はやぶさ2は「成功の基準を達成」JAXA会見6月29日(全文1)
惑星間往復航行に成功しているのは日本だけ
次のページいきまして、「はやぶさ2」の成果、工学的な部分をまとめますと、これ、世界初という切り口だけが必ずしもいいわけではないんですけども、こういう言い方が非常に整理としてはいいので申し上げた9個の世界初ということをあらためて書かせていただいて、その下に、これ、太陽系探査の技術として重要という意味では、これは離着陸を含む惑星間往復航行ですね。これ今までに、実際に実績として成功してるのは日本だけという、現状は、今そういう状況です。もちろん来年になるとオサイリス・レックスが帰ってきたりとか、そのあとも幾つかの国がこういうサンプルリターンを計画していますので、じきに日本だけという状態ではなくなりますが、少なくとも先鞭をつけたのは、「はやぶさ」、「はやぶさ2」と、2つのミッションにわたって日本であったということは技術的には重要なことかなと思っています。 それから右半分に書いてあることは、これは「はやぶさ」からの継承ですね。「はやぶさ」1号機があれだけ苦難の旅があったから、その結果として「はやぶさ2」は大成功を収められたというふうに思っています。「はやぶさ」でうまくいかなかった部分を含めて真摯に技術者のメンバーが、「はやぶさ」2号機に反映して心血を注いでくれたと、その結果だと思っています。 「はやぶさ」1号機が目指していたことっていうのはそこに書いてある4大項目で、これは小天体サンプルリターンに必要な4種の神器っていうんですかね。日本として、これをやればサンプルリターンができると宣言していたもので、イオンエンジンの技術、それから光学情報を用いた自律的な天体への接近と着陸、3番目は微小重力下の天体表面の標本採取、4番目として惑星間からの直接大気圏突入ですね。
小惑星科学以外の科学成果も獲得
これ、もちろん「はやぶさ」1号機ができたから、「はやぶさ」2号機としても自信を持って、「はやぶさ2」をつくり上げることができたし、「はやぶさ2」のあともこの技術は継承されるということで、これを継承して発展することができたということが大きいです。 もちろんこの4つだけじゃなくて、一番下に書いてあることとして、日本としては惑星探査、非常に貴重な機会なので、いろんな、巡航中、結構長い、合計4年以上ありましたが、その機会を利用した工学実験成果とか新しい運用技術、それから小惑星科学以外の科学成果、こういうことを獲得することにもつながりました。こういうことが成果かなというふうに考えております。工学からの、工学的な成果については、いったんこれでご説明を終わりにして、渡邊先生にバトンタッチしたいと思います。 渡邊:では続いて、理学の成果について渡邊のほうから簡単に紹介したいと思います。まず大きく3つ、ここでは挙げてまして、世界初のC型小惑星ランデブーに成功し、その場計測を行ったということで、リュウグウの母天体、これは惑星の元になった微惑星と考えられるわけですが、それは氷を含む天体であった、氷天体であり、微惑星が太陽系の外側から内側へかなり大きく移動したってことを初めて実証したという大きな成果を上げました。リュウグウは母天体の破片が再集積して形成されたラブルパイル天体で、その後、高速自転をして現在のこま型といわれる独特の形になったと。そういったことが分かってきました。 また、世界初の小惑星の衝突実験を成功させて、想定を大きく上回る大きさのクレーターができた。リュウグウは母天体の破片が緩く集まった天体だと申し上げましたが、その表面の年代は、実は結構若く、粒子間のくっつき合う力っていうのは非常に弱くて、その上にある岩も非常に隙間が多くて壊れやすいっていうことが分かりました。これは水や有機物が地球にどういうふうに輸送されてきたのか、そういったことを制約する成果です。 最後に帰還試料ですが、その分析が今進んでいますが、水が関与して変質した鉱物が主体で、多種の有機物を含むということが分かりました。これまで人類が手にした最も資源的な宇宙試料だと言えます。これは太陽系の元素存在度、それから同位体の組成ですね。それに対する新たな標準的なデータとなり、太陽系形成論の物質化学的基盤を与える、非常に貴重なものだと期待されます。