日銀・黒田総裁会見10月29日(全文1)景気は持ち直している
緩和政策長期化の功罪は
共同通信:共同通信の【イノウエ 20:49】といいます。民間企業の動きになるんですが、第一生命保険がきのう、企業年金の予定利率を1%引き下げると発表しました。今年春には大手金融が軒並み定期性預貯金の金利を引き下げるという動きもありました。いずれも今の超低金利の動きを反映したものだと思います。 こういうふうに金利動向がわれわれの生活に影響を与えることが多くなっているんですが、今のコロナ禍の政策対応うんぬんではなく、この緩和政策が長期化している功罪についてあらためて総裁の見解をお願いします。 黒田:この点はいつも申し上げているとおりでありまして、金利を含めた金融緩和というものは、預金金利だけを見れば家計への金利収入を減らすっていうふうになるわけですけれども、金融政策全体として経済活動を支え、雇用を支え、雇用者の特にそうでなければ大きく下落するはずのものをそうでないようにするといった意味も含めて、金融政策全体としては家計にとってもプラスの影響を及ぼしているというふうに考えております。 それから金利につきましては、日本と限らずどこの国でも非常に名目金利は下がっているわけですけれども、日本の場合は特に物価上昇率が非常に低いために、実質金利で見ると名目金利ほどの諸外国との格差があるわけではありません。従いまして、金融政策全体として家計や企業にプラスの影響を及ぼしているというふうに考えております。
ETF政策について当面の措置をどうするのか
時事通信:時事通信の【サトウ 00:23:00】と申します。ETFの購入についてお尋ねしたいんですけども、日銀の残高が積み上がってきて、市場機能のゆがみであったり、日銀自身の財務リスクみたいな指摘も出ておりますけれども、現在12兆円っていうのは当面の措置ということにしていますが、ETFの政策に関する、出口っていうか、当面の措置をどうするかっていうことも含めて、現段階で総裁のお考えをお聞かせ願えればと思います。 黒田:従来から申し上げておりますとおり、ETFの買い入れっていうものは株式市場のリスクプレミアムに働き掛けることを通じて、金融市場の不安定な動きなどが企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止すると。そうしたことを通じて、経済物価にプラスの影響を及ぼしていくということを目的としているわけであります。 ご案内のとおり感染症の影響によりまして、2月下旬以降、市場は大きく不安定化いたしましたけれども、日本銀行によるETFの買い入れは市場の不安定な動きを緩和する効果があったというふうに考えております。 もちろんこの間もETFの買い入れを適切に実施していくために、さまざまな工夫を行ってきております。例えばは個別銘柄の株価に偏った影響ができるだけ生じないように、幅広い銘柄から構成されるトピックスに連動するETF買い入れのウエートを高めてまいりました。 また、コーポレートガバナンスの面でもスチュワードシップコードの受け入れを表明した投資信託委託会社により適切に議決権が行使される扱いとなっております。 また、ETF買い入れの持続性を高める観点から、市場の状況に応じた柔軟な買い入れを行ってきております。先ほど申し上げたように12兆円を上限として、この範囲内で市場の状況において弾力的な買い入れを実施してきております。こうした下で、ETF買い入れというのはこれまで大きな役割を果たしてきておりまして、引き続き必要な施策であるというふうに考えております。 【書き起こし】日銀・黒田総裁会見10月29日 全文2へ続く