日銀・黒田総裁会見10月29日(全文1)景気は持ち直している
下振れリスクのほうが大きい
今回の見通しは、広範な公衆衛生上の措置が再び導入されるような感染症の大規模な再拡大はないと想定しています。加えて、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、金融システムの安定性が維持される下で金融仲介機能が円滑に発揮されると考えていますが、これらの点には大きな不確実性があります。その上で、リスクバランスについては経済・物価のいずれの見通しについても感染症の影響を中心に、下振れリスクのほうが大きいとみています。 日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続します。また、引き続き新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムや、国債買い入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給。ETFおよびJ-REITの積極的な買い入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてまいります。 その上で、当面新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しております。以上です。
リスクが顕在化した場合の政策対応は
日本経済新聞:それでは幹事社から2問お願いいたします。まず1点目が、海外発のリスク要因についてです。欧米で再び新型コロナの感染者が増えておりまして、経済活動を制限する動きも出てきているかと思います。また、11月3日に米大統領選、アメリカの大統領選というものもあって、大きなイベントも控えているところかと思います。海外発の、今回の展望レポートでは海外経済の持ち直しということをみていらっしゃったかと思いますが、景気の下振れであったり市場混乱のリスクというものが従来の見通しより高まっていないのかどうか、総裁のご見解をお願いします。また、リスクが顕在化した場合に政策対応としてどのようなことを考えていかれるのかということをお願いします。これが1点目です。 2点目は、企業の資金繰り支援策についてです。来年の3月にこの特別プログラムが期限を迎えると思いますが、総裁はかねて、必要なら延長するという方針を示されていたかと思います。今回はその必要性がまだないということで延長を決めなかったということかとは思いますが、現時点でどの程度この必要性が高まっているのか否かというところのご認識と、あと判断材料とかタイミング、今後延長する場合、どの辺りを見ていくのかというところについても教えてください。よろしくお願いします。 黒田:まず第1点ですね。海外で感染症がまた増えているとか、あるいは大統領選といったイベント等々についてお尋ねがございましたので、これについてまずお答えいたします。今回の展望レポートでもお示ししていますとおり、先行きの経済の見通しについては引き続き不確実性が高く、下振れリスクが大きいということは認識をいたしております。ご指摘のように欧米を含め世界的に感染拡大が収まっておらず、欧州の一部の国では公衆衛生上の措置が強化されています。感染症の帰趨や、それが内外経済に及ぼす影響について不透明感が強い状況が続いているというふうに考えております。また、ご指摘の政治的なイベントっていうものも控えております。国際金融市場を見ますと一頃の緊張は緩和しておりますけれども、やはり経済の不透明感が強い下で、なお神経質な状況にありますので、今後の動向を注視していく必要があるというふうに考えております。 このように感染症の影響を中心に先行きの経済金融には大きな不確実性がありますので、日本銀行としては引き続き「3つの柱」による現在の金融緩和措置をしっかりと実施していくつもりでありますし、その上で、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じるという考えでございます。