なぜオリックスは土壇場で踏みとどまったのか…中嶋監督の“ドタバタ采配”を救った“年俸4億円の代打”ジョーンズの一打
プロ野球の日本シリーズ第5戦が25日、東京ドームで行われ、崖っぷちのオリックスがヤクルトに6-5で逆転勝利して対戦成績を2勝3敗に戻した。壮絶なシーソーゲームにピリオドを打ったのは9回の代打アダム・ジョーンズ(36)の一振り。ヤクルトの守護神スコット・マクガフ(32)からレフトに決勝のソロアーチを放ち、今シリーズ初登板となったクローザーの平野佳寿(37)が、その裏を締めて「ミスを犯した方が流れを失う」という緊迫の接戦を手にした。これで勝負は27日からオリックスの本拠地ほっともっとフィールド神戸で行われる第6戦以降にもつれこむことになった。光と影のバタバタ采配で苦労した中嶋聡監督(52)は“5冠エース”山本由伸(23)の第6戦先発を予告。過去に17度中4度しかない1勝3敗からの“大逆転日本一”の可能性が出てきた。
マクガフのストレートを狙う
日本シリーズが面白い。 9回二死一塁。シリーズ初登板の平野が初球に投じた“伝家の宝刀”フォークを青木が引っかけた。ボテボテのセカンドゴロ。平野が吠え、ベンチでは、中嶋監督が全身を震わせるかのように両手でガッツポーズをしていた。 「いやあ、よかったです」 東京ドームで初めて勝利監督インタビューに立った中嶋監督の表情はまだ強張っていた。負けたら終わりの崖っぷちで踏み留まったのだ。 「(ジョーンズは)同点に追いつかれて非常にベンチが沈んでいるなかを一発で(ムードを)変えてくれる選手。頼もしい選手だと思います」 中嶋監督が最敬礼したのは勝負を決めた来日2年目、推定年俸4億円のジョーンズである。 5-5で迎えた9回。中嶋監督は代打ジョーンズをコールした。第1戦でサヨナラ勝利につなげる四球を選んだメジャー通算1939安打、282本塁打を誇るレジェンドは「準備はできていた」という。 マウンドには守護神のマクガフ。ボールが2つ先行するとジョーンズは、「相手は外国人投手。ストレートがきたらしっかり捉えようと思っていた」と配球を読んでいた。高く浮いたストレートを見逃さない。乾いた音を残して「手応えがなかった」というほどの痛烈な決勝アーチがレフトポール際に消えていった。 クルっと体を回転させてまるでゴルファーのように軽快に打った。 今季覚醒した“ラオウ”こと杉本が、「力を抜くバッティングを学んだ」と、リスペクトするジョーンズのメジャー打法。「もう後がないギリギリの試合。あの場面で打てて本当によかった」とのコメントがオリックスファンの心に響いた。 壮絶なシーソーゲームだった。