高校サッカー準決勝、決勝が無観客試合に…悲願V狙う“4強”矢板中央は「無観客になると心細い」と不安も
県予選から数えて4試合ぶりに、後半の終了とチームの勝利を同時に告げる主審のホイッスルを聞いた。栃木県大会決勝から今大会の2回戦、3回戦と3試合続けてPK戦を制してきた矢板中央が、富山第一(富山)に2-0で快勝。前回大会に続く4度目のベスト4進出を決めた。 駒沢陸上競技場で5日に行われた第99回全国高校サッカー選手権大会の準々決勝。両チームともに無得点の均衡が破れたのは後半9分。まばゆいスポットライトを浴びたヒーローは、前半終了間際に本職のサイドハーフではなく、2トップの一角で投入されていた小川心(3年)だった。 自陣からMF星景虎(2年)が前線へ送ったロングボールに素早く反応。縦へ抜け出しながら、ペナルティーエリア直前で利き足の左足でボールを浮かせて富山第一のキャプテン、DF孝井捺希(3年)と巧みに身体を入れ替え、勢いそのままに左足を一閃。ゴール中央に叩き込んだ。 「あそこにボールがくると信じていたので。実際にボールがきた後は正直、何も考えていなかったというか、何か感覚でいっちゃっていて。気がついたらゴールが決まっていた、という感じでした」 勢いあまってピッチに倒れ込みながら、無意識のうちに両手でガッツポーズを作り、雄叫びをあげていた小川が歓喜の瞬間を振り返った。もっとも、素朴な疑問が残る。なぜ前半の段階からサイドアタッカーの小川が、本人をして「本当にびっくりした」と言わしめた最前線で起用されたのか。 「いつもは左サイドハーフで、途中交代で出る選手なんです。ドリブルが得意で、非常にいい攻撃のアイデアももっているんですけど、(初戦の)徳島市立戦ではまったくよくなかった。正直、次の試合で使えるのか、という不安なところもあったぐらいなんですけど」 矢板中央を率いて27年目で、無名校を全国大会の常連に育て上げた高橋健二監督(52)が試合後に思わず苦笑いを浮かべた。 後半開始から投入された、2日の徳島市立(徳島)との2回戦でスーパーサブ失格の瀬戸際に立たされていた小川は、翌3日の東福岡(福岡)との3回戦でMF唐橋玖生(2年)が途中交代した関係で、後半23分から急きょ出場。及第点のプレーで信頼を回復させていた。 迎えた富山第一との準々決勝。優勝経験のある強豪の前に、エースの多田圭佑(3年)と身長186cmの林廉斗(2年)を組ませた2トップが機能しない。ロングボールやロングスローを前線に当て、セカンドボールを拾って攻め込むパターンが封じられたなかで高橋監督が決断を下した。