なぜ神戸は12試合目にして今季J初勝利を飾れたか…イニエスタの存在と”大迫先発外し”の異例采配
試合前の時点でリーグ最少タイの7失点と堅守を誇り、5位タイの15ゴールをあげている攻撃陣との相乗効果で5位につける難敵・鳥栖との一戦を前に、ロティーナ監督は決断を下した。先発にイニエスタを復帰させ、大迫をリザーブに回した。 タイで集中開催されたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージに、コンディション不良だったイニエスタは帯同していない。公式戦での先発は、ロティーナ監督の初陣だった4月10日のセレッソ大阪戦以来、6試合ぶりだった。 その間、ロティーナ監督は大迫を最前線で重用してきた。ベンチスタートは一度だけ。後半19分から途中出場した傑志(香港)とのACLグループステージ最終戦は、決勝トーナメント進出を決めた後の消化試合的な位置づけだった。 開幕から未曾有の不振に陥り、監督交代がすでに2度を数えている状況で、ロティーナ監督はタイでACLを戦いながら、自身の戦術を浸透させる臨時キャンプにあてた。 しかし、タイから帰国後の初戦だった8日のガンバ大阪戦でも0―2と敗れた。前半34分にセンターバック菊池流帆が一発退場。数的不利の状況で必死に踏ん張るも終盤に力尽き、開幕からの連続未勝利試合は4分け7敗と「11」に伸びた。 ACLを戦っている間に順位を最下位に下げた。J2降格への恐怖も忍び寄ってくるなかで、もう負けは許されない。十八番とする堅守の構築に加えて、ロティーナ監督は徹底してハイプレスを仕掛けてくる鳥栖への対策も用意してきた。 それがロングボールとショートカウンターだった。 ロングボールはベクトルを前へ向ける鳥栖を裏返す効果を生み、相手のお株を奪うショートカウンターは自慢の堅守を混乱させる。ハードワークが欠かせない戦い方で、38歳の司令塔イニエスタとボールを収めるタイプの大迫は共演させられなかった。 しかも陣容を見わたせば、前への推進力と馬力に長ける武藤が左ひざ内側側副じん帯損傷から復帰を果たしている。1トップに大迫ではなく武藤をすえ、後方の2列目に左から汰木、イニエスタ、郷家友太を並べる布陣が的中。ようやく手にしたリーグ戦初勝利の喜びを、6月に65歳になるスペインの知将はしみじみと噛みしめた。