5000円超え、1万円超えも――小学生もハマる、「高級シャーペン」というロマン #なぜ話題
「今、70本以上の木軸ペンを持っています。木軸ペンの最大の魅力は、経年変化。使えば使うほど、しっくりと手になじんで、自分だけのものとして価値が上がっていきます。僕はこの醍醐味を、野原工芸の『欅のシャープペンシル』で知りました」 長野県木曽郡南木曽町にある「野原工芸」。「南木曽ろくろ細工」の木地師が伝統の技法で作る木軸ペンは、マニアの憧れだ。 オンラインショップを見ると、すべての商品が売り切れ。ならばリアルショップはと調べると、「来店は完全予約制」。営業日は金土日と祝日、1日3組まで。来店予約は、ハガキ抽選とある。ちなみに2024年3月までの来店予約受付は終了している。 入手は至難の技。簡単に訪れることすらできない野原工芸とは、どんな店なのか。
「大変なことになっちゃった」
都内から、車でおよそ4時間。中央自動車道飯田山本ICから国道を北上し、標高1100mの峠を越えた深い山の中に、野原工芸はあった。すでに紅葉は終わり、冬支度がはじまっている。店内では薪ストーブが焚かれていた。アイアンと天然木を組み合わせたオリジナル家具、ペン類がずらりと並んだショーケース。外の風景とは打って変わったスタイリッシュな雰囲気に驚く。青山にでもありそうな佇まいだ。 代表は、四代目の野原一浩さん。家業の主流は茶筒やお椀だったが、先代がボールペン作りをはじめた。幼い頃から凝り性だったという一浩さんは、高岡短期大学(現富山大学芸術学部)を卒業後、家具メーカーに就職し、スウェーデン留学を経て、家業を継いだ。すでに主流になっていたボールペン作りをさらに進化させるとともに、ホームページの製作やブログ執筆などに取り組むことで、野原工芸のブランディングに成功する。 「催事で外に出ても、移動距離が伸びるほどに効率が落ちると感じていました。だからできるだけ動かずに、この場所で商売を成功させたいと考えたんです。南木曽町には温泉や、観光する場所がたくさんある。ホームページは、地元の魅力を伝える動線もたくさん作って、来客数を増やすのが当初の目的でした」 10年ほど前から順調に収益を増やしたが、「大変なことになっちゃった」と実感するようになったのは、4、5年ほど前から。