はやぶさ2は「成功の基準を達成」JAXA会見6月29日(全文1)
リュウグウは空隙の多いがれき天体
リュウグウは空隙の多いがれき天体だということがまず分かりました。母天体が破壊されて、その断片が集まってできた、そういう天体なんですね。独特の、こま型という、こまを2つ重ねたような形状をしてますが、これは過去に非常に高速自転していた、表面の地滑りによって起こったっていうことが、並行して行われたシミュレーションなんかによる解析から分かってきています。それから表面は非常に暗いんですね。反射率が低くて、スペクトルには地域差が乏しい、比較的、均質だということです。南北には明確な色の差等もありまして、それもいろいろ面白いことを反映しているんですが、比較的均質で未分化な母天体であったっていうことが示唆されます。 それから結晶の中に構造として入ってる水、OH基という形で入ってる水が赤外吸収によって発見された。それが全面に広がっているということで、そうした水を含む鉱物、それが主成分だということが示唆されました。それから岩がいっぱい転がっていて、これはタッチダウンに対して大きな障害になったわけですが、その岩は、実は隙間だらけで、熱伝導率が低いものだと分かったと。それは何を意味するかというと、この天体が、氷と砂が混じった天体として生まれて、その後、氷が蒸発してミクロな空隙をつくったっていうようなことが分かってきました。 それから右側になりますが、表層の固着力、先ほど申し上げたようにSCIの実験から非常に弱いっていうことが分かってたんですが、一方で、クレーターの中にちょっと底がへこんだピットというものが作られたっていうことから、地下は少し強度が強い、そういった層が存在して、そのことによって表面が地滑りを起こして、こま型をつくるっていうようなこともシミュレーションの比較から分かってきました。
非常に始源的な試料をわれわれは手にした
表面は太陽に照らされているので少し赤くなってくるんですが、そういった宇宙風化の証拠もあり、これも今後、地上分析の比較が待たれるところです。 起源なんですが、リュウグウは実は内側の小惑星帯にある暗い表面を持つ小惑星の衝突によって壊れた族というのがあるんですが、それとスペクトル的に非常に近いということが証明されました。ただし、その中には少し、全然タイプの違う小惑星の破片も含まれていて、おそらく母天体にそういう性質の違う天体がぶつかって壊れて、その破片が集まってリュウグウはできたんだろうという、そういうシナリオがうかがわれます。さらに「はやぶさ2」と同時期にNASAが打ち上げた、アメリカのNASAが打ち上げたOSIRIS-RExがBennuという、きょうだいのような天体に訪れているんですが、それと比較するという非常に重要なことができまして、共通点とともに相違点も幾つかあって、例えば水の吸収の具合であるとか、あるいは宇宙風化の進行する方向なんていうのに違いがあるというようなことも分かってきました。 地上分析なんですが、「はやぶさ2」は2020年の12月6日に地球に帰還しましてリュウグウの試料を落としたわけなんですが、それがJAXAの宇宙科学研究所に設置された施設において、初期記載、フェーズ1キュレーションということが行われました。試料の一部が6つのサブチームからなる「はやぶさ2」初期分析チームと、岡山大学および海洋研究開発機構、JAMSTECの高知コア研究所の2つのフェーズ2キュレーション機関へ分配されました。 初期分析チームは、「はやぶさ2」の科学目的の達成のために、専門サブチームが分担して計画された高精度の分析をやって、試料の多面的な価値を明らかにすることを目的としています。一方、フェーズ2キュレーション機関っていうのは、それぞれの特徴を生かして総合的な分析フローに基づいて試料のカタログを作成して、試料の特性に応じた測定、分析により、試料が持つ潜在的な価値を明らかにしていくと。それぞれ異なった目的を持ち、それでリュウグウの試料が持つ全体的な価値を明らかにしていこうというのがプロジェクトの戦略なわけです。 初期分析チーム、それからフェーズ2キュレーションの成果論文っていうのは、今後さらに発表されていきますので、全ての初期成果が公表されたのちに、あらためて「はやぶさ2」サイエンス全体の総括を説明する予定です。ですので今日では、今のところ出ている成果のところで地上分析の結果をここのスライドにまとめていますが、1つ重要なことは、非常に始源的な試料をわれわれは手にした。 【書き起こし】JAXA会見6月29日 全文2に続く