なぜヤクルトは“史上最高の日本シリーズ”を20年ぶりに制することができたのか…入念な準備とコミュ力高い高津監督“神采配”
プロ野球の日本シリーズ第6戦が27日、ほっともっとフィールド神戸で行われ、ヤクルトが延長12回の激戦を制してオリックスを2-1で下し、対戦成績4勝2敗で20年ぶり6度目の日本一を手にした。後のないオリックスは、先発の“5冠エース”山本由伸(23)が9回を141球6安打11奪三振1失点に抑える熱投を見せたが、ヤクルト投手陣も踏ん張り、延長12回二死二塁から代打の切り札、川端慎吾(34)がレフト前に決勝タイムリーを放ち、異例の3イニング目に突入していた守護神のスコット・マクガフ(32)が、その裏を抑えて、高津臣吾監督(53)が10度宙に舞った。セ・リーグが日本一を制したのは9年ぶり。またシリーズMVPには、司令塔として投手陣をリード、6番打者としても.318と活躍した捕手の中村悠平(31)が選ばれた。6試合中5試合が1点差ゲームという史上稀に見る感動と興奮のシリーズの勝者と敗者を分けたものは何だったのか。
代打の“切り札”川端が延長12回に決勝打
“史上最高のシリーズ”にふさわしいフィナーレだった。気温7度。極寒のほっともっとフィールド神戸での第6戦の試合時間は5時間になろうとしていた。延長12回。二死になって塩見を迎えたところで、中嶋監督が先に動く。それは富山から吉田凌への“1人1殺”の盤石の継投となるはずだった。だが、吉田凌の必殺のスライダーにキレがない。塩見に三遊間を破られ、今度は高津監督がとっておきの代打、川端をコールした。シーズンの代打で30本のヒットをマーク、実に代打率.366の元首位打者である。今回の日本シリーズの特別ルールは延長12回まで。オリックスは、あとひとつのアウトを取れば、負けはなくなり第7戦以降に逆転Vの希望をつなげることができていた。 カウント2-2からの5球目。指に引っ掛かりコントールができなかった吉田凌のスライダーを伏見がうまくブロッキングできず、三塁ベンチ前へ大きく弾いた。塩見は得点圏に進む。 吉田凌の配球の7割はスライダーである。フルカウントから、高めのスライダ―をひとつファウルにした川端は、続くインコースの真ん中あたりにきたスライダーを逆方向へおっつけた。オリックスの外野は前進守備を敷いていたが、打球がつまった分幸いした。塩見は余裕でホームへスライディング。最後の最後に均衡を破った。 試合後、川端は、この場面を「何とか後ろにつなごうという気持ちで入った。ランナーが2塁に行って、いいところに落ちてくれて最高の結果になった」と振り返った。 2011年からオリックスで2年間ヘッドコーチを務めた評論家の高代延博氏は、「インコースに伸びてくるようなスライダー。普通の打者は、引っかけて内野ゴロになるのだが、それを逆方向に押し込んだ。職人のテクニックだ。痛かったのはパスボール。絶対に前に落とさねばならないところ。こういうゲームではミスが命取りになる。一塁が空いたのだから吉田凌もボール球で良かった。武器であるスライダーも曲がっていなかった。彼は5試合目の登板。小柄な投手に連投させると疲労から、こういうことが起きる。そこをベンチが見極めていたかどうか」と解説する。