円安下の海外留学「脱米国」の動き “日本は縮小傾向”変わる親の意識 #生活危機
「円安だからとあきらめないで」奨学金に活路
「たとえば」と上奥さんが言う。「大学が提供する奨学金と組み合わせて、学費や寮費、食費を含め総額1万6000ドル(1ドル130円で約208万円)の低予算で行けるところもあります。ケンタッキー州、ミズーリ州など地方の大学ではありますが」
その上で、米国の大学は転校も認められているので、まず学費の安い大学に入り、奨学金を得る見込みが立ってから、より学費の高い4年制大学に移ることも可能だと提案する。 日本も海外への留学生の増加に力を入れ、奨学金を手厚くしている。その柱の一つが、官民協働の海外留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」だ。留学支援制度「日本代表プログラム」では民間企業をはじめ、団体、個人からの寄付を元に、大学生や高校生に返済不要の奨学金を支給する。2014年の開始以来、大学生6074人、高校生3397人を採択してきた。 広報を務める西川朋子さんは、選考基準として「熱意、独自性、好奇心」を重視すると話す。 「成績や語学力は不問です。今までのスコアより今後の留学に対するやる気があるかどうかが大事。留学先では必ずしも学校に通う必要はなく、たとえば1年間シリコンバレーでインターンとして働いてもいいし、半年は学校に通って残りの半年は国際機関でボランティアという計画でもいい。自分で学びをプロデュースし、留学計画を自由に作ってもらうのが『トビタテ』の特徴です」
同奨学金では、現在、「新・日本代表プログラム」の奨学生を募集中で、渡航費などの準備金として25万円を支払うほか、授業料がかかる留学生には30万円、また奨学金として留学期間中は月額16万円を支給する(アジア圏等一部地域はそれぞれ15万円と12万円)。このトビタテに加えて、他の奨学金を見つけて留学に臨む学生も少なくないという。いま日本には留学関係で200程度の奨学金制度があり(独立行政法人日本学生支援機構の2021年7月の調査に基づく。現在募集中でないものも含まれる)、ネット上で自分に合った奨学金を検索できるサイトもある。自治体が地元の学生を支援する奨学金もあれば、条件は厳しくなるが、支給額の上限を設けない孫正義育英財団支援金や、年間9万5000ドル(米国)ないし6万5000ポンド(英国)という高額を支給する柳井正財団海外奨学金のようなプログラムもある。 実は冒頭に紹介した米国へ留学中の坂井さん、原田さんも「トビタテ生」だ。坂井さんはトビタテの奨学金がなければ留学をあきらめていたと話す。 「留学できなかったら就職するつもりで、就職活動も実際していました。奨学金のおかげで円安の影響も緩和されています」 留学エージェントとして支援を行う株式会社留学ジャーナルの代表取締役副社長の加藤ゆかりさんは、親世代の意識が変化してきたと感じている。