第166回芥川賞受賞会見(全文)砂川文次さん「あれよあれよという形でここに」
今後も兼業でやっていくのか
共同通信:すいません、共同通信、平川と申します。おめでとうございます。まず、今日も普通にお仕事されてからこちらに来られたということでしょうか。 砂川:はい、そのとおりです。 共同通信:それはもう職場から直接ですか。 砂川:あ、いえ、いったん家に帰宅してからです。 共同通信:なるほど。じゃあ受賞のほうを聞いたのはご自宅で。 砂川:はい。 共同通信:分かりました。選考委員の方の評価で現代のプロレタリア文学というような声もありました。そのような評価についてはどのように受け止めますか。 砂川:ごめんなさい、ちょっと考えさせてもらっても大丈夫ですか。 共同通信:はい。あるいはやや古風なリアリズムというような声もありました。 砂川:あ、たぶんその点でいうと、そうですね、観念的にならずに実地で、その人を離れないように、付かず離れずっていうのを意識して書いてたのかなと、はい、思います。 共同通信:分かりました。あと、今後もお仕事は兼業というか、変わりなくというおつもりでしょうか。 砂川:そうですね、はい。 共同通信:分かりました。ありがとうございます。 司会:ありがとうございました。ほかにご質問のある方。では前の白い服の。はい、お願いします。
これまでの経験は小説の中に生きているのか
読売新聞:読売新聞の【コスギ 00:51:30】と申します。よろしくお願いします。 砂川:はい、お願いします。 読売新聞:古風なリアリズムという評価に対して実地を離れずに書いたということですけども、前のご職業で自衛隊でヘリコプターを操縦されていらっしゃったかと思うんですけども、そのときは空から見る景色だったと思うんですけど、今回、今、公務員として地上で人と接するご職業でいらっしゃって、そういった経験というのは、先ほど実地で描くようにっておっしゃってましたけど、小説の中でも生きているんでしょうか。 砂川:先ほども申し上げたとおり、自分の中で書いているときとほかのときの自分がどうしてもまだ一致していないところがあって、で、書いている中でもしかすると過去いろいろ経験した何かが出てきている可能性というのはもちろんあると思うんですけど、職業とか肩書とか状態とかに関わりなく、生身の体で生きている限りは、目の前にある何かに常に対処するように職業にも従事してますし、前職もそうでしたし、それ以前も職業的な何かタスクっていうのではなくて、日々何かある、何かある何かに向かって行動していくっていうことがある種の身体性みたいなものなのかなというふうに考えてます。 読売新聞:分かりました。あと、先ほど人を描いたとおっしゃっていましたけど、今回、人を描くに当たって取り上げた題材が、なんですかね、メッセンジャーっていう社会的な、ある意味、貧困世帯じゃないですけども、そういった社会的なことを取り上げた理由って、そこから人っていうのをどうやって描こうとしたんでしょうか。 砂川:単純に最初の着想は自分の好きなものを取りあえず詰め込もうっていうところで、自転車が好きだったのでそれを題材にしてっていうところから入りました。 読売新聞:分かりました。あと、その自転車がお好きっていうことで、週末にもすごい、100キロぐらい走るっておっしゃっていて、この前の週末は自転車で走られたんでしょうか。 砂川:この前は近所だけですね。 読売新聞:そのときは芥川賞を受賞したらどうしようとか、そういったことはお考えにはなられましたか。 砂川:考えないようにしてました。 読売新聞:じゃあ今日ここにいらっしゃるまでは、あいさつとかそういったことも特には考えずにいらっしゃったんでしょうか。 砂川:なので困ってます。 読売新聞:分かりました。ありがとうございます。 司会:ありがとうございます。ではあと1、2問。すいません、指ささせていただいて。はい、どうぞこちらの。はい、お願いします。