図書館に行くよりもずっと集中できる…齋藤孝が「1日に平均2回」は立ち寄る"最強の作業スペース"
集中して作業するにはどうすればいいのか。明治大学の齋藤孝教授は「図書館を利用する人は多いが、思考に向く場所ではないように感じる。むしろ雑音がある限られた空間のほうが不思議と思考に集中できる」という――。 【写真】齋藤孝教授が「1日に平均2回」は立ち寄る“最強の作業スペース” ※本稿は、齋藤孝『「気づき」の快感』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。 ■美術館でわが子のセンスを養う一言 気づき力を高めるためには、身銭を切る習慣を持つことも大切です。 子どもが小さかった頃、家族で美術館に行ったとき、私は次のように声をかけてから館内に入ることがありました。 「ここに飾ってある絵の中から、どれか3枚買ってあげるよといわれたら、どれを選ぶ?」 何もいわれなければただ絵を見るだけですが、「3枚買ってもらえる」といわれると、子どもは真剣な目で作品を見るようになります。真剣に見る中で、自分の好みやセンスを培っていきます。 「買うとしたら」という想定だけでも、見る目が変わります。 美術館では、展示スペースを出たところにミュージアムショップが併設されています。私は3枚の絵を買うわけにはいかないので、子どもが選んだ3枚の絵をモチーフにしたマグカップやTシャツを購入しました。 本に関しても、高校時代にお小遣いを貯めて手に入れた文庫本の内容は、今でも強く脳に刻まれています。図書館で本を借りるのもよいですが、身銭を切ると、本との関わりが深くなるのは間違いありません。 そもそも私自身は、図書館で借りてきた本を読むことがうまくできません。図書館でしか借りられない資料もあるので、図書館の存在はありがたいと感じています。でも、借りた資料はすべてコピーしてからでないと、どうしても読めないのです。借りた本が読めない理由の一つは、本に書き込みをする習慣があるからです。でも、それ以上に、借りた本を返すと、読んだ記憶が失われてしまうような感覚があります。本を自分の所有物にしないと、心が落ち着かないのです。 ■あえてBlu-rayやCDを購入するワケ 本を読むにはそれなりのエネルギーを要します。自分なりに解釈すると、エネルギーを使った分、読んだという事実を記念する品を求めているのだと思います。 文庫本なら1冊せいぜい数百円ですから、数百円で記念品が手に入ると思えば安いものです。購入して自由に線を引き、自分の物にしたほうがいいに決まっています。 また、身銭を切るわけですから、買うときにかなり本を吟味します。そして、買ったからには損をしたくないと思い、本の内容を自分の血肉にしようと、真剣に読むはずです。借りた本では発揮できない集中力でもって読破できるはずです。 ですから、私は国語の教師を目指す学生に向けて、次のようにアドバイスしています。「図書館で本を借りるのもいいよ。でも、国語教師を目指すなら『論語』の文庫本くらいは1冊購入してもいいんじゃないかな。そのくらいの覚悟を持つことが大事だよ」 今は、映画や音楽もサブスク(サブスクリプション)で見放題・聴き放題の環境が整っています。私もサブスクサービスを利用しており、大変便利だと感じています。でも、作品によってはあえてBlu-rayやCDを購入しています。映画や音楽の内容を自分に刻み込むには、所有物にすることも大切なのです。