「多重下請け」によるしわ寄せをどう改善する?――2024年問題を前に上がる中小物流企業の悲鳴 #令和の人権
2024年4月1日以降、トラックドライバーの時間外労働時間が上限年960時間に制限される。変化が間近に迫るなか、それによって起こるさまざまな問題が「2024年問題」として報道され、常態化してきた「物流業界の理不尽」に光が当たりつつある。多重下請け構造が広がる物流業界においては、しわ寄せは大企業の下請けである中小企業へと向けられる。物流業界を取材してきたライターの橋本愛喜さんと、中小物流企業を立ち上げた麻生よう子さんに話を聞いた。(取材・文:乾隼人 Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部) 取材協力:橋本愛喜、株式会社デジロジ
中小企業がさらされる、物流業界の「理不尽」
働き方改革関連法のなかで、物流・運送業界にも時間外労働時間の上限が定められることとなった。しかし、これによってドライバーの労働時間が短くなることで、物流業界全体の輸送リソースが減少するなど、諸問題が起こるとされている。2024年問題と呼ばれるこの問題では、物が運べなくなると同時に、資材の運搬が滞ることで製造業への影響も懸念されている。「商品が届かなくなる問題」だと認知されがちだが、「商品が製造できなくなる問題」としても切実だ。 帝国データバンクの調査によると、2023年1~9月の道路貨物運送業者(トラック運送、宅配便)の倒産件数は220件に上った。燃料価格の高騰に加え、ドライバー不足や適正にならない運賃価格が要因だとみられる。今まさに、物流の現場がバランスを崩そうとしているといえるだろう。 2024年問題は物流の現場で働く人々を苦しめる。ライターの橋本愛喜さんは「ドライバーが稼げなくなる」と語る。 「かつて『24時間戦えますか?』という考えが広まったバブル経済期の時代に、『長時間のハードワークで稼ごう』と飛び込んでこられたドライバーの方々が、今の物流を支えている。しかし、同じ稼ぎ方ができない時代になろうとしています」 その背景には、物流業界の構造の問題がある。 物流業界の仕事は、「多重下請け」と呼ばれる構造のもとに成り立っている。大手企業などが荷主から“元請け(一次請け)”として仕事を受け、その多くが仲介手数料をとったうえで下請け企業へと仕事を流す。 国土交通省が全日本トラック協会を通じ実施したアンケートによると、約7割の事業者が「下請けのトラック事業者を利用している」と回答。「自社のトラックドライバーの不足」「荷主からの突発的な運送依頼」などの理由から下請けを利用しているという。 自身も現役のトラックドライバーとして活動し、2020年に「肉体労働の少ない物流」を掲げて中小物流企業・株式会社デジロジを立ち上げた同社代表・麻生よう子さんはこう語る。 「元請けが仕事を受け、下請けが仕事を分配し、孫請けが現場作業をするという構造はよくあります。そういうとき、下請け(二次請け)がクライアントである元請けや荷主側に“いい顔”をするために、孫請け(三次請け)に対して厳しい条件や必要以上の作業を背負わせる場合がある。現場を担当する中小企業へのしわ寄せは大きいと思います」