過去最悪の下落幅を更新…ジム・ロジャーズが危惧したとおりになった日本の株式市場
「失われた30年」の言葉どおり、日本の株式市場は長きにわたり停滞していた。しかし2024年3月、日経平均株価は大台とも言える4万円を初めて超えるまでに上昇、その後少し下げたものの、12月にもまた4万円台を突破している。これは本物の成長なのか、一時的な熱狂に過ぎないのか。世界3大投資家ジム・ロジャーズは、日本の持続的な成長のためには、解決しなければならない“根本的な問題”があるという。 【詳細な図や写真】図:日経平均株価(出典:日本経済新聞「日経平均株価:指数:スマートチャートプラス:日経電子版(nikkei.com)」より引用)
※本記事は『「日銀」が日本を滅ぼす 世界3大投資家が警告する日本の未来』を再構成したものです。
日銀の金融政策で日本の株式市場はどうなった?
日銀の金融政策が、日本企業への投資を検討している海外の投資家に、どのような影響を与えているのか。その結果、日本の株式市場はどのような状況になっているのか。まずは、この点について論じたい。 「失われた30年」との言葉で表現されるとおり、ここ30年、いや、正確には35年近く、日本の株式市場は衰退していた。実際、2010年ごろには、日経平均株価は1万円を切るまでに下落していた。 ところが2012年以降、日本の株価はじわじわと上昇基調に転じる。そして2024年3月には、大台とも言える4万円を突破するまでに上昇した。日経平均株価はさらに上昇を続け、一時は4万2,000円台まで上昇し、史上最高値を更新し続けることになる。 長きにわたり停滞を続けていた日本企業の株価が、なぜ最近になって、最高値を更新し続けるまでに上昇したのか?
世界中の投資家から注目されている日本のマーケット
理由はさまざまある。まずは、日銀による金融政策の変化、正常化だ。金融緩和政策を推し進めていた黒田東彦総裁に代わり、新しく植田和男総裁が日銀のトップとなった。植田総裁は17年ぶりに利上げを実施、金融政策の大きな転換を決める。 このような植田総裁の金融政策の正常化を、海外の投資家は評価した。その結果、多くの海外投資家が日本企業の株を購入したことで、日経平均株価が上昇する。上昇傾向を見た他の投資家も日本株を購入するという流れが生まれ、一気にここまで値が高まったと考えられる。 私自身が投資家だからよく分かることでもあるが、好むと好まざるとにかかわらず、多くの投資家は上昇相場が好きである。目の前に上昇しているマーケットがあれば、飛びつく傾向にある。 日本のマーケットが世界中の投資家から注目されているのは、さまざまなニュースを見ても分かる。たとえば日銀の金融政策正常化の決定が下された後、日本のメガバンクの海外拠点が開催した海外投資家向けのセミナーには、多くの人が集まった。今回の金融政策の詳細や、今後さらに利上げは進むのかなど、積極的に質問が飛び交い、関心が高かった。 このようなセミナーはイギリスなど欧州を中心に、香港や私が暮らすシンガポール、もちろん東京でも開催された。海外に向けてはネット配信やビデオカンファレンスというかたちで行われ、投資家からはセミナー終了後もメールやチャットなどで、問い合わせが相次いだと聞いている。 改めて、日本の株式市場の状況について考察してみたい。確かに、日本の株式市場は近年、驚異的な成長を遂げている。具体的な数字を見ても、過去10年から15年で3~4倍にもなっているからだ(図参照)。 このような上昇率は、多くの投資家やエコノミストたちを驚かせている。一見すると、日本経済の健全性を示す指標のようにも思える。 今回の植田総裁が実施した金融政策の転換は、これから大きく日本が変わっていくターニングポイントとなると考えている。短期的な政策ではなく永続的に続くことで、新たな投資と日本の繁栄につながることを私自身、ひとりの投資家として期待したい。 しかし、今回の金融政策が果たして本当に恒久的なものなのか。永続的な変化を生むかどうかを考えると疑問が残る、というのが正直な意見だ。