火をつけた、文房具YouTuber「しーさー」

文房具YouTuberの草分けといえば、現在登録者数76万人超の「しーさー」。 「しーさーの動画は、映像そのものがきれいで、おしゃれ。YouTuberにありがちな煽りのトークもなくて、静かな声がいい。見ていると和む」 神奈川御三家と呼ばれる中高一貫男子校に通うソウマ君（18）も、しーさーの大ファンだ。コロナで休校中に彼の動画に出会い、憧れてシャーペンを集めはじめた。目下、東京大学を目指して受験勉強の真っ最中。しーさーおすすめのシャーペンで、勉強がはかどっているという。 20代半ばのしーさーは、大学を卒業後に専業YouTuberとなり、今年、自身の会社を設立した。YouTubeでの動画配信を続けながら、オリジナル文房具やメーカーとのコラボ商品の開発を手がける。「プライベートを守りたい」と顔出しをしない条件で、インタビューに答えてくれた。

「文房具を通じて、勉強や仕事を楽しめる人を増やしたいという思いで発信してきたので、それが広く伝わるようになったことはとても嬉しいです」 YouTubeをはじめたのは9年前。登録者数1000人を突破したのは6か月後くらいだった。当時はまだマイナーだったこともあり、しばらく低迷が続いたというが、少しずつ増え、2018年、大学生の頃に登録者数1万人を突破した。 「3年生になって、コロナでオンライン授業になって時間ができたので、せっかくなら本気で動画を作ってみよう、と。毎日コツコツ投稿していたら、文房具のチャンネルでは初の10万人を突破できました。さらに爆発的に増えたのは、2022年の後半くらいから。これはショート動画をはじめたからだと思います」 スマホを立てたままで見やすい縦画像。60秒ほどのショート動画では、8割以上の視聴維持率が見られた。 「ショート動画を発信するようになって、さらに若い登録者が増えました。学生が多いとは思いますが、小学生はよくわからないです。YouTubeのアカウントを作成できる最低年齢が13歳なので、12歳以下のお子さんがどれくらい見ているのか？ おそらく親御さんのデバイスで見てるんでしょうね」 文房具にはまったきっかけはシャーペンから。中学3年生の時、YouTuber「はじめしゃちょー」の影響でぺんてるの「スマッシュ」を購入。それが初めての1,000円超えのシャーペンだった。そこから文房具のロマンに引き込まれたようだ。 「シャーペンって、プラスチックのボディで軽いものが多いんですが、一度でも、金属ボディのずっしりとしたものや、木軸の温かな使い心地を知ると、離れられない。中高生の子たちが、クラスで貸し合いをして、どんどんはまって広がっていく、という話はよく聞きます。ただ、学校や塾に、あまり高いペンを持っていくのは、ちょっと怖い気もします。『学校で盗まれた』というコメントもあるので、やっぱり気をつけて使ってほしい。僕が学生の頃は周りにはまっている人が1人もいなかったんですけど、家とか塾の自習室でこっそり使ってました。ペンケースの奥に忍ばせて」 高校受験の時に、パイロットの「S20」と出会い、そこから木軸ペンに傾倒していく。好きが高じてコレクションは増え続け、2023年10月には『しーさーの木軸ペン図鑑』（主婦の友社）という著書も発売。愛用する木軸のペンをすべて掲載、スペックや重心のバランス、使い心地などを自身で評価したマニアックな一冊だ。