高校サッカー準決勝、決勝が無観客試合に…悲願V狙う“4強”矢板中央は「無観客になると心細い」と不安も
「流れを変えるためにも、小川をフォワードへコンバートして活性化を図ろうと。本当にいい飛び出しから点を取ってくれた。サイドハーフよりもフォワードの方がいいんじゃないか、と思うぐらいです」 県大会ではサイドハーフとフォワードの二刀流でプレーしていた小川へ、選手権開幕を前に高橋監督は前者一本でいくと告げていた。試合中に前言を撤回したのは日々変化する教え子たちの状態を、その性格やストロングポイント、対戦相手との相性も含めて見極め続けていた証となる。 そして、小川が数分間プレーしただけで迎えたハーフタイム。高さと強さを兼ね備えたセンターバック、身長187cm体重80kgの新倉礼偉(3年)と身長188cm体重80kgの島崎勝也(2年)が富山第一の勢いをはね返し続け、スコアレスで折り返したロッカールームに指揮官の檄が響いた。 「劣勢のままで終われないぞと。矢板中央らしいサッカーをしようと。守備陣だけではなく、攻撃陣に奮起してほしかったので、カウンターとセットプレーで点を取りにいく姿勢を出そうと言いました」 先制点はロングボールに抜け出した小川がカウンターから決め、後半25分の追加点はセットプレーのひとつであるロングスローのこぼれ球を、攻め上がっていた新倉が右足で押し込んだ。相手をシュート4本で零封する理想的な試合運びのなかで、小川というラッキーボーイ的な存在も生まれた。 まだ見たことのない、悲願でもある決勝の舞台へ。4度目の挑戦にして最高の状態が整いつつあるなかで、ピッチの外では第3波が猛威を振るい続ける新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県に7日にも緊急事態宣言が発出される見通しとなった。 優勝候補筆頭の青森山田(青森)と対戦する9日の準決勝と、11日の決勝の舞台はさいたま市の埼玉スタジアム。ニュースで緊急事態宣言発出への動きを見聞きした高橋監督は、偽らざる思いを語る。 「いろいろな方々の協力があって、このコロナ禍で大会を開催してもらえたことに感謝の気持ちをもって臨もうと、選手たちには話してきました。大会期間中に緊急事態宣言が出る可能性があるなかで、活動ができるのかどうか、大会が続くのかどうか。本音は開催してほしい気持ちがありますけど、開催できない状況になってもいろいろな思いを選手とともに受け止めていきたい」