地球帰還へ 探査機「はやぶさ2」がリュウグウで得た“宝物”
小惑星探査機「はやぶさ2」は、昨年6月に到着して以来行ってきた小惑星「リュウグウ」での探査を終え、地球への帰還の途に就きました。リュウグウで採取できたとみられる岩石や砂などのサンプル物質を手に、2020年末に地球に戻ってくる予定です。はやぶさ2は、1年5か月間にわたる探査で、初代はやぶさができなかったこと、いくつかの「世界初」の試みを成功させてきました。どのような成果をあげたのか、あらためて振り返ってみましょう。(科学ライター・荒舩良孝) 【図表】「はやぶさ2」小惑星に到着 初代「はやぶさ」との違いは?
リュウグウに接近して「コマ型」の惑星と判明
2019年11月13日午前10時5分、はやぶさ2は、化学推進系スラスタの噴射を実施し、秒速約10センチの速さでゆっくりとリュウグウから離れ始めました。はやぶさ2は1年5か月ほど滞在したリュウグウを後にして、地球帰還への第一歩を踏み出しました。はやぶさ2がリュウグウを出発するタイミングは11月から12月あたりで考えられていましたが、想定より早くなりました。プロジェクトマネージャである津田雄一さんは、「リュウグウ周辺で科学データが十分に得られたことと、出発準備が整ったことの2つの条件がそろったから」と説明しました。 はやぶさ2がリュウグウに到着したのは、2018年6月27日のことです。それからリュウグウの付近で探査を続けてきました。地球からの観測ではリュウグウの形状まで知ることはできませんでした。そのためはやぶさ2が近づくまでリュウグウがどんな形をしているのかまったく分かっていませんでした。到着の直前のリュウグウの観測によって、意外にも赤道部分が盛り上がっているコマ型の小惑星であることが判明したのです。 これまでに発見されていたコマ型小惑星は、自転周期が4時間以下と高速に回転するものしかありませんでした。リュウグウは自転周期が7.6時間と比較的ゆっくりと自転しているにもかかわらずコマ型をしている不思議な天体だったのです。そのおかげで、はやぶさ2は世界で初めてコマ型小惑星の探索を行う探査機となりました。ミッションマネージャである吉川真さんは「リュウグウの形をはっきりと見た瞬間に、小惑星探査の新たな1ページが開けると確信に近いものがありました」と語ります。