新型出生前検査「陽性」産むことを決めた母親 批判集まる認定外施設、検査結果をどう理解するべきか?
2022年9月、「新型出生前検査」(NIPT)を受けられる施設数が大幅に拡大した。日本医学会の委員会が「認定」する施設が増えたためだ。今年はNIPTの導入から10年。この間、「認定外」の施設も急増し、多くの妊婦が利用してきた。だが、認定外施設には数々の批判が寄せられている。なぜ認定外は批判されてきたのか。認定制度に問題はなかったのか。「陽性」の検査結果を受け取った妊婦はどう動いたのか。当事者や医療関係者、認定外事業者らを取材した。(文・写真/ノンフィクション作家・河合香織)
認定外を選んだのは「全部調べたかったから」
検索結果のウェブページを開くと、「生存不能」という文字が目に飛び込んできた。さやかさん(40)はおなかの子を諦めるしかないと思った。 2021年12月、東京都心部。さやかさんのもとに郵送されてきた新型出生前検査(NIPT)の結果には、8番染色体の箇所に「陽性」とだけ記されていた。慌てて8番染色体異常についてネット検索をしたが、そこに希望を見いだせる情報はなかった。 陽性だった場合の連絡先に電話をかけてみると、検査を受けたAクリニックの院長からは「とにかくNIPTの結果だけではなく、確定的に判断できる羊水検査を受けて考えましょう」という言葉が返ってきた。 さやかさんがNIPTを受けたのは、いわゆる「認定外」施設だった。
妊婦の血液から胎児の染色体や遺伝子の異常の有無を調べるNIPT。採血だけで調べられ、従来の母体血清マーカー検査よりも精度が高いといわれている。日本医学会が認定した施設で2013年から実施されてきたが、導入から間もなく、認定を受けずにNIPTを行う「認定外施設」が急増した。認定施設で検査できる疾患は3種類の染色体だけなのに対し、認定外施設の多くは全ての染色体を検査対象とする違いがある。 さやかさんが「認定外」を選んだのは、「調べられるものは全部調べて納得したかった」からだった。 陽性結果が出た後、さやかさんはかかりつけの産婦人科医に、羊水検査を待たずに中絶しようと思うと話した。だが、医師は「早まらないで確定検査を受けて」と言い、超音波検査や羊水検査などの出生前検査を専門とするFMC東京クリニックを紹介した。