高校サッカー準決勝、決勝が無観客試合に…悲願V狙う“4強”矢板中央は「無観客になると心細い」と不安も
新型コロナウイルスの影響で昨夏のインターハイも中止されたなかで、開催に踏み切られた今大会は観戦者を選手たちの保護者、メンバー登録されなかった部員を含めた学校関係者だけに限定してきた。しかし、全国高等学校体育連盟、民間放送43社とともに選手権を主催する日本サッカー協会は5日午後に、準決勝および決勝を完全に無観客で開催すると発表した。 「今年は声を出した応援ができないなかでも、Bチームや保護者の方々が見守ってくれていることが力になった部分があります。無観客になると心細いというか、環境が変わることに慣れていない部分はあると思いますけど、そのなかでも自分たちがやってきたことを貫いて勝ちたい」 キャプテンのDF坂本龍汰(3年)はまったくの静寂に支配された、未知の環境下での一戦に心細さがあると本音を打ち明けた。しかし、条件は対戦相手も変わらない。何よりも矢板中央には、ともに無得点で迎えた後半アディショナルタイムに痛恨のPKを献上し、最終的に優勝した静岡学園(静岡)の前に屈した悪夢にも例えられる敗戦を埼玉スタジアムに残したままになっている。 多田や1年生ながら守護神を拝命し、大活躍を演じたGK藤井陽登とともに前回大会の準決勝を戦い抜き、流した涙を1年間の糧にしてきたと坂本はしっかりと前を見すえた。 「去年ベスト4で負けた悔しさをもっている選手が何人かいるし、最後の際の部分であるとか気の緩みというのは反省点なので。そこを自分が中心となって全体に声をかけて、最後まで気を抜かないようにしていきたい。準決勝までの3日間でコンディションを上げつつ、相手の分析などにも時間をかけて、目指してきた日本一へ、あと2つ勝つために気持ちを上げていきたい」 宇都宮短大附属との栃木県大会決勝、徳島市立との2回戦、東福岡との3回戦とPK戦で無類の強さを発揮してきた藤井は、実は青森県十和田市で生まれ育った。青森山田出身の木村大地GKコーチの誘いを受けて、打倒・青森山田を誓って矢板中央に進学した経緯がある。 「(藤井)本人が入学してきた意志が、これでようやく実現するのかな。山田には一昨年の準々決勝で負けて、去年の夏の遠征でもやられているので、挑戦者の気持ちで初めての決勝進出をかけて戦いたい」 現状では埼玉スタジアムで開催される予定の準決勝へ、高橋監督も最後は静かに前を見すえた。ピッチのなかだけに目を向ければ、3試合で1失点という伝統の堅守、指揮官のとっさの決断から生まれた小川という秘密兵器、そして気合い十分の守護神・藤井と矢板中央には追い風が吹いている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)