日銀・黒田総裁会見10月29日(全文1)景気は持ち直している
Go Toキャンペが物価を下押ししているが
NHK:総裁、NHKの【ナガノ 00:16:39】です。2点、簡潔にお伺いします。1点目は物価についてです。足元、新型コロナウイルスの需要の低迷ですとか、エネルギー価格の下落によって、物価に下押し圧力が掛かっておりますけれども、展望レポートでもお示しになっているように、やはりGo To キャンペーンの影響というのがさらに物価に下押し圧力を掛けているというような状況かと思います。 加えて、将来的に携帯電話の通話料金などが値下げされますと、これもまた物価にとってはうれしい消費者の方もいらっしゃるとは思うんですが、物価にとっては下押し圧力が掛かるんだろうというふうに思うんですね。 日銀は、政府との共同声明に基づいて、これも踏まえて2%の物価上昇率の目標というのを掲げてらっしゃるわけですけれども、こうした政策が物価に下押し圧力を掛けている、掛かっている状況について、総裁どのようにお考えでしょうか。ご所見をお願いしたいと思います、これが1点目です。 もう1点目は麻生副総理兼財務大臣もおっしゃっておられますけれども、10万円の一律の給付によって、現預金が積み上がっている状況かと思います。これ、必ずしも消費喚起策というわけではないんですけれども、やはり巨額の財政出動に見合った経済対策としての効果というのが、現時点で発現されているのかどうかということについては、若干どうかなというふうに思う向きもあろうかと思うんですね。これについて総裁のご所見、お伺いできればと思います。以上です。
全体の動向を規定するものではない
黒田:まず第1点、先ほど申し上げたように、消費者物価の前年比が当面、感染症、あるいは既往の原油価格下落、Go To トラベル事業の影響などからマイナスで推移するというふうに見ているわけであります。ご指摘の携帯電話料金の値下げ、あるいはGo To トラベル事業などが、短期的に物価を押し上げるということは、そういった料金の引き下げということを通じて、ありうるとは思うんですけれども、あくまでも特定部門における一時的な価格変動でありまして、一般物価の全体の動向を、趨勢を規定するものではないというふうに考えております。 それから2番目の点は、コロナウイルス感染症の拡大、それから緊急事態宣言その他の状況の下で、個人に一律10万円を支給するというのは、これはいわば緊急避難的な所得の補助ということで、意味はあるというふうに思っております。ただ、その結果のデータを見ると、確かに所得はその分、非常に大きく増えているんですけれども、消費は、必ずしも、特にサービス消費などが増えてないわけですので、その分貯蓄にまわって、貯蓄率がかなり上がっているということは事実なんですけども、それはそれとして、一種の安心感を与えて。だから今後の消費のサポーターにもなり得ると思いますので、あまり具体的に政府の政策についてうんぬんするつもりはありませんが、今言ったような一定の、特にああいう時期において効果があったのではないかというふうに考えております。