円安下の海外留学「脱米国」の動き “日本は縮小傾向”変わる親の意識 #生活危機
英国を除けば、欧州の大学の学費はおおむね米国より安い。ドイツのように自国の学生のみならず海外からの留学生に対しても公立大学の学費が無料という国もある。 留学生にとって欧州の大学の利点は学費だけではないと語るのが、関西国際大学国際コミュニケーション学部教授で、副学長の芦沢真五さんだ。
「最近では欧州のほとんどの大学が、英語で単位を取得できる講座を設けています。それだけでなく学術レベルでもかなり向上しています。最先端のAI(人工知能)技術を学びたいなど特定の目的があるなら別ですが、学部レベルの教育ならば、欧州の大学教育の質は北米と比較して大きな差はないのでは。英語圏でない国でも正確でわかりやすい英語を話す教員も多いし、オランダの大学生は5カ国語を使いこなす人もいます。そういう多言語環境で学べることも欧州留学の魅力です」 さらに、留学先としてアジア圏の注目度も高まっている。一般社団法人海外留学協議会理事(JAOS)・事務局長の星野達彦さんによれば、近年もっとも注目されているのはマレーシアだ。
「マレーシアの大学は、基本的にすべて英語で授業を受けられます。マレーシアで2年間勉強し、残りの1年間は(英国やオーストラリアの)提携先の大学で勉強して、卒業時に二つの学位を取得することもできる。もちろん学費、生活費とも日本より断然安い」 日本人の留学先が米国以外にも広がったのは、ここ20年のことだという。当初はカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど英語圏の国が中心だったが、近年では欧州、そしてアジア圏まで選択肢が拡大した。 では今後、円安やインフレが続く限り、米国に留学できるのは一部の富裕層くらいなのだろうか。前出の全研本社の上奥さんは「そんなことはない」と否定する。「米国には返済不要の奨学金を用意する大学がかなりある」からで、国内外の奨学金をうまく組み合わせれば、ある程度の費用を工面できると強調する。