合になるが、この勝利を通して得た自信をもとにいい準備をしていく」 ようやく噛み合った歯車が、迷走からの好転を告げるのかどうか。ロティーナ監督が練り上げる川崎対策とともに、神戸の真価を問われる戦いは中3日で訪れる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)